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性的同意、セクシュアリティの多様性…どうやって子どもに伝える? 現代に必要な性教育を名門男子校から学ぶ

  • 2024.6.28
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ダ・ヴィンチWeb
『男子校の性教育2.0』(おおたとしまさ/中央公論新社)

子どもが大きくなってくると気になるのが性教育。特に我が家の場合男の子ふたりなので、母親からどの程度まで教えるべきか悩みます。そもそも性の多様化についてなど私自身勉強不足な点も多く、最近の学校ではどんな性教育が行われているんだろう?と気になって手にとったのが『男子校の性教育2.0』(おおたとしまさ/中央公論新社)です。本書は著者が全国の男子校に独自のアンケートを実施。その結果と現場取材をもとに男子校の性教育の最前線をまとめています。男子のみが集まる集団で数年を過ごすとジェンダー観に偏りが生まれてしまうのでは……とも思われがちですが、本書を読むとむしろ男子校だからこそ、私立だからこその先駆的な取り組みが多く、私自身勉強になることばかりでした。

タイトルには“性教育”とありますが、本書で紹介するのは「包括的性教育」。保健体育的な性教育のほかに、ジェンダー教育も含みます。そこでまず紹介されるのは兵庫・灘で行われたトランスジェンダーの女性・土肥いつきさんによる選択講座。セクシュアリティを定義する4要素など知識の話から現在の学校制度が持つ問題点への言及まで、かなり濃い内容が本書を読んだだけで伝わってきました。私のようにセクシュアリティに詳しくない人はこの部分を読むだけでも知識をアップデートできると思います。

そのほかにも教員・講師による多様な取り組みが紹介されているのですが、全体を通して感じたのは、正解・正論を伝えるのが性教育ではないということです。

例えばジェンダー教育について東京・世田谷学園ではミスコンや#MeTooなど社会で起きている事例を解説し議論。女性車両について「逆差別だ」という意見が出た時も否定し正論を伝えるのではなく、理由を聞いて論理が破綻していないか、前提を間違えていないか話し合います。議論をすることで深い学びに繋がっていく様子は家庭でも応用できるなと感じました。

また東京・駒場東邦で授業を行った泌尿器科医・岩室紳也さんは「『セックスするならコンドーム』と言われた人がコンドームをつけずにエイズに感染した時、自分の外来を受診しに来られるか?と考え、この言葉を使うのをやめた」と語ります。近年取りざたされるようになった性的同意についても「相手の許可なしに体に触れてはならない」と伝えるだけなら簡単だけど、まだ交際経験も不十分な生徒たちにそれだけを伝えるのが正しい方法なのか? 識者や教員たちの間でもまだ試行錯誤の段階であることが取り上げられていました。

生徒が納得できる、良い方向に自分と相手の性を捉えられるようになるにはどうしたらいいか?を真剣に考えている講師・教師たち。彼らがいるからこそ、本書で紹介されている学校では充実した性教育が行われているのだと感じました。

私自身も性教育に限らずつい子ども相手に正論を振りかざしてしまいがち。でもそれでは子どもが知識を体得できたことにはならないし、反発を生むこともしばしば。自分の頭で考え、納得した結論を手に入れる手助けをすることが教育において大切なのだと本書を読んで改めて学ぶことができました。

文=原智香

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