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【都知事選】実は「有権者」も処罰の対象に!?有権者が注意すべき「法律違反」となる行為9選

  • 2024.6.28
破られたNHK党の選挙ポスター(東京都新宿区)※2024年6月、時事通信フォト
破られたNHK党の選挙ポスター(東京都新宿区)※2024年6月、時事通信フォト

6月20日に告示され、7月7日に投開票を控える東京都知事選。“掲示板ジャック”や“ほぼ全裸ポスター”など、選挙ポスターに関する騒ぎが相次いでおり、連日報道されています。候補者側が「やってはいけない」選挙活動に関する行為はしばしば話題になりますが、中には「有権者」が行うと法律違反に該当する、選挙関連の行為も存在します。

そこで、有権者が行うと法律違反に該当する可能性のある「選挙」にまつわる行為について、佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

「選挙ポスターに落書き」で懲役の可能性も

Q.「有権者」側が行うと法律違反になる恐れのある「選挙」に関する行為には、どのようなものがありますか。

佐藤さん「選挙犯罪(公職選挙法によって刑罰の対象とされている行為)をすれば、いずれも逮捕される可能性が生じます。また、選挙犯罪で刑罰(一定の場合を除く)を科せられた者は、一定の期間、選挙権・被選挙権が停止され、停止期間中は投票することも立候補することもできなくなります(公職選挙法252条)。

有権者が行うと法律違反になる恐れのある主な行為として、次の9個を挙げます」

【有権者から候補者へ、飲食物を提供する】

選挙の公正を確保するため、選挙運動に関して、飲食物(お茶や通常用いられる程度の茶菓子を除く)を提供することは、全ての人について禁止されています(公職選挙法139条)

そのため、候補者側が有権者に対して飲食物を提供することはもちろん、有権者が候補者を激励するために飲食物を提供することも禁じられています。違反すれば、「2年以下の禁錮または50万円以下の罰金」に処される可能性があります(公職選挙法243条1項1号)。

なお、「選挙運動」とは「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得または得させるために直接または間接に必要かつ有利な行為」とされています。

【有権者が近所へ物品を配り、特定の候補者についてアピールする】

特定の候補者を当選させよう、または当選させないようにしようという目的で、選挙権を有する人(選挙人)に対し、金銭や物品などを与えることは禁じられています(公職選挙法221条1項1号)。

有権者が特定の候補者を当選させたいと思い、近所に住む選挙人へ物品を配れば、この規定に触れ、「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」に処される可能性があります。

なお、公職選挙法は、金銭や物品を受け取るなど買収された側にも「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」を科すと定めており、違反になります。

【有権者が、特定の候補者を応援するために、自作のビラやポスターを作って配る】

公職選挙法では、選挙時に選挙運動に関して使用できる文書図画(ビラ、ポスター、看板など)が限定されており、それ以外のものは使用できません(公職選挙法142条、143条、146条)。そのため、有権者が作成し、配布したビラやポスターがルールに反していた場合、「2年以下の禁錮または50万円以下の罰金」に処される可能性があります(公職選挙法243条1項)。

また、平常時において、表面上、選挙運動のための文書の形式ではないものであっても、行為者の意思、頒布の時期、数量、地域などを総合的にみて、実質的に「特定候補者の当選を意図する文書図画」と判断されれば、選挙運動であるとされ、事前運動の禁止に抵触する場合があります(公職選挙法129条)。事前運動の禁止に違反した場合、「1年以下の禁錮または30万円以下の罰金」に処される可能性があります(公職選挙法239条1項)。

【有権者が、選挙ポスターに落書きをする】

公職選挙法は、選挙に関し、選挙ポスターなどの文書図画を毀棄(きき)し、選挙の自由を妨害することを禁じています(公職選挙法225条2号)。選挙ポスターへの落書きは「毀棄」と評価される可能性があり、「4年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金」に処される可能性があります。

【有権者が、選挙ポスターを無断で剥がす】

掲示場に貼られている選挙ポスターを剥がす行為は、落書きのケースと同様、文書図画を毀棄し、選挙の自由を妨害する行為と評価される可能性があり、「4年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金」に処される可能性があります(公職選挙法225条2号)。

街頭演説中の「ヤジ」にも注意

【有権者が、街頭演説で候補者に対して悪口を言う】

表現の自由があるため、街頭演説中の候補者に対してヤジを飛ばしたり、批判的な意見を言ったりしたとしても、通常、罪に問われることはありません。

ただし、公職選挙法は、選挙に関し、演説を妨害し、選挙の自由を妨害することも禁じています(公職選挙法225条2号)。そのため、選挙期間中の選挙演説や応援演説を妨害しようと、拡声器などを用い、候補者の演説が聞こえなくなるほどの音で悪口を言い続けるなどすれば、演説の妨害と評価され、「4年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金」に処される可能性があります。

また、多くの人が集まる街頭演説中になされたヤジや悪口の中に、候補者の社会的評価を下げるような虚偽の事実が含まれていた場合、名誉毀損(きそん)罪に問われる可能性もあります(刑法230条、230条の2)。名誉毀損罪の法定刑は「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」です。事実を示さなくても、公然と人を侮辱したと評価されると、侮辱罪に問われることも考えられます(刑法231条)。

【有権者が、特定の候補者へ投票するように促す】

有権者も、選挙運動のできる期間(公示・告示日から投票日の前日まで)に、決められた方法によって、特定の候補者へ投票するよう促すなど、選挙運動をすることができます。

ただし、選挙運動の方法については、さまざまなルールがあります。例えば、有権者が電子メールで選挙運動を行うことは禁じられており、違反すれば「2年以下の禁錮または50万円以下の罰金」に処される可能性があります(公職選挙法142条の4、142条、243条)。

また、誰であっても、特定の候補者に投票してもらうことを目的に、住居や会社などを戸別に訪問することは禁じられています(公職選挙法138条)。これに違反し、戸別訪問して特定候補者へ投票するように促せば、「1年以下の禁固または30万円以下の罰金」に処される可能性があります(公職選挙法239条)。

【有権者が、特定の候補者が落選するように、ネット上にネガティブな情報を書き込む】

表現の自由があるため、特定の候補者を批判するようなネガティブな情報をネット上に書き込むことも許されます。

しかし、当選を得させない目的をもって候補者に関し虚偽の事項を公にしたり、事実をゆがめて公にしたりすることは禁じられており、違反すると「4年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金」に処される可能性があります(公職選挙法235条2項)。

また、候補者の社会的評価を下げるような虚偽の事実が含まれていた場合、名誉毀損罪に問われる可能性もあります(刑法230条、230条の2)。事実を示さなくても、公然と人を侮辱したと評価されると、侮辱罪に問われることも考えられます(刑法231条)。

【有権者が、特定の候補者に投票するように署名を集める】

選挙に関して、特定の人に投票するように、または投票しないようにすることを目的として、有権者に対して署名を集めることは禁じられています(公職選挙法138条の2)。これに違反すると「1年以下の禁錮または30万円以下の罰金」に処される可能性があります(公職選挙法239条)。

Q.選挙に関する行為によって、有権者が実際に逮捕された事例はあるのでしょうか。

佐藤さん「今回の東京都知事選でも、候補者の選挙ポスターを剥がしたり、落書きしたりしたとして、公職選挙法違反の容疑で逮捕者が出ています。一人は、都知事選の候補者のポスター4枚を破るなどした疑い、もう一人は、掲示板に貼られた候補者のポスター2枚にペンで落書きした疑いがもたれています」

オトナンサー編集部

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