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儒烏風亭らでんの落語がたり!②『子ほめ』/褒めて伸ばす!? 褒めて失敗する!?

  • 2024.6.28
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こんにちは!儒烏風亭らでんです。 第1回コラム「転失気」に続き、今回も筆を執らせていただきます。 私は配信者というお仕事をしています。簡単にこの配信者という職業を説明します。

私たちはYouTubeやその他動画配信サイトを使用し、リアルタイムで自分たちの活動を配信しています。活動は人によってさまざまで、ある人はゲームを実況したり、ある人は歌を歌ったり、またある人は喋りやジャグリングなどの特技を披露しています。日本では2007年にYouTubeの日本語版サービスがスタートしました。YouTubeが日本で広く知られるようになって約17年ですから、新しい職業だと言えると思っています。そんな配信者ですが、さまざまなコメントをいただくことがあります。中でも嬉しいコメントは、配信や活動のことを褒めてもらえる内容のものです。

さて、とある日の夜、ラジオ配信宛にお便りが届きました。お悩み相談のお便りでした。内容を簡潔に書き出すと、相談者さんは褒めることが苦手で、後輩とうまく打ち解けることができない、といった内容でした。これは難しい相談です。人を褒めることに慣れていない人は、褒めるときに使う語彙が少ないことと同義ですから、シンプルに語彙不足か、あるいは他人に興味が無いか、もしくは……といろいろ考えていました。

ふと「じゃあ自分だったら、どう褒められると嬉しいのか」と思いました。まずは「声が好き」です。これを言われるのはとても光栄です。次に「話が面白い」です。落語家の卵として、これほどまでに嬉しい言葉があるでしょうか。そしてやはり「活動内容がユニークですね!」というコメントは、自信につながります。それから「コメントがうまいですね!」、これも食レポ配信や美術鑑賞の配信で言われると、飛び上がってしまいます。こう考えて見ると、褒める要素が具体的であること、そして素直に感想を述べてくれること、この二つが重要なのではないかと思いました。

これらの例や結論は、ある程度使い回しができそうです。みなさんも好きな配信者さん、活動者さんがいたらぜひ使ってみてください。よく聞く褒め言葉、定型文のようになり「紋切り型」と呼ばれることもありますが、伝えずに胸にしまったままでいるよりはずっといいはずです。

さて、そんな「褒め」の落語は、酒が飲みたい八っつぁんが長屋のご隠居さんのもとにお邪魔するところからはじまります。

「こんにちは!タダの酒があるって聞いてきました」 「灘(なだ)の酒のこと?」 「え? タダじゃなくてナダ? なんでもいいから飲ませろ」

割ととんでもないやつです、八っつぁん。

ご隠居さん曰く「飲ませてほしかったら、世辞のひとつでも言いなさい」と。 そしてご隠居さんはお世辞、つまり「褒め」の方法、語彙を八っつぁんに教えます。

なんて心の広いご隠居さんでしょう。お世辞にもいろいろあります。 45歳くらいの方には「42歳くらいに見えます、お若く見えますな」と答える。50歳くらいの方には「45、6歳に見えます」と答える。 そしてお子さんが生まれたお宅には「たいそう福々しいお顔をしております。先だってお亡くなりになったおじいさんに似てご長命の相があります。栴檀(せんだん)は双葉より芳しく¹、蛇は寸にしてその気を表す²かと申します。どうかこういうお子さんにあやかりたい、あやかりたい」と答える。

配信者には配信者の褒め方があり、お子さんが生まれたお宅には、それ専用の褒め方があるというわけです。しかしみなさん、思いませんでしたか? 「褒め言葉長くないですか?」と。 赤ん坊の褒め言葉は昔から紋切り型で決まっており、それがとても長いのです。付焼き刃は剥げやすいものです。一回聞いただけで上手くいくでしょうか?

ご隠居さんに褒める方法と語彙を教えてもらった八っつぁん、じゃあ実際にやってみようと町へ飛び出します。伊勢谷の番頭さんに会い、さっそくやってみようと話しかけます。 「番頭さん、こんにちは!」 「よっ、どうした町内の色男!」

相手の方が上手です。やられました。

仕切り直して、赤ん坊が生まれたばかりの知り合いのお宅に行きます。 とてつもなく長いあの褒め言葉を披露し、あわよくば酒をもらおうという魂胆です。

さあ八っつぁんの「赤ん坊褒めよう大作戦」はうまくいくのか!? そして無事にお酒にありつけるのか!? ここからが面白い一席「子ほめ」でした。 ぜひみなさまも「子ほめ」を聞いてみてください。

1)幼少の頃から優れていることのたとえ 2)幼少の頃から素質があることのたとえ

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