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人権重視の欧州で「AI規制法」が成立、グローバルスタンダードになる可能性も

  • 2024.6.29

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「AI規制法」です。

人権重視の欧州がいち早く規制へ。日本も対応必至。

EUでは、包括的にAIを規制する法案が5月21日に成立。2026年に本格的に適用されることになりました。生成AIの普及が急速に進むなか、間違った情報やフェイクニュースが拡散されたり、人権侵害などのリスクが高まっていることに危機感を抱き、世界で初めてとなる規制法を作成しました。AIの安全性を確保する努力をすること、AIを暴走させないための枠組みが作られたのです。今後、AI技術を持てる国かどうかにより、大きな格差が生じてしまいます。この法律では、EU内で格差が生じないよう配慮する項目も盛り込まれています。

AI規制法は、AI開発事業者だけでなく、サービスを提供する事業者も規制の対象となります。ただし、軍事目的で開発されたもの、国際協定の枠内でEUとの司法協力などのために使うもの、サービス開始前の研究などに関しては、対象外と定めました。

この法に違反した場合は、最大で3500万ユーロ(約60億円)、または前年度の全世界年間売上高の7%のいずれか高い方を制裁金としてEUに納めなければなりません。これはEU法の中でも、かなり重い制裁金です。

ヨーロッパは、民主主義国家としての歴史も長く、人権を何より重視しています。「データは個人のもの」という大前提があり、政府や企業は個人情報を「お借りする」というスタンスです。ですから、個人を守るために、個人情報をもとに活用される生成AIにいち早く規制をかけたのは当然の動きでした。これに対して、アメリカは市場競争が優先され、「国家が規制することは自由に反する」という考え。生成AIに関しても、まずは自由にやらせて問題が生じたら後から規制する姿勢をとっています。日本は米国型なので、ネットの規制も遅れています。

チャットGPTを運営するオープンAIは、4月にアジア拠点として日本に事務所を置きました。規制が厳しくなく、AI研究・開発のしやすい国と判断されたからです。しかし、日本では個人情報流出のニュースが後を絶ちません。EUの規制法はグローバルスタンダードになる可能性があり、日本も厳しいリスク管理を迫られています。

ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。

※『anan』2024年7月3日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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