1. トップ
  2. エンタメ
  3. 「京本大我と古川琴音の素が出ている」2人にアドリブを任せたワケとは? 映画『言えない秘密』河合勇人監督インタビュー

「京本大我と古川琴音の素が出ている」2人にアドリブを任せたワケとは? 映画『言えない秘密』河合勇人監督インタビュー

  • 2024.6.29
  • 324 views
©2024「言えない秘密」製作委員会

SixTONESの京本大我単独主演映画『言えない秘密』が6月28日に公開。今回は、メガホンをとった河合勇人監督に、美しいピアノの旋律で繋がる珠玉のラブストーリーとなった本作について、脚本作りや、主演を務めた京本大我、ヒロインを演じる古川琴音の2人との共同作業についてたっぷりとお話を伺った。(取材・文:タナカシカ)

©2024「言えない秘密」製作委員会
©2024言えない秘密製作委員会

―――雪乃の秘密を知ったあとに微笑ましい出会いやデートシーンを思い返すと、胸が締め付けられるような感情になり、何度も見返してかみしめたくなる素敵な作品でした。プレス資料によると、2007年の台湾映画『言えない秘密』に山田実プロデューサーが出会ったことで本作が企画されたそうですが、河合監督は元々オリジナルがお好きだったそうですね。

「そうなんです。だから、まさかあの作品をリメイクしようなんて思わなくてびっくりしました。ただ好きだったっていうのもあるので、自分でリメイクするんだったらどうしようかな…とは思いました。もちろん原作の大事なところは外せないにしても、リメイクをわざわざ作る場合、同じことやってもしょうがないので」

【写真】京本大我の演奏シーンがカッコよすぎる…珠玉の劇中写真はこちら! 映画『言えない秘密』劇中カット一覧

―――オリジナルは台湾の作品ですが、日本とは文化が異なるため工夫が必要になったかと思います。海外作品を脚本に落とし込むときに意識した部分はありますか。

「当時観たときに、どこか日本の古き良き雰囲気がある作品として受け取ったんです。確かに舞台は台湾ですし、言葉やセリフは違いますが、登場人物とか街や建物の雰囲気などに、日本の穏やかな情緒があるなと。だから本作でも、現代の日本で失われてしまったノスタルジックな雰囲気を出せるよう、意識しました」

―――河合監督は、これまでラブコメ作品を多く手掛けられていますが、本作はこれまでとは少し異なるテイストの作品になっていますね。今回、どのような思いがあって臨まれたのでしょうか。

「元々デビュー作となった映画『花影』(2008)は、ピュアで真っすぐなラブストーリーで、個人的に、原点回帰したと思っています。でも、むしろそういったストーリーの方が好みではあるんです」

©2024「言えない秘密」製作委員会
©2024言えない秘密製作委員会

―――音大が舞台になっている本作には、数々のショパンの名曲が使われていますが、湊人と雪乃を繋ぐ楽曲「Secret」は、日本アカデミー賞でいくつも受賞歴のある作曲家・富貴晴美さんによって書き下ろされたものです。2人の想いを繋ぐ旋律に聴き惚れる素敵な曲ですが、監督からはどのような要望があったのでしょうか。

「オリジナルの『言えない秘密』でも、素晴らしい曲がたくさん出てくるんです。ですが、『Secret』がどういう曲だったか思い出せなかったんですよ。だからリメイクをするにあたって、メイン曲となる『Secret』が観終わった後にも思い出せるようなフレーズの曲にしたいと思って、それを富貴さんと最初にお話ししました」

―――出来上がった曲を聴いてどう感じましたか?

「何曲か候補をいただきましたが、この曲を聴いたときに『まさにこれだ。この曲しかない』と直感で感じました」

―――こちらの楽曲を聴いたキャストの方々の反応はいかがでしたか?

「京本さんと古川さんは、曲が決定した段階で聴いているので、『これ弾けるかな…』『これを連弾するのか』みたいな感情の方が強かったんじゃないかな(笑)」

―――古川さんはピアノ経験があったようですが、京本さんは未経験だったとプレス資料にありました。

「そうですね。それに、古川さんよりも京本君の方がピアノを弾く描写が多いですから相当練習したと思います。彼には『これを全部弾いてもらうからね』っていうのを伝えていたので、少なからずプレッシャーはあったと思います」

―――京本さんと古川さんの、役者としての魅力についてお聞きできればと思います。

「1番に思うのは、2人とも自然体を作りこめることです。『自然にやってくれ』っていう要望が一番難しいと思いますが、それを作りこめるって、役への理解やその姿勢なども含めて、流石だと思いました」

―――特に海辺や公園で自転車を2人乗りするシーンは、お2人のお芝居がとても自然に感じました。

「少し素が出ている所もありますね(笑)」

―――デートシーンではアドリブが多かったのでしょうか?

