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紗栄子「点と点だった活動が線になり、いい循環が生まれている」【独占インタビュー】

  • 2024.7.14

誰もがそうであるように、紗栄子も日々の小さな選択を積み重ねて、その地続きに「今」がある。もはや肩書なんてあってないようなもの、“紗栄子”という生き方、その現在地に触れる。

点と点だった活動が線になり、今、いい循環が生まれている

紗栄子の今考えていること
トップス ¥128,000(Simone Rocha/リステア)、ピアス ¥24,200(Soierie)

紗栄子がその手に抱え、心を寄せるものは、私たちの想像が及ばないほどたくさんあった。あえてシンプルにいうならば、芸能活動、会社経営、社会支援の3つが大きな軸。

「厳密にいうと、支援活動はもう10年以上前から携わってきたことだから、仕事というよりライフワークに近い感覚かもしれない。

現時点でいうと、運営している『NASU FARM VILLAGE』という牧場での売上は、保護馬や保護犬の支援につながったり、支援団体『Think The DAY』で販売している防災グッズの利益の全額が支援に使われている。

それこそ10年前は、お金を稼ぐ場と支援する場が別々だったけれど、今は経済活動をしているその先にナチュラルに支援活動ができる仕組みが生まれていて、点と点だったものが線になって、やっと循環するようになってきたんです。

もちろん多くのことに携わるとなると、時間やエネルギーの配分は臨機応変にせざるを得ないし、状況によってすごく変化が大きくて、今は今年1月1日に起きた能登半島地震への支援のために自分の持てる100%のリソースを向けているところ。

ほぼ24時間対応で私のDMにきた現地からの要望に対して応えて、そのためのやり取りを続けているけれど、ただ私はその間も芸能人であり、経営者でもあるので通常業務をやりながら並行で携わっていくかたちにはなります。

ありがたいのは私ひとりで会社をやっているわけではなく、スタッフのみんながいてくれること。先頭を切って進めていくのは私だけど、安心して突き進めるのは、スタッフのみんなが現場を守ってくれる信頼があってこそだから。

私は道なき道を突き進んでいかなきゃいけないし、瞬間、瞬間での判断が求められるという点でも経験値のある私がその場に立つのが自分にできることなのかなとも思っていて。

私たちは命を預かる仕事をしているので、どうしてもその場を離れられない人もいる。被災地にいなくても、後方支援として物資の運搬に携わってもらったり、そうやって適材適所でチームとして動いていくのが今の最適解なんだと思う」

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「大変な状況下でも屈託のない笑顔を見せてくれる被災地域の方たちに、毎回私も励まされています」

現在、芸能人としての活動については、年に2回ほどプロモーション期間を設けて、集中的に取り組むのがここ数年のペース。とはいえ日々の売上やキャッシュフロー、契約ごとなど考えなければいけないことは山のようにあって、目の前のことに100%を注ぎ切るのは難しい。燃え尽きたいと願ったとしても。

「時期によって、日々によって、ボリュームを調整していく感じかな?有事の際は支援活動に振り切って、平常時は経営者としてやるべきことをやって、今回のように芸能に集中する時期があって、子どもたちが長い休みで帰ってくるときは母親になる。

70%くらいのエネルギーを仕事で使い分けつつ、残りの30%で日々のことをやりくりしていく感じ。これは母親になって鍛えられたことなんですよね。

マルチタスクになるし、自分が最優先にはなれないし、何か流動的なことが起きたときに対応していかなければいけない。完全燃焼できる日もたまにはあるけれど、なかなか達成感は得られなくて、モヤモヤとしたグレーの中でいかに自分のご機嫌を取りながら進んでいくかを母親になったことですごく学ばせてもらったんですよね。

私は完璧でありたい主義だから、達成できないことが許せなかったんですよ。自分に対して。でも、そんなことはできないし、子どもが熱を出したらスケジュールも変わるし、みんなに頭を下げながらちょっと早く帰る。常に申し訳ない気持ちを抱えていましたね。

スタッフには、早く帰ってごめんなさい、子どもたちには、早く帰れなくてごめんなさい……うまくいくことがなかったなぁ。子どもって、熱が出ても元気だから、家の中はすぐに散らかるし(笑)。何事もキレイに終わる一日なんてほぼないんですよね。

自分にけっこう厳しいんで、自分に課したことは超えていかないと納得できないし、同じように周りの人に対しても期待しちゃっていたと思うんです。でも、人にはそれぞれのペースがあって、得意不得意もあるし、自分ができることでも人ができるとは限らない。もちろん、その逆もあるしっていうね。

いいこともそうじゃないことも含めて自分の経験で、その経験値から想定ができるようになると、テンパることもないし、いい意味で人に期待もしなくなった。昔と比べて大きく変わった部分だし、年を重ねて楽になった部分でもあります。

わりと直感型ではあるんだけど、直感にコツコツと身につけてきた経験則が加わって、物事の判断力も精度が高まっていると思います」

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「野菜やお肉が入った栄養価の高いちゃんぽん麵をご提供しました。沢山の方が並んでくれて嬉しかった!」

多かれ少なかれ選択や決断を求められる中、紗栄子の意思決定のスピードはとてつもなく速い。その理由は明確で、命を預かっていることに他ならないから。

「最優先にすべきものは命しかない。常に明確でブレることもなくて、そのためなら今手にしているものを放棄したり、手放すこともためらわない。例えば芸能のお仕事で広告契約となったときに、馬が倒れたらファームに飛んでいくからそれを了承してくれるクライアントさんとしか契約できないし、それで断られるのであれば仕方ないと執着もしないし、納得できる。

