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16歳の今、アリアナが語る子役時代、『バービー』出演、そして未来──アリアナ・グリーンブラット/俳優【ニュー・ハリウッドvol.3】

  • 2024.6.29

アリアナ・グリーンブラットが「自分は俳優になる」と心に決めたのは、1994年のアクションスリラー映画『レオン』でのナタリー・ポートマンを見たときだった。今では議論を呼ぶこの作品に出会った当時、彼女はまだ12歳だった。ちょうど、ナタリーが殺し屋の相棒となる少女、マチルダを演じた年齢だ。すでにアリアナは子役としての活動を始めていたが、ナタリーの演技にすっかり魅了され、目指す道が決まったという。「あの若さで、(ナタリーが)あれだけの演技を見せているのに、すごく感化されて、『最高にかっこいい!』って思ったんです」

カリフォルニア州バーバンクにある実家でZoomインタビューに答えるアリアナは、16歳になった今も、この作品でのナタリーに心酔しているようだ。実際、そのクールさに惚れ込んだ彼女は、ハロウィーンでマチルダに扮したほどだ。一方で、そんな彼女が俳優としてブレイクしたきっかけは、2023年に大ヒットを記録したグレタ・ガーウィグ監督作品『バービー』で、不満げなプレティーンの少女、サーシャを演じたことだった。

プロのバレリーナの母と、元俳優の父の間に、ニューヨークで生まれたアリアナは、パフォーミング・アートの世界にどっぷりと浸かって育った。2歳から7歳までは、ダンスコンテストに出場していた。

その後アリアナは、15年に6歳で、ディズニーチャンネルのドラマ「うわさのツインズ リブとマディ」の1エピソードに出演し、ドラマデビューを果たす。その1年後には、同じくディズニーのシリーズ「ハーレーはド真ん中」でレギュラーの座をつかみ、主な舞台となるディアス家の末っ子、したたかなダフネを演じ、主役のジェナ・オルテガらと共演した。17年には、映画『バッド・ママのクリスマス』で、主演のミラ・クニスの娘にキャスティングされているが、メジャー系映画への初出演は翌18年、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』で、このときは幼少期のガモーラを演じた。その後も複数の映画に出演したほか、『スター・ウォーズ』シリーズの配信ドラマ「アソーカ」では、若き日のアソーカを演じている。

若いラティーナの俳優として、大切にする指針

とはいえ、ガーウィグ監督が作り出したピンクずくめのバービー・ワールドで演じたサーシャが、アリアナにとってこれまでで一番の大役なのは間違いない。サーシャはアメリカ・フェレーラが演じるグロリアの娘で、自信にあふれ、小生意気でバービー人形を毛嫌いしている。アリアナ自身もサーシャに好感を抱いているというが、それは二人が、人生で似たような時期にさしかかっているからだろう。「底意地が悪い、思春期に入ったいじめっ子のティーンエイジャーに見えるかもしれないけど、サーシャは違うんです。自分の意見を持っていて、まだ若いから、キツく聞こえるような言い方しかできないだけです。そうやって言いたいことを伝えなくちゃいけないこともありますよね?」

16歳のアリアナは、劇中のサーシャと同様に、複数の側面を持つ。アートを愛好し、初めての大きな買い物はジェシー・モクリンの絵画だったという。一方で、パーティーピープルの側面はまったくない(むしろ、公の場で過ちを犯すことには極端に神経質だ)。

アリアナは今後も、語られるべきストーリーに光を当てていきたいと考えている。これは、若いラティーナの俳優である彼女にとって、特に重要なテーマだ。自信に満ち、クリエイティブなエネルギーと野心に満ちたその姿は、ハリウッドでも最も魅力的な新進俳優の一人と言っても過言ではない。彼女には成功したいという強い気持ちがあり、戦略的に自身のキャリアを歩んでいる。『バービー』の撮影現場でも、彼女は「スポンジ」となり、名優揃いのアンサンブルキャストから、できる限り多くの知恵を「吸収」しようとしていた。「一緒に仕事をした人みんなを、観察していました。あれだけの人たちと共演できるなんて本当にラッキーだし、これが当たり前だと思いたくないんです」。具体的には、母親役のフェレーラ、そしてマーゴット・ロビーとガーウィグ監督から学び、3人のインタビューにはすべて目を通したという。「3人とも、仕事に臨む姿勢は違うけれど、私が知っている中でも最高クラスの努力家です」と絶賛する。

『バービー』で出会った最高のロールモデルたち

さらにアリアナは、大好きなミュージシャン、ビリー・アイリッシュとも友人になり、メンターとしてアドバイスを得るようになったという。ビリーは『バービー』の挿入歌「ホワット・ワズ・アイ・メイド・フォー?」をヒットさせ、グラミー賞も獲得している。「製作中はずっと、ビリーが明るい光でした。それにビリーには、私と自分を重ねて見るところもあったと思います。人生が大きく変わったとき、ビリーはちょうど、今の私くらいの歳でしたから」『バービー』の撮影現場で出会った、最高のロールモデルの中でも、特にアリアナが強い憧れを抱いているのが、マイケル・セラだ。その出演作を、アリアナはすべて暗記しているという。だが、撮影現場で自分のそばを通り過ぎるのを見るまで、彼が『バービー』に出演しているのを知らなかった。「すっかり忘れていて」と、彼女はクスクス笑いながら振り返る。結局、セラとは毎朝、ワードパズルの「ワードル」を一緒に解くような関係になり、撮影終了時には、直筆の長い手紙を手渡したという。「いきなり泣かれちゃいました。『これをうちの冷蔵庫に貼るよ』って言われて」『バービー』の公開は、ハリウッドのストライキと重なったため、出演者は映画のプロモーションにはまったく参加できなかった。「このストライキはどうしても必要だったと思うし、状況を変えられたことがうれしいです。まだ、もっと変えられる余地はあると思っていますけど」と彼女は言う。具体的には、さらに平等が徹底されることが望みだという。「『バービー』が作られたのもそれが理由ですし」

