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国会を舞台にハイキャリア女性が直面する差別を描く…驚きと感動の結末にも注目の『女の国会』

  • 2024.7.1

新川帆立さんの政界を舞台にした小説、『女の国会』をご紹介。

政治になじみのない人も臆するな。男社会でサバイブする女たちの奮闘。

「過去のフェミニズム文学では、差別と貧困の問題が不可分に描かれていることが多いと感じます。でも、社会的地位があり経済的に恵まれている人であっても、女性であるだけで差別され、社会のどの位置に逃げても差別は追いかけてくる。それを描くためにハイキャリア女性が直面する差別を描こうと思いました。少なくとも2020年代にこういう現実があったのだと、作品の形で世の中に刻みつけておかねばという使命感めいたものがありました」

新川帆立さんの『女の国会』の舞台は政界。首相経験者の父を持ち、自身も40代で当選5回、女性初の総理大臣もあり得ると期待されていた与党議員・朝沼侑子の訃報が舞い込む。遺書があり、死因が青酸カリだったため、自殺説が濃厚とされた。

しかし、朝沼自身も賛同し、超党派で進めていた「性同一性障害特例法の改正案」に待ったがかかったタイミングとはいえ、自殺するには動機に乏しい。

そんな朝沼の死に疑問を持った野党議員の高月馨や、高月の政策秘書・沢村明美は真相を探り始める。政治記者の和田山怜奈や朝沼に憧れていた地方議員の間橋みゆきも加わって、事件は驚きのエンディングへ。

本書は4つの章からなり、事件の角度を変えて解いていくスタイル。各章の語り手となる職業の女性たちには、取材もした。

「政治的ビジョンや職業的な話ではなく、どんな喜びやストレスがあるかといった“人となり”に着目して取材し、物語に活かしました。私自身が肌感覚で政治というものに近づけたし、ニュースを見るのが楽しくなりましたね。都知事選挙の報道やSNSで、わざと女同士の対決を際立たせる風潮を目にすることもあり、作品世界で描いていたようなことが現実でも起きて驚きました」

新川ワールドらしく、キャラクターたちがみな魅力的。セクハラしてくる大物議員までもが、一目置きたくなる一面を発揮する。

「どの人物も特にモデルはいないのですが、主人公の高月だけは、我ながら市川房枝さんに影響を受けた感じがします。取材する中で感じたのは、政治家の方って基本的にみなさんにカリスマ性があるんですよね。ただの悪代官では政治家らしくないので、肉付けには腐心しました」

真相が暴かれた後の決着も感動もの。ぜひ読むべし。

『女の国会』 〈お嬢〉と呼ばれる朝沼は〈国民党〉は与党所属。〈憤慨おばさん〉の異名を持つ高月の〈民政党〉は野党第一党。党派を超えたシスターフッド。幻冬舎 1980円

しんかわ・ほたて 作家。1991年、アメリカ生まれ。弁護士資格も持つ。2021年、デビュー作『元彼の遺言状』が大ブレイク。『縁切り上等!』ほか、著書多数、映像化作品多数。

※『anan』2024年7月3日号より。写真・中島慶子(本) インタビュー、文・三浦天紗子

(by anan編集部)

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