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【入場無料】レトロな魅力が満載!「市谷の杜 本と活字館」で印刷の世界をディープに体感

  • 2024.7.12

2021年に一般公開した「市谷の杜 本と活字館」。印刷事業の原点である「活版印刷」を中心に、貴重な展示の数々や体験型のワークショップを通じて、印刷技術の美しさや魅力を知ることができます。歴史的な建造物と現代的なデザインが融合した空間はフォトジェニックで、カフェも併設、さらには入館も無料! レトロな魅力あふれる印刷の世界を、ディープに楽しむことができますよ。

かつての工場跡地に建つ「市谷の杜 本と活字館」

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2021年に一般公開した「市谷の杜 本と活字館」。

運営するのは総合印刷会社「DNP大日本印刷」。"リアルファクトリー"をコンセプトに、印刷事業の原点である「活版印刷」を中心として、印刷技術とその魅力を体感できる施設になっています。

地下鉄の市ヶ谷駅を出て10分程、クリーム色の外壁と時計塔が目立つレトロモダンな建築が現れます。

今ではDNPのオフィスが建ち並ぶ一帯に広がっていた「市谷工場」では、実際に2003年まで活版印刷が行われていました。

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現在「市谷の杜 本と活字館」として使用されているのは、そんな市谷工場の営業所棟として1926(大正15)年に竣工した建物。レリーフやタイルといった意匠から、外観の色彩、時計台の文字盤のフォントに至るまで、当時を正確に再現・修復したのだそうです。

ちなみに修復工事の動画も、館内の記録室や公式YouTubeで公開中。特に、建物を丸ごと持ち上げて移動させた作業の様子は迫力満点で、一見の価値ありですよ!

実物の展示で活版印刷の技術を知る1階

大きな戦前の印刷機がお出迎え!

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市ヶ谷の杜 本と活字館の1階では、活版印刷によって本ができあがるまでの工程が展示されています。

そもそも「活版印刷」とは、「活字」と呼ばれる文字ごとのパーツを並べた版を用いた印刷方法。順路を巡ることで、文字の「原図」から活字の「母型」を彫り、鋳造し、活字を拾って版を組み、印刷・製本する、その工程を学ぶことができますよ。

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展示されている道具や活字は、実際に使用されていたものばかり。ディスプレイに使われる棚や台に至るまで工場のものが再利用されているので、レトロ好きにはたまりません。

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建物に入ると、まず目に入るのはこちらの大きな活版印刷機! 正確な時期は定かではないものの、昭和初期には使われていた「平台印刷機」と呼ばれる型のものです。

ほとんど放置されていた状態からすべて解体し、足りない部品は設計し直すなど修理を重ねたことで、動く状態での展示を実現したのだそう。

しっかり復元されながらも、年季を感じる傷や色合いはあえてそのまま残されています。

今回はお願いして、印刷機を稼働してもらいました! 歯車が噛み合いカタコトと音を立てて動く様子は、ロマンがありますね。

膨大な活字から探し出す「文選」を体験

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1階の展示の中には、活版印刷の技術を体感できるコーナーも

こちらは大量の活字が収納された棚(ウマ)から、原稿にあわせた活字を1つ1つ拾う「文選」の作業を、タッチパネルを通して疑似体験できるブースになっています。

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筆者も挑戦しましたが、「親譲りの無鉄砲で」の「親」はどこに……。とモタモタしているうちにタイムアップ。2分かけて探せたのはわずか8文字でした。

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迷っていると画面が大まかな位置をアシストしてくれるのですが、それにしても文字の種類が多すぎて難しい!

その後は活字拾いの職人「文選工」さんのデモプレイと比較。なんと45秒ほどで全文を完成してしまいました! 使われる文字の頻度に応じて、活字の場所を暗記されているそうです。

タイポグラフィの原点「植字」

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文選の後は、いよいよ印刷の版をつくる「植字」の作業に。

活字で文章を作るだけでなく、行間やルビ、挿絵や写真の入る位置、文字間の余白などもすべて調整しながら専用の道具で隙間を埋め、ページの体裁に合う形にしなければなりません。

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PCの操作1つで簡単に文章が整う現代からは想像もつかない作業量。タイポグラフィの原点に触れ、ライターとして感服するばかりです。

また、活字や活版印刷によって作られた本の数々も展示されています。

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中でも注目したいこちらは、1955年に刊行された広辞苑の初版本。第2版補訂版までは活字組版によって作られていたんです。

辞書は10年以上の歳月をかけて作られる大事業で、使用する活字の量も膨大。

岩波書店がチェックした原稿が戻ってきたとき、その修正点の多さにたまらず、職人さんが校正刷りを床に叩きつけた、なんてことまでしっかり記録に残っています。

現在でも活版印刷が続く「印刷所」

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1階には、かつての印刷工場の風景を再現している「印刷所」と呼ばれるスペースも。こちらでは今でも職人さんが活字を拾って、印刷機を回しています。

現在ではなかなか見られなくなった、実際の活版印刷の作業風景を見学できますよ!

