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「淫乱女」「整形すれば?」毒親が原因で恋愛依存になった私が脱却し母親と和解するまで

  • 2024.6.28
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「お前さえいなければ離婚できるのに」

『毒親に愛されなくて恋愛依存になりました』(KADOKAWA)は、実の娘に対し、平気でそんな冷たい言葉をかけてくる、いわゆる「毒親」と称される母親のもとで育ったマンガ家の鳥野うずらさんの実体験をつづったマンガだ。

作品が掲載されているブログ「うずらいふ」には、本作のように母親と娘の関係を描いた作品や、妊娠出産を題材にしたコミックエッセイが掲載されており、多くの共感がよせられている。

実体験をつづっているとはいえ、作中では第3者の視点でみずからの人生をながめる形で描かれ、自分が生まれるところからはじまり、最後はいがみあった母親と「和解する」までの話であるとプロローグに書かれている。その間の数十年。母親からの愛に飢え、満たされることのない思いが、いびつな形をとって噴出し、恋愛依存へと走らせた様が赤裸々に描かれるのだ。

「淫乱女死ね」「本当にブスだよね~整形すれば?」など母親からむけられる言葉の数々は本当に家族なのか疑いたくなるほどの悪意に満ちている。父親は子どもにほとんど興味がなく、母親にとってはもはやストレスのはけ口。家庭で居場所がなくなり、学校でもいつのまにか無視されるようになり、どこにも安心できる場所がなくなって、自分を無条件で肯定してくれる「恋愛」に依存していく。

そんな状況を、物珍しい他人事だと思って楽しむこともできるかもしれない。しかし自分だってこんなどこにも安心できる場所のない状況に追い込まれれば、なにかに依存していた可能性は十分ありえる。そんなハラハラした思いがページをめくる手を止まらせてくれない。

一方で、本作で描かれているのは、そんなツライ状況を乗り切った成功体験談であることもまた確かだ。実際、物語の端々にはそんな小さな希望の欠片のようなものを見てとることができる。幼少期に母親の気をひくためにノートの端にマンガを描くようになり、それが今日につながる趣味であり生活の糧となっている。

マンガを描くことの楽しさを知り、趣味に没頭することで、よりどころのないツライ状況のなかで、必死に心のバランスをとってきた様を見てとれる。

そして溜めこんだストレスを「幸せになってやるのがあいつらへの復讐だ!」と、前向きな思いへ変換することによって、最終的には毒親との和解をはたす。誰もが同じようにしてツライ状況を乗り切れるとは思えない。しかし、そのためのひとつの方法と心構えを教えてくれる作品であることもまた確かなのだ。

「もしかしたら自分の親も毒親なのでは……」と思い当たる方はぜひ手にとってみてほしい。ツライ状況から抜け出すための光になることもあるだろう。

もちろん自分とはまったく関係がない、対岸の家庭の話として、ただ楽しんで読むこともできるだけのエンタメ性も持ちあわせている。それもマンガの楽しみかたのひとつだ。そして自分とはまったく縁がない話だったとしても、ひとつのケースとして知っておくことはどこかで必ず役にたつはずだ。

文=ネゴト/ たけのこ

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