でも、一緒に働くスタッフからすると納得しづらいと思うし、もしかすると私が気分で判断しているように映るかもしれない。でも私の中では命が最優先にあるゆえの行動なんですよね。

最近思うのは、何か有事で私が抜けることがあってもいいように状況を整えたり、私が何を最優先にしているか、私がどんな人間なのかを周りにちゃんと伝えていくことに、より時間をかけていかなきゃということ。

爆速で私が道を突き進んでいくので、私の隣や後ろでその道を整えてくれるみんなは本当に大変だと思うから、大きな感謝と愛情を持ちながら」

困っている人がいるなら助けたい特別ではない当たり前の感情

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「お食事を手渡しさせていただきながら、被災者の皆様と積極的に交流するようにしています」

今でこそ活動の軸ともいえる被災地での支援活動やファームの運営も、どちらも始まりは「無知で分からないことだらけだった」と振り返る。支援の第一歩は募金からだった。

「支援活動は、最初は大きな団体に個人的に寄付をするところから始めました。ただ、『寄付したお金は実際にどうやって使われているんだろう?』とちょっとモヤモヤした気持ちを抱えていて。

東日本大震災のときは、子どもたちも小さかったので現地に赴くことが難しくて寄付や募金で支援して、小学校に入るとグッと動きやすくなって、支援団体に参加して現地でボランティアをするようになりました。

確実に正しく募金が使われていることをSNSで発信すれば、私のようにモヤモヤを抱えていた人たちもクリアになるし、素晴らしい活動をしている支援団体の存在を紹介することで、支援の輪がまた大きくなっていく実感もありました。改めて”芸能人”という求心力を正しく使っていきたいと思ったんですよね。

転機になったのは、大きな台風が立て続けに上陸した2019年。千葉県が大きな被害に遭ったときに、私はちょうど九州の水害ボランティアから帰ってきたタイミングで。飛行機を降りて、インスタを見たら、すごい数のDMが届いていたんです。

『千葉がとんでもない状況になっています』と。でも、東京は普段と変わりがないし、テレビを見ても千葉の被害は報道されていなかった。状況が分からないけれど、お水は絶対に必要だろうから持っていこうと、その日の夜のうちに物資を集めて翌日現地入りをしました。

『市原ぞうの国』では、停電で水も食べ物もなくて、SNSで物資のご協力を皆さんにお願いしたり、築地でお野菜を買わせてもらったり、初めて自分で行政の方と直接やり取りをしました」

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「私の大好きなミスタードーナツをお届け!子どもだけでなく大人の皆さんも目を輝かせてくれて嬉しかった」

支援活動に関しては「言わずにやる」から「表立ってやる」ヘシフト。被災地支援活動などを行うために一般社団法人『Think Tne DAY』を設立した。

「偽善だとか、売名だとか、公表しないほうが美しいと叩かれた過去もあったけれど、それで被災地の現状を知ってくれる人、それで何かしたいと思う人がいるなら、別に叩かれるくらいいいやって思えたんですよね。

もちろん傷つかなかったといえば嘘になるけれど、自分の歩みを止める理由にはならなかった。助かる人がひとりでも増えて、寄付先が分かって寄付が増えるなら、現地の方々は助かるわけなので。

私がその後、ボランティアで現地に行くと、皆さんは『ありがとうございます』と喜んでくださるんですよ。それが全てだよねって。

千葉のときは、5トントラック15台分の物資が集まりました。でも、現地に届けるのも大変だし、物資が過剰になるのもよくないし、必要な物を必要なところに届ける難しさを痛感することに。

行政としては、個人からは受け入れないケースが多いので、法人として支援団体を設立したほうが、より動きやすくなるという理由で『Think The DAY』が生まれました」

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「被害を受けた地域の食材を使ったメニューを、私が運営するファームでイベントの期間に提供しました」

興味深いのは、何かをしたいからやっているわけではなくて、いつだって必要とされ、求められるから、紗栄子は動く。

「支援活動をしていると、被災地の皆さんに『自分たちの現状を伝えてほしい』と言われるんです。時間が経つと報道も少なくなって、みんなに忘れられていく。報道にも格差があって、報道される場所とそうじゃない場所が生まれるので、私たちみたいなボランティアはマスコミでは拾いきれない部分をお伝えして、現地の方々の力になれればという思いがあります。

寄付をしてくださる方って、皆さん『微力ですが』と申し訳なさそうにされるんですが、微力は無力ではないし、集まれば着実に大きくなっていくので、申し訳なさは何ひとつ感じてほしくないんですね。

一歩を踏み出してくださったことに感謝ですし、そうやってつまずいてしまいそうなことを取り払っていくのも私たちにできることのひとつだし、存在意義にもつながります」

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「地元の方に手伝ってもらいながら、物資を搬出する様子。毎日、その地域に必要な品目と必要な数を積み込みます」

photo : TAKASHI YOSHIDA
styling : YURIKA NAKANO
hair & make-up : KENJI TAKAGAKI[SHIMA]
interview & text : HAZUKI NAGAMINE
model : SAEKO
web edit : KIMIE WACHI[sweet web]

※記事の内容はsweet6月号増刊 otonaSWEETのものになります。
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