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SixTONES京本大我の“体温が伝わる演技”に感動…役者としての新境地とは? 映画『言えない秘密』考察&評価レビュー

  • 2024.6.29
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©2024「言えない秘密」製作委員会

SixTONESの京本大我が単独初主演を飾る映画『言えない秘密』が公開中だ。これまでにありそうでなかった、ミステリアスな雰囲気をまとったラブストーリーである本作について、京本の演技に着目したレビューをお届けする。(文・柚月裕実) <あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー>
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【著者プロフィール:柚月裕実】
エンタメ分野の編集/ライター。音楽メディア、エンタメ誌等で執筆中。コラムやレビュー、インタビュー取材をメインにライターと編集を行ったり来たり。SMAPをきっかけにアイドルを応援すること四半世紀超。コンサートをはじめ舞台、ドラマ、映画、バラエティ、ラジオ、YouTube…365日ウォッチしています。

©2024「言えない秘密」製作委員会
©2024「言えない秘密」製作委員会

本作は2007年に台湾で公開された同名作品を原案に、映画『かぐや様は告らせたい 天才たちの恋愛頭脳戦』(2019)などを手がけた河合勇人が監督を務める。脚本は映画『法廷遊戯』(2023)などで知られる松田沙也。台湾を筆頭にアジア圏で大ヒットを飛ばした名作が2024年に蘇る。

【写真】京本大我の“全身全霊の名演”に心震える劇中写真はこちら。映画『言えない秘密』劇中カット一覧

京本が演じるのは、過去のある出来事からトラウマを抱えた音大生・湊人(みなと)。古川が演じるのは、どこか謎めいた雰囲気のある大学生・雪乃(ゆきの)。音大に通うほどの湊人が、抱えたトラウマによってピアノに魅力を感じなくなってしまっていた。

そんなある日、雪乃が弾くピアノの音色に導かれ、運命的な出逢いを果たす。そう多くは語らないものの、自然と惹かれ合う2人。雪乃の天真爛漫な性格や、曇りのないピアノ演奏によって、湊人も少しずつ気持ちに変化が生じる。

そんなかけがえのない時間は永遠かのように思えたが、突如、雪乃は湊人の前から姿を消してしまう…。

©2024「言えない秘密」製作委員会
©2024「言えない秘密」製作委員会

本作で印象に残ったことの1つが京本の表情以外の部分で魅せる芝居だ。もちろん芝居をする上で、表情のみならず、緩急つけたセリフ回し、身のこなしなど全身を使うことが大事になってくるのだが、本作で京本は様々な場面において、繊細な手の動きによって湊人の感情を豊かに伝えていた。

天真爛漫な雪乃から半ば強引にピアノの連弾に誘われるシーンがある。自信を失ってしまうようなトラウマを抱えていた湊人にとって、何かの目的を果たすためではなく、娯楽としてのピアノ演奏を通して初心を取り戻すような場面だ。

最初は乗り気ではなかった湊人だが、雪乃の弾むような演奏、鍵盤の上をキラキラとしたビー玉がコロコロと転がっていくような愛らしい音色に誘われるようにして、鍵盤に手を置く。

連弾を通して心を弾ませ、心を通わせる2人。湊人にとってこの時間は、迷いや葛藤など複雑に絡み合った思いを束の間忘れて、心休まるひとときになっていた。楽曲の高まりと共に高揚感が生まれ、雪乃の手に重ねた手からは恋心、そして湊人の素直さや優しさ、温もり…きっと少しだけ上昇した体温までもが伝わってくるようだった。

©2024「言えない秘密」製作委員会
©2024「言えない秘密」製作委員会

その姿からは、雪乃に対する気持ちをはじめ、湊人の心情や、繊細で誠実な人柄が伝わる。また、丸みを帯びたメロディーは、そうした彼のキャラクターを見事に表現していた。

“着席してピアノを弾くという動作上、ダイナミックな動きのあるシーンではないが、“静かなる熱気”というようなインパクトを残す場面だった。こんな風に、本作では湊人を演じる京本が、セリフや表情などの動きに加えて、ピアノ演奏においてもたっぷりと気持ちを乗せた芝居で魅了する。

湊の手、そして彼が奏でるピアノの旋律からは様々な感情が伝わってくるのだ。雪乃が演奏するピアノの旋律に心惹かれた湊人のように、観客もまた湊人のピアノの音色に心を動かされるだろう。

古川琴音らしいミステリアスな雰囲気が、作品の持つ世界観とマッチしており、これぞハマり役。ミュージカルで鍛え上げてきた京本ならではの芝居と、古川の個性的な芝居が音楽を通して交わる。まさにピアノの“連弾”のような作品だ。

©2024「言えない秘密」製作委員会
©2024「言えない秘密」製作委員会

動画配信サービスを通じて、いつでもどこでも自分の好きなタイミングで好きな映画が観られる昨今。手軽さは大きな魅力だが、そんな中でも、本作は映画館特有の没入感に加えて、ストーリーの面白さに引き込まれる。フィルムのようなレトロ感のある映像美。世界観を損なわないロケーション。さらに、横田真悠、三浦獠太、坂口涼太郎ら少々賑やかな学生たちもまた、物語がファンタジーに偏りすぎるのを防ぐ役割を果たしている。

そしてピアノの旋律がキーとなるだけに、大きなスクリーンと音響設備が備わった劇場だとより深く作品世界に没入することができる。映画館に足を運ぶ“メリット”と言っては味気ないが、劇場だからこその魅力が体感できる作品だ。

主題歌はSixTONESが歌う「ここに帰ってきて」(7月10日リリース)。この楽曲もまた本作に絶妙な彩りを添えており、作品と交わることで描かれた歌詞が際立って響き、胸を揺さぶるだろう。

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