普段の立ち入りはできませんが、ワークショップへの参加時や、土日に行われる常設展ツアーの際は中に入っての見学や、道具を使った印刷体験が可能です。

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中には11カ月かけて本を作るといった、本格的なワークショップも実施中とのこと!

ワークショップで印刷体験もできる2階

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2階は、企画展の展示室や、印刷や本づくりの体験ができる制作室、購買があります。

制作室のフロアには、卓上活版印刷機(通称:テキン)やシルクスクリーンなどアナログの設備と、レーザーカッター・UVプリンターなどのデジタル機器までが幅広く展示。

中でもデジタルで孔版印刷(小さな穴を通してインクを塗布する印刷方法)を行うリソグラフは、刷りのムラや色合いに味があると、近年アートシーンでも注目を集めているのだそう。

こちらの卓上活版印刷機を使ったしおりへの印刷は、予約不要で体験可能でした。

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スタッフの方の説明を受けながら、お手軽に作ることができますよ! 乾くまでは2~3日ほどかかるので、持ち帰り用の袋をもらえます。

ちなみにしおりへ印刷される図柄は企画展の開催にあわせて変更され、コレクションするリピーターの方もいらっしゃるそうです。

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購買では、デザイン関連の書物やTシャツ、リソグラフによるアナログ感が可愛い印刷物まで幅広く販売。中にはミニチュアサイズの活版印刷機(価格:21,780円)まで売られていて驚きでした。

オリジナルのドリンクも!喫茶利用もおすすめ

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1階にはカフェも併設され、コーヒーや軽食をいただくことができます。

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こちらがメニューですが、ホットコーヒーのMサイズで200円、アイスティ―はMサイズで140円など、お値段が非常にお手軽です! また、夏季限定として印刷をテーマにしたオリジナルドリンクも販売中。

筆者は、製本に使われる「膠(にかわ)」をモチーフにしたジンジャーエール「にかわソーダ」をチョイス。

もちろん本物の接着剤である膠が入っているわけではなく、生姜のシロップで茶色く透き通った色合いに。種類は"濃"と"薄"がありましたが、濃をいただきました!

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生姜の深みとピリリとした辛さを感じられる、大人な味わい。ツルっとしたゼリーも入っていて、炭酸との相性も抜群。暑い季節にうれしい爽やかなドリンクでした。

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購入したフード・ドリンクは、2階のフォトジェニックな"活字ベンチ"や……

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もしくは地階の中庭に面した記録室でいただけますよ。

「市谷の杜 本と活字館」でここだけの体験を

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プロジェクトの開始当初からデザイナーも参画しているという、本と活字館。歴史を感じるレトロさと、印刷会社ならではのデザインのスタイリッシュさが共存している空間も大きな魅力です。

館内各所の案内は、活字がモチーフに。無料配布のパンフレットや館内マップも、デザイン性の高さを感じました。

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本と活字館の展示は充実の内容でしたが、これでも実際の工場で用いられていた設備や道具のごく一部とのことです。

長らく出版を支えながら、今では目にする機会の少なくなってしまった活版印刷。

実物の道具や職人さんの技術を目の当たりにし、実際にワークショップで体験することで、その奥深さや美しさを実感できました!

展示内容はもちろん、カフェや空間づくりなどにもたくさんの魅力がありますので、ぜひ訪れてみてくださいね。


市谷の杜 本と活字館

所在地:東京都新宿区市谷加賀町1-1-1

電話番号:03-6386-0555

開館時間:10:00~18:00

休館:月曜・火曜(祝日の場合は開館)、年末年始

 

[Photos By ぶんめい]

※価格はすべて税込です。

※時期により商品の仕様や品揃え、価格が変わる可能性がありますので、ご注意ください。

※開館状況・ワークショップについては、最新情報をご確認ください。

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