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「“特撮モノ”の芝居は足し算」映画『IKE Boysイケボーイズ』釈由美子インタビュー。結婚後初の出演作を語る

  • 2024.7.2
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写真:Wakaco

日本の特撮モノ、アニメの大ファンであるアメリカ人監督エリック・マキーバーによる、初の長編作品映画『Ike Boys イケボーイズ』が現在公開中。エリック監督から直々のオファーを経て、初のハリウッド映画出演を果たした、釈由美子さん。本作について心境や日本映画との違い、女優としてのこれからなどたっぷり語っていただいた。(取材・文/ZAKKY)
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【釈由美子 プロフィール】
1997年デビュー。女優、タレント。愛犬家、一児の母。映画『修羅雪姫』(2001)、映画『ゴジラ×メガゴジラ』(2002)、映画『KIRI職業・殺し屋』(2015)、ドラマ『スカイハイ』(2003)、ドラマ『7人の女弁護士』(2006)などの作品で主演を務めるなど出演作品は累計100作を超える。

写真:Wakaco
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ーーー『Ike Boys イケボーイズ』に 出演するにことになった経緯を、お聞かせください。

「いわゆるハリウッド映画のオーディションで勝ち取ったという流れとは、まったく違いましたね。監督のエリック・マキーバーさんが、高校性のころに私が出演していた映画『ゴジラ×メカゴジラ』(2002)の大ファンだったらしいんです。なので、監督から直々にオファーが来たことがきっかけです」

ーーー向こうからのラブコールだったんですね。お話が来た時は、どんなお気持ちでしたか?

「嬉しかったですね。エリック監督は元々、日本の特撮映画マニアということはあったとしても、20年以上前の作品に出演していた私のことをピンポイントで気に入ってくれてオファーしてくれたわけですから。女優としてこんなに名誉なことはないです。台本を読む前から出演を決めました」

ーーーエリック監督からすれば10代の頃からの夢が叶ったわけですから…双方の関係性がとても美しいです。

「客観的にそう思っていただけるのも嬉しいですし、監督と本作には感謝の気持ちしかないです」

ーーー撮影は、いつごろに行われたのですか。

「現地入りする予定のタイミングが2020年のトランプ政権下で、俳優労働ビザがなかなか下りなかったんです。また、その後はコロナ禍となり何度も頓挫していました。

それで、もうこれ以上は撮影期間を引き伸ばせない、もし、来られなければ、やむを得ずアメリカ在住の女優さんにキャストチェンジするという話になっていました。本当にあと1日遅れたら、出演そのものがなくなるというギリギリの状況で何とか間に合って、撮影を慣行できたんです」

ーーーギリギリセーフだったわけですね。ということは、撮影のスケジュールもかなり大変だったのではないでしょうか?

「そうなんです。現地に入るまでは綱渡り状態で、アメリカに降り立って、次の日には自分のシーンの撮影に入るようなタイトなスケジュールでした。その後、3月には日本での撮影があったんですけど、アメリカのスタッフが半分ぐらい来れなくなってしまい、日本にいるスタッフに急遽お願いしたりと…すごく大変でした」

ーーー そもそも、撮影されたのが、4年も前だったのですね。

「そうですね。撮影してから4年後に公開という作品も、なかなかないので、感慨深いですね。『こんな感じだった! 』と、逆に新鮮に感じる部分もありました」

ーーーエリック監督の現場での印象は、いかがでしたか?

「リモートでかなりディスカッションをしていたので、空港で初めて会った時は、感動と一緒に、ホッとする安心感もありました」

ーーーそれは、エリック監督もさぞかし感無量でしたでしょうね。

「後で聞いたら、『これからが始まりなのに、会った瞬間にすべて終わった感じみたいだった』と言ってくれました(笑)。あと、彼は日本語が堪能で、英会話にまだまだコンプレックスがある私にとっては、コミュニケーションを取る上で、とてもありがたかったです(笑)」

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ーーー演じられた「レイコ」という役に関して、監督からはどのような指示がありましたか?

「『レイコ』というキャラクターの説明はもちろんありましたが、後半の展開を聞いた時には、びっくりしました。 だからこそ、その最後の展開ではお客様を驚かせるように、前半のミキ(比嘉クリスティーナ)ちゃんの理解者であるレイコと、後半のギャップには、しっかりメリハリをつけて、逆のイメージで演じたいとは、話し合いました」

ーーーネタバレになるので言いませんが、前半とのギャップも相まって、あの展開には本当に驚きしました。

「前半もそうなんですけど、ただの強くて優しい女性ではなく、何か秘めたものがある人物であることを意識しました。使命感や、孤独感、だからこそある葛藤を感じてもらいたいと考えながら演じましたね」

ーーー確かに、特に、前半におけるレイコの物憂げな表情には、この人、何かあるなと思いながら拝見しました。

「ありがとうございます。エリック監督は『ゴジラ×メカゴジラ』で私が演じた家城茜が、沙羅(小野寺華那)ちゃんに見せる優しさと、ゴジラと戦う勇ましい顔のギャップに痺れて、影響されたとおっしゃってくれました。だから、監督とはその辺の感覚を自分でも今一度思い返して共有しました」

写真:Wakaco
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ーーー共演者たちのイメージはいかがでしたか?