だが、このストライキも『バービー』のヒットを阻むことはなく、興行収入は14億ドルを超えた。その衝撃はアリアナの脳裏にしっかりと刻まれている。実際、当初はあまりの快進撃に「恐ろしくなって」、公開後は家にこもりきりだったという。「素晴らしいことだけど、ありえないくらいの注目を浴びることになってしまったので。それまでは、この世界での自分の立ち位置というか、イメージが自分の中にあったのに」

キャリアを前に進める中でも、地に足をつけていることを最優先してきたアリアナにとって、これは何より大切なポイントだ。一方で、レッドカーペットでは「キメ顔の女王」とも呼ばれているが、こちらは彼女のどんな一面を表しているのだろう? この問いに、「自分を守るベールのようなもの」と彼女は答え、自分に浴びせられる好奇の目を受け流すための方法なのだと説明した。「これは疑いや恐れの感情を締め出すために、私が身につけた『表向きの顔』です」

アリアナはほかにも、自分を守る手段を持っている。ソーシャルメディア中毒に陥っているZ世代やアルファ世代の典型的な若者と違い、彼女は自身とテクノロジーの間に明確な一線を引いている。それは、こうした技術がストレスや不安の源になるからだ。ソーシャルメディアのコメントには「すごく影響を受けてしまう」と、彼女は告白する。今でも完全に無視はできないが、コメント欄をスクロールし続けるのをやめるべきときはわかっているとのことだった。「本当にさまざまな人に、それぞれに違った印象を持たれるので」と、彼女はため息をつく。「それを自分ではどうしようもできないんです」

「私は演じる役柄をとても戦略的に選んでいます」

それでも、さまざまなタイプの役柄を演じた経験をもって、アリアナは自身のパフォーマーとしてのストーリーを塗り替え、再定義することができた。次に公開されるイーライ・ロス監督による同名のビデオゲームシリーズの実写版映画『ボーダーランズ』では、SFアクションコメディに挑戦している。だが厳密に言うと、これは彼女にとっての最新作ではない。13歳の時に、すでに撮影を終えていたからだ。この作品では、ゲーム版で愛されている「ちょっとおかしな」キャラクター、タイニー・ティナを演じている。『ボーダーランズ』に彼女が特に深い思い入れを抱いているのは、ケヴィン・ハート、ケイト・ブランシェット、そして「母であり女神」と彼女が呼ぶジェイミー・リー・カーティスなど、そうそうたるメンバーが並ぶキャスト陣が、「まさに家族のようだった」からだ。

幼いころから、自分よりはるかに年上の大人たちと仕事をしてきたアリアナは、キャリアを通じて、両親が自分を守り、支えてくれたのはとても幸運だったと振り返る。撮影現場でトラブルが起きても「幼いころは、関わらないようにしてくれていました」という。

アリアナは今後も自分にとって挑戦になるような作品に出たいと意欲を見せる。「私は演じる役柄を、とても戦略的に選んでいます。クリエイティブ面でやりがいがあって、それでいて自分にしっくりくる役でないと」。そうした傾向からすると当然だが、アリアナはすでに自身の夢のプロジェクトを思い描いている。それは、今を生きる自身を反映した作品だ。「10代の女の子の生活を描いた、青春ストーリーをやってみたい。もちろん、今までもそういう作品はあるけれど、ティーンエイジャーの生活は、何よりも複雑なので」

彼女はさらに、映画監督、ソフィア・コッポラとのコラボを夢想する。また、彼女の夢は、俳優以外のジャンルにも及んでいる。映画監督にもぜひチャレンジしたいといい、最近はキャラクター設定の創作に没頭しているとのことだ。さらにはA24製作作品への出演、エマ・ストーンやバリー・コーガンとの共演など、夢は尽きない。

こうして人生の新たな一章を切り開いていく中でも、元子役スターにありがちなワナに陥らないよう、彼女は警戒を怠らず、「自分を守ることは本当に重要」と強調する。それには、無条件の愛を注いでくれる人たちに囲まれて過ごすことが不可欠だ。

16歳にして、23年最大のヒット作『バービー』に出演した実績を持つ彼女の部屋も、愛してやまない作家によるアートに囲まれている。先述のモクリンの絵画や、日本のアニメ風のスタイルの作品とともに飾られているのは、兄の描いたスケッチや、友人が描いた絵、想い出がいっぱいのポラロイド写真、それぞれがアーティストでもある両親経由で手に入れた作品などだ。愛と密接な関連を持つアート──これは彼女の家族に常に存在してきた要素だ。

最近、アリアナはアニメ映画『コララインとボタンの魔女』の1シーンをもとに絵を描いた。絵本が原作のこの映画は、家族への愛情という視点から、少女の自立やアイデンティティを描いた作品だ。自身の今後について、アリアナはまだ考え中だという。「幼いころから、きちんと自分の意見を言い、大切だと思うことについて声を上げる必要に迫られてきました。でも、私のことをわかってくれる、最高の人たちにも囲まれてきた。それも本当なんです」

Photos: Josefina Santos Text: Ilana Kaplan Translation: Tomoko Nagasawa

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