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Z世代を叱るときに有効な「シットサンドイッチ法」とは…パワハラにならない苦言のうまい伝え方

  • 2024.6.29

部下ができると褒めるだけではなく叱る必要も出てくる。山本渉さんは「昭和のような頭ごなしの叱り方は論外で、ビジネスの場で叱ってはダメ。特に新卒社員を含むZ世代には、苦言の前後を褒め言葉で挟むテクニックが有効だ」という――。

※本稿は、山本渉『任せるコツ 自分も相手もラクになる正しい“丸投げ”』(すばる舎)の一部を再編集したものです。

投資を計画するためのグラフで収益について話し合う2人のビジネスパーソン
※写真はイメージです
だから家康は天下を取れた、部下を潰さない叱り方5カ条

「徳川家康の叱り方」というのが、SNSで話題となっていたことがありました。発信元によって多少差がありますが、大きくはこのような内容です。

・本人だけに伝える
・やわらかい言葉で伝える
・最初に今までの功績を称えて感謝する
・最後にこの先も期待していると伝える
・家来への叱責は自分への戒めと捉える

ネットで称賛されていたもので、史実なのか定かではありませんが、現代にも通じる相手を配慮した「叱り方」であることには間違いありません。

人に仕事を任せるためには「褒め方」にも工夫が必要です。

しかし、ビジネスでもプライベートでも褒めているだけなら楽なのですが、現実はそうはいきません。

「頼んだことを全然やってくれなかった」
「やってくれたけど酷い内容だった」
「何度も同じミスをする」

誰も望まないですが、このようなケースに遭遇することもあるでしょう。褒めるだけでは対処しきれません。

パワハラだと思われないように叱るにはどうすればいいのか

また、叱ることでパワハラにならないか、相手が会社を辞めてしまわないか、と心配になる人も多いです。

前述の徳川家康の叱り方ではないですが、「叱り方」にも作法がありますので、ここからは「正しい叱り方」に関して解説していきます。

まず結論からお伝えすると、ビジネスの場で叱ってはダメです。

では、スルーするのかというと、そうでもありません。

相手の状況に応じて「指摘」「指導」「誘導」をします。

呼び方の違いではあるのですが、「叱る」という言葉には、「コラっ! 違うだろ! 何度言ったらわかるんだ!」というように、上から目線で怒っているイメージがあります。

例えば、子どもが道路に飛び出そうとした際に「コラっ! 危ないでしょ!」と叱る。これは必要なことかもしれませんが、ビジネスの場で大人に対して「叱る」という感覚には適していません。

これでは、アンガーマネジメントができていない上司になってしまいます。

叱るのは「相手を成長させるため」であって、目的ではない

そもそも、叱る必要があるとき、その目的は何でしょうか?

相手が改善するよう促す、ということに尽きます。

「褒める」と同様に「叱る」は手段であって目的ではないです。

それなのに、感情的になって叱っている人は、そのこと自体が目的になっていたり、怒ることで気を晴らしているだけのことが多いです。

従業員に怒るマネージャー
※写真はイメージです

それではメンバーの行動改善にはつながりません。

「冷静に問題を指摘」して、なぜそれが問題なのか、どうすべきか「指導」して、改善できるよう一緒に考え「誘導」する。

「相手を成長させる」というのが目的であれば、これが最適です。

絶対にやってはいけない叱り方の4パターン

そもそも叱らない、とお伝えしましたが、とくにNGな叱り方をお伝えしておきます。

・みんなの前で叱る
・ネチネチと長く叱る
・人格否定をする
・すでに反省している人に対して叱る

理由はお伝えしなくても、理解していただけるでしょう。

「重要な案件でのミス」「何度も繰り返すミス」「期待した案件でのミス」などのケースでは、怒りが収まらず、ついついやってしまいがちなので気をつけましょう。

4つ目の「すでに反省している人に対して叱る」に関しては詳細をお伝えしつつ、ではどうしたらいいのか、「指摘」「指導」「誘導」を具体的に解説していきます。

叱るときの指摘・指導・誘導の流れ
出典=『任せるコツ』
「すでに反省している人」はどう誘導すればいいのか

この3点は順番に進んでいくものですが、「問題を認識しているか?」「反省をしているか?」によってスタートが変わります。例えば、メンバーが顧客の機密書類を違う顧客に誤送信してしまったとしましょう。もし本人がミスに気づいてもいない場合は、「指摘」「指導」「誘導」の順に進みます。

ミスを伝え(指摘)→起きたことの重大性を教え(指導)→再発防止の対応策を一緒に考えます(誘導)。

本人がミスは認知しているけど、反省していない場合は、「指摘」はスキップし、「指導」からスタートします。

本人がミスも認知し、深く反省している場合、あらためてミスを伝えて反省を促す必要はありません。

傷口に塩を塗るようなことをしても、いいことはありません。

「誘導」に注力し、例えば添付書類を社外にメール送信する際はアラート機能をつけるとか、送る前に他の人がチェックをする体制をつくるなど、誤送信が起きないようにする対策法を考えてもらいましょう。

