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【VOGUE JAPAN独占公開】ブルガリのクリエイティブ・ディレクターに就任した、メアリー・カトランズが挑む新たな冒険

  • 2024.7.1

卓越したプリント使いで知られるメアリー・カトランズによる、ブルガリBVLGARI)のデビューコレクション「カラ」がヴェールを脱いだ。「就任のタイミングから、完全なるコレクションを作るのは難しいことは分かっていました。今回は、私が今後ブルガリで何を支柱にしていきたいかを示す、意思表明のようなものだと思っています。それが『カラ』コレクションなのです」。

バッグ 本体H14cm ¥896,500(8月発売予定)
バッグ 本体H14cm ¥896,500(8月発売予定)
バッグ 本体H17,5cm ¥561,000(11月発売予定)
バッグ 本体H17,5cm ¥561,000(11月発売予定)

ブルガリのアイコニックなコレクションの一つに、優美な扇形のモチーフが特徴的な「ディーヴァ ドリーム」がある。これはブルガリの誕生の地であるローマに現在も遺跡として姿を残す、古代ローマ帝国時代の「カラカラ浴場」の複雑なモザイクにインスパイアされたものであり、カトランズは今回、このモチーフをこれまでのブルガリのシンボル的存在だった「セルペンティ」と並ぶ、新たなアイコンとして打ち出した。「ブルガリにはたくさんのシンボルがあるにもかかわらず、これまでは絶対的な存在である『セルペンティ』がコレクションの中枢を担ってきました。私は既存のデザインを元に、これと並ぶ、ブルガリのアイデンティティを示す新たなパターンやモチーフを作りたいと思ったのです。そこでリサーチを始めたところ、比較的早い段階で、『ディーヴァ ドリーム』と出合ったのです」

優美な扇形のモチーフが特徴的な『ディーヴァ ドリーム』
CL859966 + CL860018 + CL859972_003優美な扇形のモチーフが特徴的な『ディーヴァ ドリーム』
『ディーヴァ ドリーム』に着想を得た、銀杏の葉を想わせるパターン。
『ディーヴァ ドリーム』に着想を得た、銀杏の葉を想わせるパターン。

ファッションをバックグラウンドとし、プリントの女王の異名をとる彼女は、ブルガリでの自身の役割をこう語る。「ブルガリは常々レザーグッズの新シグネチャーとなるようなモチーフを探求していました。私はモチーフやパターンを見る目が養われている、その世界からやって来た、いわばエキスパートです。ですから、私が新たなモチーフを紹介するのは当然のことだと思っています。ただ、新しいモチーフを見つけるのは、一見ものすごく簡単なことのように聞こえるかもしれませんが、決してそうではない。象徴的で汎用性があり、ブランドを体現する存在でなくてはいけません。『ディーヴァ ドリーム』にはそれらを総括する強さがありました。一方でバッグをモチーフに頼ることはしたくありませんでした。『ディーヴァ ドリーム』の背景にある、プロポーションや曲線といった建築的な要素もデザインに取り入れることにこだわりました」

インスピレーションの一部『セルペンティ』のヘリテージウォッチ
インスピレーションの一部『セルペンティ』のヘリテージウォッチ

ブルガリの創業者もカトランズ同様ギリシャ人であり、文化的に近いことから生まれ故郷でもブルガリは愛されているという。特にカトランズはインテリアデザイナーだった母の膨大な蔵書の中にあった、ブルガリのアーカイブが収められた一冊を幼い頃から眺めるのが大好きだったという。そして、高校の卒業祝いには父親からブルガリの腕時計を贈られたという体験も。「ただ、不思議なもので、個人的には今まで『ディーヴァ ドリーム』をあまり気に留めたことがなかったんです。ですが、『カラ』の基盤となっている『ディーヴァ ドリーム』に用いられているモチーフには信じられないほどに普遍的な魅力があるんです。また、モチーフは銀杏の葉にも似ており、アジアでは銀杏の葉は長寿としなやかな強さのシンボルとされ、西洋でも聖なる木として崇められています。そういったメッセージ性も含め、奥行きに満ちた素敵なモチーフをとても気に入っています」

2021年にブルガリの特別企画「Serpenti Through the Eyes of」でメアリー・カトランズがデザインしたバッグ。
2021年にブルガリの特別企画「Serpenti Through the Eyes of」でメアリー・カトランズがデザインしたバッグ。

カトランズは2021年にさまざまなアーティストとコラボレートする「Serpenti Through the Eyes of」で、ブルガリとタッグを組んでいる。「あのときからブルガリとは強い結びつきを感じていました」。そして、たくさんのアイデアと共にブルガリチームの一員となった今、最も興味のあることの一つが、バッグがハイジュエリーとして機能する境界線を知ることだという。「どうしたらジュエリーがバッグとして、あるいはバッグがジュエリーとして機能するのか。その線引きがものすごく曖昧だと思っているんです。そして、そこに可能性を感じているのです。ハイジュエリーブランドのブルガリだからこそ、手にするだけでジュエリーの代わりになるようなイブニングバッグを作れると思うんです。それもあり、私たちは今『ヘリテージ・アイコン』と名付けたプロジェクトにも取り組んでいます。これは、レザーを一切使わないミノディエール(イブニング用クラッチ)のコレクションで、ブルガリのストーリーを分かりやすく伝えるシリーズになると思っています」

バッグ 本体H11 ¥896,500(11月発売予定)
バッグ 本体H11 ¥896,500(11月発売予定)
バッグ 本体H12.5 ¥434,500(11月発売予定)
バッグ 本体H12.5 ¥434,500(11月発売予定)

今後は「カラ」コレクションで披露したモチーフとパターンの可能性を広げつつ、「ヘリテージ・アイコン」を充実させ、アクセサリーと所有者をつなぐ物語を、デザインを通して表現していきたいという。「バッグは女性の日常生活の延長線上にあり、持ち手の個性の一部でもあります。ですから、ブルガリのバッグが所有者の何を表現しているかをきちんと伝えることが、私の大切な役割だと思っています。今回のコレクションは序章にすぎません。ここから新しいチャプターを刻んでいく未来がとても楽しみです」

Profile

メアリー・カトランズ(Mary Katrantzou

1983年ギリシャ・アテネ生まれ。インテリアデザイナーの母親とテキスタイルデザインを習得した父親を両親に持ち、2008年、ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンを卒業。その後すぐに自身の名を冠にしたブランドをスタート。モード界では「プリントの女王」という異名で周知され、2024年4月からブルガリ初のレザーグッズ & アクセサリーのクリエイティブ・ディレクターに就任。

Photos : Courtesy of BVLGARI Text: Reiko Shibazaki Editor: Saori Yoshida

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