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「力強くて、クールで、それでいてセクシー」──デュア・リパの新スタイリストが解説する、グラストンベリー2024のステージ衣装

  • 2024.7.2
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「今自分がどこにいるのかさえわからないんです……多分、バースかな?」。スタイリストのジャーリル・ウィーバーは18歳でメリーランド郊外からニューヨークに移り住み、その後リアーナのスタイリストとして世界中を飛び回るようになったが、この日はイギリスのサマセット州に向かっているところだった。「イギリスの人たちがどんな装いをしているのか、ぜひチェックしてみたいです。リサーチ感覚でね」。しかしそんなことよりも、彼には重要な仕事が待ち構えていた。金曜の夜、グラストンベリー・フェスティバルのヘッドライナーを務めるデュア・リパのスタイリングだ。「すごく、すごく楽しみです。でもここに来るまで、本当にめまぐるしかった」

すべての始まりは今から3カ月前。リパの長年のスタイリスト、ロレンツォ・ポソッコが仕事から降りたときだった。「私自身も同じように、過渡期を迎えていました」とウィーバーは言う。「私はほぼこの13年間、リアーナのために“正社員”のように働いていたのですが、自分のクリエイティブスタジオを立ち上げることになりました。リアーナが母親になったのを見て、自分自身で何かを作り上げる必要があると感じたし、彼女はそのために全面的なサポートとモチベーションを与えてくれました」

彼は今でもリアーナがプロデュースするフェンティFENTY)のクリエイティブディレクションを行っているが、自分自身のボスになるという選択は大きな変化のきっかけとなったという。「私はいつもデュアのスタイルが素晴らしいと思っていました。あれほど個性的なのにファッション界での地位をものにしているのは、信じられないほどの偉業だと思います。しかし、彼女の人生は進化しているし、その表現方法は以前より気楽でエフォートレス。やりすぎ感がないんですよね」

リパに付く話はごく自然に、そしてあっという間に進み、「サタデー・ナイト・ライブ」への出演にアルバムのリリース、そしてメットガラと、すぐに多忙な日々が始まった。『ラディカル・オプティミズム・ツアー』の全24公演のうち5公演を終えた今、彼女のツアー衣装を見ていると、ウィーバーのスタイルが控えめながらにも大きく影響していることがうかがえる。

ヴェルサーチェによるミニドレス。
ヴェルサーチェによるミニドレス。
ロエベによるアンコールルック。
ロエベによるアンコールルック。

「まず、あのレッドヘア。これは彼女の過去のスタイルとは全く違います。それに、髪を赤く染めるというのは女性のアーティストにとって自由を意味するもの。ザ・クランプスのポイズン・アイビーやニーナ・ハーゲンといったアーティストをすぐに思い浮かべました。デュアと私は最近、彼女たちを参考にしています」。こう話すウィーバーは、リパの髪色の変化が何を表しているのかを誰よりも理解している。というのも、彼はリアーナが2009年のアルバム『R指定』のときのブロンドから2011年の『ラウド』でスカーレットの色合いに変えた頃に、彼女と仕事をともにするようになったからだ。彼はこう言い切る。「新しい時代の到来を意味しているのです」

スーパーボウルに勝るとも劣らない大舞台のために、ウィーバーが5つのルックを作り上げるのに費やした期間は約1カ月。「これはデュアの人生においてとても重要な瞬間。彼女は4幕からなる壮大なスペクタクルを披露するので、ルックはすべてカスタムメイドです。それから、妥協するなんてあり得ません」

ウィーバーにとってグラストンベリーへの参加は今回が初となる。その心境を聞くと、こんな答えが返ってきた。「コーチェラとは違いますが、それでもデュアは世界最大のポップスターのひとり。ですから、すべてを“ステージにふさわしい”ものにしようとしました。彼女はとてもオープンですし、すごく楽しい人。それに何にでも挑戦しようとするので、衣装を考えるのは簡単でした」

彼は“簡単”と言うが、リパが纏った5つのルックは隅々まで計算し尽くされている。以下からは、それぞれに込められた想い、エピソードをウィーバーの言葉とともに紹介する。

第1幕 クロムハーツ

ピラミッド・ステージにて。オープニングではクロムハーツによるカスタムルックを着用。
Glastonbury Festival 2024 - Day Threeピラミッド・ステージにて。オープニングではクロムハーツによるカスタムルックを着用。