会社のオフィスで文書を押し戻す幹部の男性
※写真はイメージです
Z世代を叱るときに有効なアメリカ式のメソッド

相手にネガティブなことを指摘しないといけない際の、おすすめの手法を二つご紹介します。

①「シットサンドウィッチ」を使う

アメリカで古くからある手法で、学生時代にメイドサービスを起業して、世界トップ10CEOに選出されたクリステン・ハディードさんの奮闘記『奇跡の会社』(ダイヤモンド社)の中でも多用されているものです。

とくに「Z世代と呼ばれる若い世代に効果的」と紹介されています。

一言で言うと、いきなり「叱る」ことはせず、「褒め言葉で前後を挟みましょう」。シットサンドウィッチという提案です。

「シット」は本来あまり上品な意味合いの言葉ではないですが、文脈上「苦言」と捉えてください。「苦言」を良いニュアンスの言葉で挟むと、受け入れられやすくなります。

前述の徳川家康の叱り方の「最初に今までの功績を称えて感謝する」「最後にこの先も期待していると伝える」もこれに近い考え方でしょう。

ビジネスとプライベートでありそうな例で、「苦言」から伝えるのではなく、シットサンドウィッチしてみましょう。

叱り方のテクニック「シットサンドウィッチ」
出典=『任せるコツ』
くどいようでも最初だけでもポジティブワードを入れる

例1「営業成績が落ちてるし、顧客への提案資料にミスが多いじゃないか」
「○○さんは入社以来、ずっと上位の営業成績をキープしてるよね。でも、最近厳しい結果が続いてるし、提案資料のミスも目立ってきてるね。ポテンシャルはあるから、ミスに気をつけていけば絶対また結果が出るはずだよ」

この例文では、太線部分でポジティブな話をして、「苦言」を挟んでいます。また、プライベートでもシットサンドイッチは活用できます。

家族にお皿洗いをお願いして油汚れが残っていました。どう伝えたらよいでしょうか?

例2「ちゃんと洗剤つけたの? 汚れが残ってて結局やり直しだよ」
「お皿洗いありがとう。コップもピカピカになってた。でも大皿だけ汚れが残っちゃってた。油が多いお皿は洗剤を多めにすると、他のみたいにピカピカになるよ」

どうでしょうか? 少しは和らげられて、次から改善してみようかなと思いませんか。

クドイ印象があるようでしたら、挟まずとも最初だけでもポジティブワードを入れてみてください。

相手が「すみません」と恐縮して謝っている場合は?
② 「WHY」(なぜ言うか)を伝える

二つ目の手法は、相手が「恐縮しているとき」、もしくは「全然反省していないとき」に必要となってくるものです。

もしも相手が「すみません、すみません」と恐縮して謝っているケースでは、相手は怒られていると感じてしまっています。

目的は怒ることではなく、改善してほしいからネガティブなこともあなたに伝えているということを理解してもらう必要があります。

「ここさえ直せば他は完璧だから」「同じミスをしてほしくないから」など、なぜ指摘しているかを伝えましょう。

それとは逆のパターンで「全然反省していないとき」も同様です。

自分ごと化されていなかったり、他人のせいにしようとする場合などです。

その場合も、「ポテンシャルは高いから」「良い成果を出してほしいから」など承認や相手のメリットも添えて、理由を伝えるのがポイントです。

仕事の「任せ方」をマスターしたら、自分をほめてあげよう

締めくくりとしてお伝えしたいことがあります。

山本渉『任せるコツ 自分も相手もラクになる正しい“丸投げ”』(すばる舎)
山本渉『任せるコツ 自分も相手もラクになる正しい“丸投げ”』(すばる舎)

自分自身も褒めてあげましょう。

マネジメントの仕事は大変です。

任せることができたら、丸投げが成功したら、部員が成長したら、ぜひ自分を褒めましょう。

プライベートでもお願いしたことを、相手も喜んで引き受けてくれたら、良い結果になったら、思いっきり自分を褒めましょう。

美味しいお酒でも、スイーツでも買って、自分にご褒美を与えて、褒めて息抜きをしていきましょう。

山本 渉(やまもと・わたる)
マーケティング会社統括ディレクター
引きこもりを経験し、高校を中退後アメリカに留学。大学でマーケティングとエンターテインメントを学び卒業。帰国後、国内最大手のマーケティング会社に入社。現在はジェネラルマネージャー。部長を束ねる統括ディレクターも兼ね、年間100近いプロジェクトをメンバーに依頼している。著書『任せるコツ 自分も相手もラクになる正しい“丸投げ”』(すばる舎)はベストセラーに

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