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「誰でもできる仕事だから」は絶対ダメ…敏腕上司が部下に"丸投げ"するときの絶妙な切り出しフレーズ

  • 2024.6.27

部下や後輩ができたが、経験不足の相手にどうすれば仕事を任せられるのかわからない。そんな経験はないだろうか。マーケティング大手で統括の立場にある山本渉さんは「私自身もかつては任せることができず、仕事を抱え込んでいた。『丸投げ』というと無責任なイメージがあるが、正しい丸投げができるようになると会社全体の幸せにつながる」という――。

※本稿は、山本渉『任せるコツ 自分も相手もラクになる正しい“丸投げ”』(すばる舎)の一部を再編集したものです。

部下を励ますビジネスマン
※写真はイメージです
部下に仕事を任せる、さらに「丸投げ」することの難しさ

「任せる」というのは、なぜこんなにも難しいのでしょうか?

簡単なことのように見えて、「任せられない」と悩む人が、私の周りでも多く見受けられます。それはビジネスの場でも、家事などの日常シーンでも同じです。私自身もかつて任せることができず、仕事を抱え込んでいました。

私は現在、大手マーケティング会社のジェネラルマネージャー兼、部長を束ねる統括ディレクターとして、年間100近いプロジェクトのアサイン(仕事を割り振り、適した人材に依頼すること)を担当しています。

規模の大小を問わず、これまでさまざまな仕事を依頼(丸投げ)してきました。そこには成功もあり、その何倍もの失敗もあり、どちらからも学びがありました。

日々マネジメント業務をしていて実感するのは、「間違った丸投げ」が横行しているということと、相手のことを考えた「正しい丸投げ」は個の成長を促し、組織全体の幸せにつながるということです。

この二つの違いを知れば、乱暴に仕事を振って自分だけ楽になろう、などと考える人はいないと確信しています。

「正しい丸投げ」をマスターしてほしい人

・人に頼みごとをするのが苦手
・チームワークがうまくできない
・部下が思うように動かない
・自分でやったほうが早いので任せられない
・新人の教育係を任されて不安
・ついつい自分で仕事を抱え込んでしまう
・自分と同じように動ける人がほしい
・効率が悪いとよく言われる
・労働時間が長くてプライベートな時間が持てない

誰かにお願いごとをする機会は身近にたくさんあり、人生で避けて通れないものです。それならいっそ、得意になってしまったほうが楽ではないでしょうか。さらに、依頼した人が喜んでくれたら、言うことはありません。

「間違った丸投げ」の典型的なパターンとは……

「このデータから必要な要素だけ抜粋して、週明けの朝までに資料つくっといて。○○さんが嫌だっていうからさ、君やってよ。誰にでもできる内容だから、ちゃちゃっとお願いね」

こんな依頼をされて快く受けられる人は、相当な人徳者か、ブラックな環境に慣れすぎて感情を失っているかのどちらかでしょう。

この“丸投げ”には、ダメな要素のすべてが詰まっています。

この記事では、どのように依頼すると相手は気持ちよく引き受けてくれるか、高いパフォーマンスを発揮してくれるかという“どう頼むか”に関して、解説していきます。

「学生キャバクラ理論」で伝え方の順番を意識する

突然ですが、「学生キャバクラ理論」をご存知でしょうか?

「キャバクラで働く人が昼に大学で勉強している」と聞くと、「それは偉い」と感心する人が多く、「大学生が夜にキャバクラで働いている」と聞くと、「それはけしからん!」と叱る人が多い。

つまり、同じことを伝えるにしても、情報の順番で大きく左右するという話です。何かを依頼するときも、伝える情報の順番で印象は変わります。

「切り出し方が9割」といっても過言ではないくらい、出だしが重要です。

冒頭に挙げた依頼例も、こういう切り出し方をしてみるとどうでしょう?

「先週の資料ありがとう。役員会議で提出したらわかりやすいって評判で、またお願いできるかな? プロジェクトが承認されるかが懸かってる重要な書類で、この完成度でできるのが△△さんしかいないんだよ」

会議をしている男性と女性のビジネスマン
※写真はイメージです

印象が大きく変わりませんか?

まずは受け入れやすい情報からスタートして、心を開いてもらうことが大切です。冒頭の依頼例と比較して、新しく入った重要な要素は、「意欲創出」と「目的の明確化」です。

声かけで依頼する相手の意欲を引き出せるかどうかが鍵

まずは、「意欲創出」。

「仕事を受ける側はすべての仕事を面倒と思っている」という前提からスタートしましよう。

「やってみよう」と思ってもらう意欲を、依頼する側がつくりだす必要があります。

そのためには、「感謝される」「褒められる」「自分しかできない特別感」の3つがポイントです。

先ほどの依頼例の中では、「ありがとう」「評判で」「△△さんしかできない」がそれらにあたります。

ここで、とある中堅の社員エピソードを一つご紹介します。

彼女は議事録を積極的に引き受けてくれていました。

議事録とは、会議中に話された要点をまとめて、取引先と合意内容を確認したり、参加できなかったチームメンバーにシェアするためのメモです。

面倒くさいし、会議中にメモすることに労力を取られるので、みんなやりたがらず、一番若手が担当させられることが多いものです。

ある日、「なんで自ら手を挙げるのか」と質問すると、彼女は「『議事録をとてもよく整理できている』と取引先から以前に褒められたことで、自分でも得意と感じている。また、後輩からも感謝されるから」と理由を説明してくれました。