「最初の衣装は、クロムハーツCHROME HEARTS)のジェシー・ジョー・スタークによるデザイン。このルックでは、デュアがどのような人物で、今現在どのようなフェーズにいるのかを描き、ショー全体の方向性を示すものにしたいと考えていました。若々しくて、力強くて、クールで、それでいてセクシー……出来上がったものが、私たちのイメージ通りだったのは本当に驚きです。安全ピンやオーバーサイズベルトなど、メタリックのディテールを取り入れた切りっぱなしのレザーミニドレスにロングブーツを合わせたのですが、すごく満足しています。最初は振り付けも一番激しいから、本当にクールなんですよね」

第2幕 ヴェルサーチェ

第2幕ではヴェルサーチェ(VERSACE)によるカスタムルックを纏って。
Glastonbury Festival 2024 - Day Three第2幕ではヴェルサーチェ(VERSACE)によるカスタムルックを纏って。

「曲の構成は? 照明はどうなっている? 全体的なムード、それを投影した服って? こういったことを常に考えなければなりません。このパートはデュアとバンドだけなので、もう少し親密にするため、ランジェリーからインスパイアされたカジュアルでクールなものにしました。ここで彼女が着ているのはヴェルサーチェVERSACE)によるグレーのシルク製ドレスで、黒いレースの刺繍が施されています。腰にはシャツを巻いたようなディテールも。服を着ているようで、脱いでいるようにも見せています」

第3幕 ヴィンテージTシャツ

女性アーティストへのオマージュを込めた第3幕のルック。
Glastonbury Festival 2024 - Day Three女性アーティストへのオマージュを込めた第3幕のルック。

「第3幕も振り付けが激しいので、もう少し現実的な感じにしたいと思いました。デュアがレイブに行ったらどんなだろう? なんてことを考えながら。レッドとブラックのメタリックショーツとクリスタルベルトを身につけているのですが、これは私が尊敬するレジェンドであるマイケル・シュミットが作ったものです。Tシャツは、グラストンベリー史において数少ない女性ヘッドライナーであるシェイクスピアーズ・シスターへのオマージュで、長年の友人であるセイント・ルイスから入手しました。彼は本当に素晴らしいヴィンテージTシャツのコレクションを持っているんです。ここでのインスピレーションは(ブロンディの)デボラ・ハリーです」

第4幕 アクネ ストゥディオス

フィナーレにはアクネ ストゥディオス 2024年春夏コレクションのカスタムルックをセレクト。
Glastonbury Festival 2024 - Day Threeフィナーレにはアクネ ストゥディオス 2024年春夏コレクションのカスタムルックをセレクト。

「厳密に言えば、これが“フィナーレ”。ここでの挑戦は、これまでのパフォーマンスでやってきたことのすべてを凝縮させることでした。アクネ ストゥディオズACNE STUDIOS)が手がけたデザインなのですが、私たちが確立した核となる要素(Tシャツ、レザー、クリスタル)のすべてが盛り込まれているんです。Tシャツを腰に巻いたようなスカートで、タンクトップはブラの中に入れたように見せています。ルックがそのブランドのものだとわかるように、私は常にデザイナー自身のレファレンスも取り入れています。口で説明するのは難しいのですが……本当にクールな一着です」

アンコール ロエベ

アンコールではロエベのカスタムルックにジャンヴィト ロッシのブーツを合わせて。
Glastonbury Festival 2024 - Day Threeアンコールではロエベのカスタムルックにジャンヴィト ロッシのブーツを合わせて。

「アンコールでのルックはロエベLOEWE)。一着のボディスーツなのですが、ホルターネックトップと巨大なバックルとスタッズが目を引くショートパンツの組み合わせで、足もとにはジャンヴィト ロッシGIANVITO ROSSI)のカスタムブーツを選びました。ショーがどのように始まったかを思い起こさせるもので、同じアティチュードが漂います。最初は4ルックを予定していたのですが、デュアが『5ルック目に着替える時間があるんだけど』と言うので、私は『うん、あるね!』と答えたんです。大賛成でした。そして彼女がそれを着たとき、こう言ったんです。『これを着てショーを終わらせたい。これをみんなが見る最後のルックにしたい』って。スタイリストとしてのゴールはまさにこれです。決して自分のためではなく、クライアントが最高の気分でいられるように手助けすることなんです」

Text: Daniel Rodgers Adaptation: Motoko Fujita

From VOGUE.CO.UK

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