「もちろんありました。台本にはないシーンですが、『ちょっとここでデートして』っていうイメージです」

©2024「言えない秘密」製作委員会
©2024言えない秘密製作委員会

―――雪乃の日記を読むシーン以降、物語が一変しますね。先日古川さんにインタビューさせていただいた際、監督が雪乃のバックボーンを語ってくれたことが、役づくりをする上でヒントになったとおっしゃっていました。どんな会話があったのでしょうか。

「そうですね。雪乃は初めからすべて知っているので、湊人と接していく中でその感情をどれくらい出していくべきかということを、古川さんはかなり考えたと思います。湊人に悟らせたくないという感情と、どうしても湊人に会いたいという感情がにじみ出てしまう。

セーブしているものをどう出していくかなど、その演じ分けができるように雪乃のバックボーンをお話ししました。それがあったからこそ、僕の中にある雪乃と、古川さんの中にある雪乃をすり合わせることができたと思っています」

―――湊人のピアノバトルのシーンについてですが、1曲目を弾き終わった後、京本さんはホッとした表情をしますが、それからは苦しそうな表情でピアノを弾いていました。このシーンを撮影する際に、京本さんとはどのような会話を交わされましたか?

「イギリスから帰ってきてピアノを辞めるつもりでいる湊人が、同級生に強引に連れていかれて、無理やり弾かなければならないシチュエーションなので、弾かされている感、早く逃げ出したい。ただ煽られてそれに乗っちゃったっていう思いを、ピアノを弾き始める前に乗せてほしいという話をしました。でもあのシーンはそれよりもピアノの演奏自体が大変だったんじゃないかな(笑)」

―――湊人の父親が音楽仲間と演奏を楽しむシーンを観て、ジブリ映画『耳をすませば』(1995)の「カントリーロード」の演奏シーンを想起しました。また、イギリスの学校で罵倒されるシーンには、デイミアン・チャゼル監督の映画『セッション』(2014)を彷彿とさせられました。今回、意識された映画はありましたか?

「まさにイギリスの叱られているレッスンのシーンは『セッション』をイメージしていました。真っ暗な部屋で、怖いピアノの先生に罵倒されるシーンですね。ただ、湊人の父親がみんなで演奏するシーンは、『耳をすませば』ではなくて、ヴィム・ヴェンダース監督がキューバの音楽を撮った映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(1999)を参考にしました」

©2024「言えない秘密」製作委員会
©2024言えない秘密製作委員会

―――喫茶店で演奏するシーンの構図は、光が差すサンルームが額縁のような役割を果たしていて、絵画的であると同時に、画から素敵な音楽が聴こえるようでした。セットなど相当こだわられたのではないでしょうか。

「そう言っていただけて嬉しいです。セットもそうですが、今回ロケーションも必死に探しました。あの喫茶店は、実際にあるお店なんですよ。そこをカフェ『ポロネーズ』として美術で飾り、使わせて頂きました」

―――他にこだわったロケ地などお聞きできればと思います。

「旧校舎の音楽室は相当こだわりました。この場所が本作の軸になってくるので、世界観を崩さないようなロケーションを探しました。

あとは、湊人や雪乃の家、部屋のインテリアなどは割とレトロモダンに作り、作品全体の雰囲気としてあまりに現代的なものは排除するようにも意識しました」

―――デートシーンでは、公園や海などの自然を感じられる場所が多いと個人的に感じました。これにはなにか理由があったのでしょうか。

「作品全体を通して、オリジナルの持つノスタルジックな雰囲気を大切にしたかったので、デートの場所もあまり時代に影響されない公園や海を意識的に選びました。衣裳に関しても、レトロモダンを基調として、極端に古すぎず新しくなりすぎないように、ロケーションとマッチするようにこだわりました」

―――最後に、本作を心待ちにしている方に向けて、是非注目していただきたい場面があれば教えてください。

「先入観なしに観ていただけたらと思います。もちろん、『秘密は何なんだろう?』って観に来てくれる人も多いと思いますが、あくまでピュアなラブストーリーとして、楽しんでもらえるのが1番嬉しいです。全部知った上で、何度も観てもらうと細かい仕掛けに気付けたり、2人の気持ちに共感できたり、より一層味わい深い作品になるのではないかと思います」

(取材・文:タナカシカ)

【作品情報】
『言えない秘密』
2024年6月28日(金)より全国ロードショー
監督:河合勇人
出演:京本大我 古川琴音
横田真悠 三浦獠太 坂口涼太郎 / 皆川猿時 西田尚美 尾美としのり
脚本:松田沙也
音楽:富貴晴美
配給:ギャガ
Ⓒ2024「言えない秘密」製作委員会
公式X:@Ienai_H_movie
公式Instagram:@ienaihimitsu_movie

元記事で読む
の記事をもっとみる