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“恐怖漫画の大家”楳図かずお、漫画界に新たなジャンルを確立…時代が変化しても不変の恐怖の世界

  • 2024.6.28
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「マザー」が衛星劇場にて放送 (C)2014「マザー」製作委員会
「マザー」が衛星劇場にて放送 (C)2014「マザー」製作委員会

【写真】まだ幼い…!10代前半の成海璃子&中村有沙がW主演の「まだらの少女」

恐怖漫画の大家・楳図かずお原作のホラー映画「楳図かずお恐怖劇場」6作品と「猫目小僧」「マザー」が、7月にCS放送「衛星劇場」で放送される。楳図は1936年9月3日生まれ、2024年に88歳の米寿を迎える大御所。漫画家として活動開始してから約70年、これまで数多くの作品が人々を恐怖と感動に包み、映像化された作品も数多い。そこで今回は楳図のこれまでのキャリアを振り返りながら、このほどテレビ放送される映像作品について紹介する。

希代のホラーメーカーがデビュー69周年

楳図は、1955年6月に「ヘンゼルとグレーテル」を翻案して漫画化した「森の兄妹」、同年9月に石器時代を舞台にした古代ロマン長編「別世界」を描き下ろし、漫画家デビューを果たす。そこから貸本漫画を多く発表し、人気もどんどん上昇していく。1966年に『週刊少女フレンド』で連載していた「ねこ目の少女」「へび少女」がヒットして“恐怖漫画家”として広く知られるようになり、『週刊少年マガジン』や『週刊少年キング』など、少年漫画誌でもSF作品や「猫目小僧」のような恐怖漫画を連載。

1969年から1970年まで不思議な能力を持つ謎の美少女“おろち”が主人公の「おろち」を『週刊少年サンデー』に連載。それに続く形で『週刊少年サンデー』に、1970年から1972年にかけて65歳の沢田元太郎が若返りの薬“アゲイン”を飲んで若返る「アゲイン」、1972年から1974年にかけては文明崩壊後の未来の世界に校舎ごと送られてしまう小学生の児童たちの生き残りを描いた「漂流教室」、1976年から1981年にかけて幼稚園児の沢田まこと(まことちゃん)が主人公のギャグ漫画「まことちゃん」を連載。グワシ、サバラ、ギョエーなどのギャグや「まことちゃん語」は当時の流行語となった。

「まことちゃん」の後は、1982年から1986年までSF漫画「わたしは真悟」、1986年から1989年までは夢と現実がリンクする不思議な力を持つ小学生・山の辺想が主人公のホラー漫画「神の左手悪魔の右手」、1990年から1995年まで「漂流教室」の続編的な作品で、人類の破滅をテーマとした「14歳」を『ビッグコミックスピリッツ』にて連載した。

作品のアニメ化や実写映画化も多くされており、1980年公開のアニメーション映画「まことちゃん」には楳図も本人役で出演。1987年には「時をかける少女」「転校生」などを手掛けた大林宣彦監督が「漂流教室」を映画化。先日最終回を迎えたばかりのドラマ「アンチヒーロー」(TBS系)で優秀なパラリーガルの青山役を務めたバイプレイヤー・林泰文が主演を務めた。

「ねがい」より (C)楳図かずお/「楳図かずお恐怖劇場」製作委員会
「ねがい」より (C)楳図かずお/「楳図かずお恐怖劇場」製作委員会

「楳図かずお恐怖劇場」は活動開始50周年記念作品

今回衛星劇場で放送される「楳図かずお恐怖劇場」は、楳図の漫画家活動開始50周年を記念して2005年に公開された映画で、6つの作品で構成されている。猜疑心の強い夫と自分を“蟲(むし)だと思い込んだ妻の奇妙な愛の形を描いた7月2日(火)夜6:00他放送の「蟲たちの家」は、「CURE」「回路」などを手掛ける黒沢清が監督、西島秀俊と緒川たまきが夫婦を演じた。

7月2日(火)夜7:05他放送の「絶食」は、意中の彼をゲットしたいあまり、絶食によるダイエットを決意した女子高生がたどる悲劇を描いており、上野未来が主演を務めた。楳図をリスペクトする中川翔子も出演。「カラスの親指」などを手掛ける伊藤匡史監督のデビュー作でもある。

7月3日(水)夜6:00他に放送される「まだらの少女」は、人の憎しみが生み出す“蛇”の呪いの恐怖を描いた物語で、監督は「片腕マシンガール」「惡の華」の井口昇が務め、成海璃子と中村有沙がW主演を務めた。成海演じる京子の両親を嶋田久作と田中美奈子が演じている。

友達代わりだった木の人形が捨てた持ち主の少年に復讐(ふくしゅう)する「ねがい」は、7月3日(水)夜7:10他に放送。映画「ねらわれた学園 THE MESSIAH FROM THE FUTURE」の清水厚が監督で、主演を笠原織人が務める他、遠山景織子や尾美としのりらが出演している。7月4日(木)夜6:15他に放送の「プレゼント」はクリスマスを汚す若者たちにサンタクロースが襲いかかるという作品で、監督は山口雄大。主演は、「妖怪大戦争」のヒロインを演じた岩井堂聖子(当時の芸名・高橋真唯)が務めている。他に、「仮面ライダー龍騎」の須賀貴匡も出演。

「まだらの少女」より (C)楳図かずお/「楳図かずお恐怖劇場」製作委員会
「まだらの少女」より (C)楳図かずお/「楳図かずお恐怖劇場」製作委員会

7月4日(木)夜7:20他に放送の「DEATH MAKE」は、心霊スポットで一夜を明かすことになった男女5人を襲う恐怖が描かれている作品で、モデル・アリスの初主演作。今も多くの作品に出演している名バイプレイヤー・田口トモロヲ、“和製ホラークイーン”と呼ばれた三輪ひとみの好演も印象的。なお、「楳図かずお恐怖劇場」の6作品はいずれもテレビ初放送となるレピック版(アシスト社が開発したオリジナルのアップコンバート技術によってSD映像をHD映像に高画質化したもの)となっている。

その他、井口昇監督による「猫目小僧」(2006年)が7月5日(金)夜6:15他に放送される。孤独と悲しみを背負う妖怪“猫目小僧”が、愛する人間の美少女を守るために最強の敵に立ち向かうストーリーで、石田未来が主演。田口浩正、つぶやきシロー、津田寛治、竹中直人といった現在も活躍する個性的なキャストが出演している。

そして2014年に公開された楳図の初監督作「マザー」は、7月6日(土)昼5:45他に放送。脚本も自ら手掛け、楳図が描く“恐怖漫画”の世界観をしっかりと描写している。77歳にして監督デビューした楳図の作品創造の秘密を解き明かす自叙伝的なストーリーが展開し、主演を務める片岡愛之助は楳図のトレードマークとも言える赤と白のボーダーシャツを着用。舞羽美海、真行寺君枝、そして中川翔子も登場する。

時代が変わっても、その独特の恐怖感は変わらない。楳図が生みだした恐怖の世界をたっぷりと楽しんでもらいたい。

◆文=田中隆信

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