エルメス、グッチ、ボッテガ・ヴェネタ etc…人気ブランドが手掛けるインテリアに注目
年 々その規模は拡大し、注目度も増している「ミラノデザインウィーク2024」。今年は1800以上のブランドが参加した同デザインウィークでは、かつてないほどファッションメゾンの存在感が際立っていた。 ファッションがライフスタイルという大 きなくくりで語られるようになった今、ラ グジュアリーブランドとデザインやアート の関係はますます親密になり、その可能性を広げている。
長く「ミラノデザインウィーク」を牽引しているエルメスは、メゾンの過去の製品を保管するコンセルヴァトワールに眠るア ーカイブを紐解いて生まれた新作コレクシ ョンを発表。時代やトレンドに左右される ことのないクリエーションを浮かび上がら せた。
同じくデザインウィークの常連であるロエベは、ロエベと縁の深い 名のクラフトアーティストたちによる、ランプの展示「ロエベ ランプ」を開催。竹やレザー、ガラス細工など、それぞれ異なる作風や素材を使用するアーティストたちが、「ランプ」というお題に呼応する展示は、多くの話題をさらった。
マチュー・ブレイジー率いるボッテガ・ヴェネタは、カッシーナ社とタッグを組み、デザイン界の巨匠ル・コルビュジエが手がけたスツール「LC タブレ カバノン」に、オマージュを捧げる展示を実施。コル ビュジエが浜辺に打ち上げられたウィスキ ーの木箱にインスパイアされたというミニ マルなスツールに、ファッションブランド の目を通し新たな物語を吹き込んだ。
また、今年ブランド創立100周年を迎 えたロロ・ピアーナは、やはり今年生誕1 00周年となるミラノの建築家兼デザイナ ーのチニ・ボエリがデザインしたチェアと、ブランドの上質なファブリックをコラボ。お互いの長きにわたる歴史を祝福した。
2024年春夏コレクションでデビューを飾ったグッチのクリエイティブ・ディレクター、サバト・デ・サルノは、そのファーストコレクションで発表したブランドの新シグネチャーカラー「ROSSO ANCORA」を通して自身のヴィジョンを表現。イタリアン・デザインの巨匠たち(トビア・スカルパ等)の作品に着想を得た、5つの名作家具に現代的解釈を加えて復刻させた。
一方で、今年デザインウィーク初参加となったサンローランは、イタリアン人デザイナーのジオ・ポンティのプレートを復刻展示。
バレンシアガは何年にもわたって進行中の「アート・イン・ストアプロジェクト」を更新。アメリカ人アーティスト、アンドリュー・J・グリーンの作品をショーウインドウにディスプレイし、道行く人たちの視線をさらった。
他とは異なるアプローチをみせたのは、 3年前からプロダクトを展示する代わりに、 自然環境とデザインの関係を掘り下げるた めに、専門家たちを招いて学際的なシンポ ジウム「PRADA FRAMES」を開催しているプラダ。一見、ファッションとはあまり接点がないように思われる法律家や学者など、多様な分野から専門家を招き、価値ある知識を一つに結集しようとする、多角的な試 みを行っている。 各ブランドのクリエイションや試みから わかるのは、イノベーションはさまざまな ジャンルの人たちとの対話やコラボレーシ ョンによって生み出され、一人の人間の力 でできるわけではないということ。モノや 人がポジティブに刺激し合って生まれるア ートやデザインこそ、閉じていく世界に生 きる私たちに、今最も必要な純粋かつ自由 な、幸せのつながりなのかもしれない。
Text: Rieko Shibazaki
Editor: Gen Arai