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怖がりな私は、不機嫌な父と「良い親子」になりたかった

  • 2024.6.27
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私は、正直言って父が嫌いだ。
嫌い、というより許せないというか…。
父は機嫌が悪いと、物に当たったり、大きな低い声で唸ったり叫んだりする。
壁に穴があいたこともあった。

◎ ◎

それでも機嫌が良い時は一緒に遊んでくれるので、小さい頃はそこまで嫌っていなかった。
私が思春期に入る頃になると、父の単身赴任が決まり、一年に一度会うかどうかくらいになった。それから私が大学のために家を出たので、あまり会っていない。

けれど、半年前から彼氏と同棲を始めてみて、私が男の人への恐怖心を持っていることに気がついた。機嫌が悪い男の人と同じ部屋にいる。それだけで恐怖を感じるのだ。彼は物に当たったりなんてしない。わかっている。それでもたまに私の手が震えていることもある。きっと本当は私は、小さい頃から「不機嫌な男の人」が怖かったのだ。

「今は怒りの矛先が物に向いているけれど、いつか自分たちに向くのでは」「殺されるかも」「力では絶対勝てない…」「お母さんが殺されたらどうしよう」父以外に男手はなく、母と私たち三姉妹では力で勝てるはずもない。

私は怖くて不安で、父の機嫌が悪い時、ずっと空気になろうとしていたのだった。最近ではもう物に当たらなくなったけれど、不機嫌な表情や口調が未だに怖い。

◎ ◎

私は大人になった今でも小さい頃のまま。怖くて不安で身体を硬くしたままだ。
それなのに、先日あった姉の結婚式で、姉は父と腕を組んでバージンロードを歩いた。父は泣き、姉は「大好きだ」と伝えた。どうして。どうして泣くの。どうして大好きだなんて言うの。姉が一番怖がっていたでしょう。一番顔も合わせなかったよね。

…まあ姉のことはいいの。でも父に、「君の結婚式も一緒に歩こうね」と言われた。歩きたくない。その腕は家の物を壊していた怖い腕だから。その足は歩くのがはやくて、テーマパークで私たちを置いて行った足だよね。今さら歩みを揃えられる?

普通の親子だったら、そんなこと思わずに、
「一緒に歩こうね」といつか来る晴れの日を楽しみにできたのだろうか。

友人が父親とお酒を飲みに行ったという話を聞いて、驚いてしまった。「え?!お父さんと飲み?!」って。いいなぁというよりももっともっと、父と一緒にお酒を飲むような関係性があるんだって驚きが大きくて。それとももし私の父がお酒を飲めたら、そんなことがあったのだろうか。いや、父は外食も苦手なんだから、きっとないな…。
慣れない場所が苦手な父は、外食も苦手で、家族で行っても不機嫌になっていた記憶ばかりだ。最後にみんなで楽しく食事をしたのはいつだっけ。

◎ ◎

お父さん、私は「父親」としてあなたを見ることは多分できません。「怒りのコントロールができない仕方ない人」「大きな弟」と見ることで、小さい頃の私も今の私も「仕方ないな」って許せるのです。

「仕方ないことだった」って。それでもやっぱり怖いままだけど。
でも本当は、「ありがとう」や「大好き」を伝えられるような親子になりたかったの。
お父さん、あなたは私のこと、どう思っていますか?

■月詠桔梗のプロフィール
物語と絵が好きです。 小さな物語を考えながら、絵を描いています。 Instagram: https://www.instagram.com/tsukuyomi.2001

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