「主役のショーンを演じたクイン・ロードさんを始めとして、とにかくハリウッド俳優のオーラを、ものすごく感じましたね。また、撮影スタイルが日本とは全然違って『これがハリウッドスタイルなのかな』と」

ーーーどのような場面でそう感じたのでしょう?

「日本では、キャラクターがこういうものだろうなって、ある程度役作りをしていくのが普通です。現場に入って、テストのときに監督の前で思い描いていたものを見せて、そこからさらに立て直していきます。

ハリウッド俳優も基本的には同じですが、レイコの夫役のビリー・ゼインは、自身の役のキャラクターを30パターンくらい考えてきていたんですよ。

監督にも、『演じたすべてのテイクを撮ってくれ』って言っていて。で、監督がこのパターンが良いって言っても、『まだあるから! 』と、絶妙に違うものが永遠に出てくるんですよ(笑)。監督も『もう撮れているのになあ~』と言いながらも、ずっと撮っていました」

ーーー役に対して多方面からアプローチしてきたものをテストで見せて作り上げていくんですね! 楽しんで演じるということにも繋がりそうです。

「他にも、ワンシーンを1日かけて撮ったり、俳優の引き出しの多さも然ることながら、撮影自体に時間をかけられるんです」

ーーーその空気感には相当感化されたのではないでしょうか?

「ええ。だから、私もビリーがおちゃらけた感じの演技をしてきたら、それに応じた対応をするなど、自然と考えるようになりました。結局、これは俳優同士の科学反応だと思うので、ビリーの奥さん役として、本当の夫婦に見えるような気持で演じました」

ーーー興味深いです。

「私に興味を持っていただいて得た役なので、私にしか出せないものって何だろうということは常に考えていました。自分が与えられた使命ってなんだってことを考えた時に、自分の持ち味を客観的に分析をしました」

ーーー例えば、どのような分析をされましたか?

「レイコは子供がいるわけではないのですが、結婚はしています。私が結婚後に、初めて出演した映画なので、そこは新たな既婚者としての私の持ち味を出せるかなと考えました。

撮影時、私の子供はまだ小さく、結婚後すぐに妊娠して、その後しばらく子育てに専念したかったので、俳優業を休業していました。その間は、もう役をいただけないんじゃないかという不安感があったのですが、そのうち、『別に私の代わりはいっぱいいるから』と、割りきれたんです。

そうやって吹っ切れていたときに、いただいた役でしたので、そこにも縁を感じました。『ああ、私のことを求めてくれている人がいたんだ』って」

ーーー釈さん自身の人生の流れでの中でも、ドンピシャにリンクしていたんですね。本作はいわゆる“特撮モノ”ですが、他のジャンルとの芝居に違いはありますか?

「結構違うと思います。他の作品ですと、どちらかと言うとナチュラルな演技が求められます。表情ひとつ取っても、そこまで大げさにせず、心の中で感じたものを表情に出せるような、言ってみれば引き算的な感覚ですね。でも特撮モノは、演技の中であえてリアクションを立てないと、『特撮』というジャンルそのものに負けてしまうんですよ。それを、『ゴジラ×メカゴジラ』で演じた際に学びました。

あと、特撮あるあるなんですが、グリーンバックを背景にして何もないところに向かって叫んだり、話したりする演技をするわけですよ。そう考えると、特撮は足し算なのかと。だから、大げさな演技をしないと伝わらないんです」

写真:Wakaco
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ーーー好きな映画作品や役者についても、お聞かせいただけますでしょうか。

「1番好きな映画は、『ニキータ』(1990)です。『レオン』(1994)もそうですが、リュック・ベッソン監督が描く映像がすごく好きで。 もちろん、ニキータ(アンヌ・パリロー)のアクションシーンもかっこいいですが、孤独や闇を抱えていていることを、ふと思わせる表情に魅了されますね。

私がアクション作品によく出演していた20代の頃に影響を受けた女優は、アンジェリーナ・ジョリーです。でも、アクションに影響を受けたと言いつつ、『トゥーム・レイダー』(2001~)より、『17歳のカルテ』(1999)における彼女の演技の方が好きだったりします(笑)」

ーーーこれから女優として「こうありたい」という役者像や演じてみたい役はありますか?

「今、挙げた方々はもちろんリスペクトしているのですが、『モンスター』(2003)におけるシャーリーズ・セロンのように、体重や体型を役によってコントロールできるような女優になりたいです。あと、彼女のような普段は絶世の美女でありつつ、裏では悪女に振り切るような役を演じてみたいです」

(取材・文/ZAKKY)

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