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おじさんにダメ男でもマーベル超えの面白さ…日本の偉大なヒーロー映画(4)海外絶賛…最高のダメヒーローとは?

  • 2024.7.1
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大泉洋【Getty Images】

根強く人気のある「スーパーヒーロー映画」。近年、「ヒーロー疲れ」という言葉が生まれ、ファンが離れる一方、常識を外れた設定や型破りなヒーローの出現により、幅広く支持される作品がある。今回は、定年間近のおじさんや、ダメ男など、常識の枠を外れたことで大成功を収めた、最高のヒーロー映画を紹介する。第4回。(文・ZAKKY)

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『アイアムアヒーロー』(2016)
監督:佐藤信介
脚本:野木亜紀子
原作:花沢健吾
キャスト:大泉洋、有村架純、長澤まさみ、吉沢亮、岡田義徳、片平那奈、片桐仁、マキタスポーツ、塚地武雅、徳井優、風間トオル

【作品内容】

35歳にして漫画家アシスタントである鈴木英雄(大泉洋)は、彼女とは破局寸前の冴えない中年。ある日、英雄がアパートに帰ると、彼女は謎の感染により、生命体『ZQN(ゾキュン)』の姿に。ゾキュンが日本中に溢れ出す中、標高の高い場所では安全だという情報を入手し、富士山に向かう英雄。その道中で出会った女子高生・比呂美(有村架純)と元看護師・藪(長澤まさみ)。彼らはゾキュンたちを相手に極限のサバイバルを始めることに…。

【注目ポイント】

『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(漫画・2006~「ビッグコミックスピリッツ」小学館/映画・2010)など、「ダメな男の奮闘を描かせたら、世界一!」とのキャッチフレーズを付けたくなる、花沢健吾原作の人気コミックの実写版。

「超人的な力を持った者」というわけではない、ただの中年男が何とかヒーローになろうとする様がリアリティ豊かに描かれている。その反面、周囲の人間たちが「ゾキュン」になるという非現実性の調和が非常にスリリングな作品だ。

主人公・英雄を演じるのは「何でも自分のものにしてしまう俳優」として名高い大泉洋。今作でも安心感のある演技も然ることながら、ビジュアルは原作の英雄に特に似ていないのに、大泉なりの英雄像を見事に作り上げており、原作ファンからも好評を得た。

むしろ、原作より英雄の奮闘ぶり、ドタバタぶりが、わかりやすく且つ繊細に表現されており、素晴らしい。

また、往年の名作のパロディーも多く取り入れているところも必見。時代劇『子連れ狼』で父親(チャン)が大五郎を乗せた乳母車を押す有名なシーンを、ショッピングカートを押す場面でオマージュ。さらに、英雄が猟銃を手に、クリント・イーストウッドのような雰囲気をまとうシーンでは『荒野の用心棒』(1964)や『夕陽のガンマン』(1965)を彷彿とさせる。

さらに、人類がゾキュンから逃げるためにアウトレットの屋上にて基地を作る様は『マッド・マックス2』(1981)、ロッカーに隠れているシーンは『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)が元ネタなのではないかと筆者は睨んでいる。

第36回「ポルト国際映画祭」観客賞&特別賞を受賞し、海外からも評価された本作。その背景には、前述の海外映画のパロディー要素もさることながら、日本人よりグロ描写に慣れており、その中にあるウィットに飛んだ笑いの要素が海外の観客に受け入れられやすかった、ということが言えるのではないだろうか。

日本発の新たな「ダメヒーロー像」を作り上げた制作陣、そして、大泉洋に改めて拍手を送りたい。

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