まさに、褒められ、感謝され、自分しかできない、の3つのポイントが彼女の動機となっていました。

タスクの目的をはっきりさせれば、モチベーションも上がる

もう一つの重要な要素は「目的の明確化」です。

その依頼内容が何のためのものかを、はっきりさせることが大切です。

このトピックには、「3人のレンガ職人」の寓話がよく使われます。“レンガを積む作業をしている労働者が何をしているかを尋ねられて、それぞれ「レンガを積んでいる」「壁をつくるために積んでいる」「教会を建てるために積んでいる」と答えた”というものです。

目的を理解することによって、モチベーションも仕事に対する意識も変わってくることを訓示しています。

目的がはっきりすると、その依頼の全体像が見えて、ただの「作業」に意義と価値が足されて、「仕事」になります。

そのことで、そのタスクが自分ごと化されて、参加意識が芽生えます。

地味なこと、面倒なこと、簡単に見えることこそ、その目的を明確にして、どう役立つのかを伝えることが大切です。

目的を説明するときの言い換え例

「ただデータを抜粋する」
→承認を得るための重要な書類作成、プロジェクトを成功させる

「部員の送別会の店を予約」
→良い店で会を盛り上げる、部全体の一体感が増す

このように、すべての作業はその先の大きな意図や意義があります。

どこまで伝えると意欲が湧くかを判断して、適切な依頼をしていきましょう。

この項目でお伝えしたことは、モチベーション向上に最大限寄与するポイントです。「やる気の出し方」というのは、相手の状況や能力によっても変わり、シンプルなものではありません。

ビジネス街を背景にガッツポーズをするビジネスマン
※写真はイメージです
ビジネスの場ではつい自分本位の頼み方をしてしまうが……

「そこの醤油取ってください」といった日常のことから、「私と付き合ってください」というような大きな依頼までをすべてカウントすると、人は1日に約20〜30回のお願いをする、と言われています。

仕事でもプライベートでも、頼むからには相手に「イエス」と言ってほしいものです。

「ノー」と言われてしまう頼み方を一言で表すと、頼む側の一方的な都合でしかないものです。

デートの誘い文句で例えるとわかりやすいです。

「今週末ドライブ行かない? 俺、暇なんだけどさ、君が助手席にいると見栄えがいいんだよね」

この誘い方は「依頼者都合」だけの誘い方です。同じドライブに誘うにしても、相手の欲求に沿った「受け手都合」にすると、印象はかなり変わります。

「前に好きだって言ってたカフェがリニューアルしたから、ドライブがてら行かない?」

どちらがいい返事がもらえそうかは明らかです。

前者のような自分本位な誘い方をする人はあまりいないと思いますが、ビジネスの場ではこれに近しいことをよく見かけます。

無理めな仕事でも、相手にメリットがあるように言い換える

「締め切りが明日までで、間に合わないから手伝って」
「部として重要な案件だから、休み返上で取り組もう」

このような場合でも、「この仕事をやってほしい」というこちらの都合を、「その仕事をやりたい」という相手の欲求に沿った文言に変換する必要があります。

「規模の小さい案件なんだけど、自分がリーダーになって進められる仕事がしたいって言ってたから、お願いできるかな?」

「○○さんは若手でもトップクラスの営業成績だから、次のステージに行くために、新人のトレーナー役を引き受けてくれないかな?」

「ここで結果を残せば、来年は人員を増やせて負担も減るから、今回は部のみんなで残業して取り組もう」

このように言い換えれば、多少なりとも相手の欲求を加味した依頼になります。

ビジネス以外でも同じです。

「いつもたくさん意見をいただくので、実現させていくために、マンションの管理組合の幹事を一緒にやっていただけませんか?」

このように相手の意向に沿った文脈に変換し、メリットを提示することが必要です。「欲求充足」という考え方です。

「君のためになる」という頼み方は逆効果になる場合も

ただ、やりすぎには注意が必要です。

山本渉『任せるコツ 自分も相手もラクになる正しい“丸投げ”』(すばる舎)
山本渉『任せるコツ 自分も相手もラクになる正しい“丸投げ”』(すばる舎)

すでにモチベーションが高く、「このプロジェクトをチームのためにがんばろう」と思っている人に、例えば「ボーナスを上げるよ」といった外発的要因を与えると、やる気が低下してしまいます。

心理学で「アンダーマイニング効果」と呼ばれるものです。

子どもの頃に、「いい学校に入学したいから勉強しよう(内発的要因)」とやる気になっているのに、親から「勉強しないとお小遣いあげないよ(外発的要因)」と言われて、やる気を失った経験はなかったでしょうか。

「君のためになると思うんだ」「出世にいい影響があるよ」などの恩着せがましい発言も、メリットに見えてやる気を失う原因となる可能性があるので気をつけましょう。

山本 渉(やまもと・わたる)
マーケティング会社統括ディレクター
引きこもりを経験し、高校を中退後アメリカに留学。大学でマーケティングとエンターテインメントを学び卒業。帰国後、国内最大手のマーケティング会社に入社。現在はジェネラルマネージャー。部長を束ねる統括ディレクターも兼ね、年間100近いプロジェクトをメンバーに依頼している。著書『任せるコツ 自分も相手もラクになる正しい“丸投げ”』(すばる舎)はベストセラーに

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