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医師に聞く!「更年期セックスレス」の解決策&対処法

  • 2024.6.29
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医師が解説! 中高年夫婦やカップルのセックスレスはなぜ起きる? 更年期の性生活とセックスレス対処法について考えます。

「早く終わってくれ」と願いながらセックスする女性たち

「早く終わってくれ」と願いながらセックスする女性たち

したくもないセックスに「付き合った」ところで、女性側には何のメリットもない。痛いし、楽しくもないし、「早く終わってくれ」と願っている女性たちは、実は多いのだ。

そもそも、日本の中高年男女において、セックスレスは「ごく当たり前の事実」となっている。

7割以上の男女が、年間に一度もセックスしていないという統計もあるほどで、全世代でみても、2人に1人がセックスレスの時代である。

たまにするから性交痛がある、痛いからしたくない……と悪循環に陥っている女性も少なくない。

「痛いなら痛いと言えばいい。男女のコミュニケーションがとれていないし、いまだに男性主導のセックス関係なんですよね。

夫婦の場合、共働きでがんばってきて、子育ても家事も圧倒的に女性に負担がかかっていた人生を送ってきて、閉経してからも夫のセックスに『付き合わされる』なんて理不尽ですよね」と語るのは、「よしの女性診療所」院長・吉野一枝医師だ。

性に関しては、なかなか日常生活の話題にはのぼらない。女性から積極的に求めるのも、痛いと素直に言うことも、なぜかはばかられるのだ。

性については言葉を持たない方が「女らしい」からだろうか? 性をタブー視する親たち世代に育てられた影響だろうか。

夫婦になったらセックスについて話し合う機会はなくなる!?

夫婦になったらセックスについて話し合う機会はなくなる!?

「日本の男女関係は、結婚がゴールになっている」と吉野医師は言う。だから夫婦になった後、子どもができれば、ますます男女としての営みは減っていく。性について話し合うチャンスもなくなっていく。

「例えばセックスレスになるきっかけの一つに出産があるんですね。多くの女性たちは出産後、月経が戻るまでは性欲が湧きにくいものなんですよ。母乳をあげていると月経は戻らない。だから1年くらいはしたくないのがごく普通。

男性はそんなことはわからないから、ある程度、時間がたてば求めてくる。そこできちんと自分の体や心について説明して、お互いの愛情で工夫すればいいわけです。

挿入だけがセックスではない。性欲は湧かないけど愛情があるのなら、お互いに気持ちよくなる工夫はできるはずなんです」

ちなみに、出産後、性欲が湧かない女性もいれば湧く女性もいる。産後間を空かずにしたいと思う女性がいても変ではない。あくまでも一般論である。

更年期こそ夫婦関係を考え直すタイミング

更年期こそ夫婦関係を考え直すタイミング

「更年期は、夫婦関係を考えるいいきっかけになると思います」と、吉野医師。

晩婚化で子どもを産むのが遅くなっているとはいえ、女性が50代に入れば子どももある程度は大きくなっているはず。そのときが、これからの夫婦二人の人生を考え直す時期になるのではないだろうか。

「定年後に夫は地方へ移住、妻は都会で別居婚になっている夫婦もいます。話し合って決めたそうですが、そういうのも一つの形だと思います。

今までの恨みつらみがあるのなら、熟年離婚したっていいじゃないですか。もちろん経済的な問題はあるかもしれないけど。

そしてその一環として、夫婦のセックスについても最後のチャンスだと思って話し合ってみた方がいいと思いますね」

そもそも、ほとんどの夫たちは、妻の膣が年齢によって変化していくことを知らないと吉野医師は言う。

それならまず自分できちんと調べて、夫にそれを伝える。夫が寄り添って対策を一緒に考えてくれるなら、これからの夫婦関係にも希望が持てる。

「話し合おうとするとどちらかが感情的になってしまうというなら、手紙を書くことをオススメします。書いている方も読む方も冷静になれるから」

今までの夫婦関係を振り返ってみての感想、セックスに対する考え方の違い、そして自分自身の体の変化を知ってほしいことなど、けんか腰ではなく、夫に静かに語り掛けるような手紙を書いてみたら、少なくとも今後も離婚する気のない夫なら真摯に向き合ってくれるはずだ。

「挿入すれば気持ちいい」という男性の誤解を正す

「挿入すれば気持ちいい」という男性の誤解を正す

「セックスレスでどちらも不満がないと了解しあっているなら、それはそれで問題にはならないんです。だけど片方がしたいと思い、片方がしたくないと思っている場合は、やはり話し合っていくしかありません。

したくないのはなぜなのか? もし女性に性交痛があるからしたくないなら、性交痛をなくすように対策すればいいわけです。お互いに相手を愛しているなら、努力はできるはずです」

性についても相談できる婦人科は少なくない。そういう診療機関に相談すればホルモン補充療法についても説明した上で処方してくれる。

膣内に錠剤を入れてエストロゲンを補い、性交痛を緩和させることもできる。萎縮性膣炎も防げるので一挙両得だ。

体に安全な潤滑ゼリーを試す方法もある。潤滑ゼリーは市販もされているが、どういうものがいいか医師に相談してみれば安心だ。

男女とも、若いときのような激しいセックスはもうできない。だからこそ、今の二人に合った、セックスのありようを作っていけるともいえる。

男性が挿入にこだわる気持ちは、自分の征服欲を誇示したいという側面もあるかもしれないが、挿入すれば女性は気持ちいいに違いないと勘違いしているところから来ている可能性もある。

それは誤解だと妻が言えば、夫も初めて女性の体や心やオーガズムについて理解できるようになるかもしれない。いずれにしても、深いコミュニケーションがなければ、セックスをしても楽しくはないのだ。

対等な関係で老後を迎えることができるのか。女性が更年期を迎えたときが、夫婦としての試金石になるのかもしれない。
 

吉野一枝

吉野一枝
1954年東京生まれ。29歳で医学部を志し、3年間の予備校通いを経て帝京大学医学部入学。’93年東京大学医学部付属病院産婦人科に研修医として勤務。
2001年、臨床心理士資格取得。2003年、よしの女性診療所を開院。NPO法人女性医療ネットワーク副理事長。女性の気持ちに寄り添った診療をしてくれる医師として患者からの信頼が厚い。

取材・文=亀山早苗

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