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ドイツと日本の国際カップルの歩み。一緒にいると、違って見える世界【私たちのパートナーシップ Vol.3・前編】

  • 2024.6.26
アパレルブランド「オフサイトスタジオ(offsait studio)」をともに運営し、今年7月に結婚するTakuji(左)とOnur(右)。Photo_ Shahin Campos
アパレルブランド「オフサイトスタジオ(offsait studio)」をともに運営し、今年7月に結婚するTakuji(左)とOnur(右)。Photo: Shahin Campos

パートナーシップにおいて、大なり小なり何かしらの悩みや不安を抱えている人は少なくはない。私たちはときに価値観のずれに悩んだり、伝統的な家族観や固定観念に囚われたり、ちいさなボタンのかけ違いによって大切なものを見失ってしまうなどして、自由で豊かなパートナーシップの本質がわからなくなってしまうときがある。こうした中、さまざまなかたちのパートナーシップを営む人々の等身大の物語は、肩に入った力を抜き、前を向いて歩むヒントとなるはず。

本連載に登場する3組目は、交際9年目を迎え、2024年7月1日にベルリンで結婚をするTakujiとOnur(通称:小野さん)。京都でゲストハウスやアパレルブランド「オフサイトスタジオ(offsait studio)」をともに立ち上げ、公私共に支え合ってきた。前編は、二人が大事にしているコミュニケーションや、一緒にいて感じる互いへの良い影響について。後編は、ドイツ移住を決意したきっかけと、変化したライフスタイルに注目する。

一番に会いたい人

愛犬みっちゃんとともに。Photo_ Marika
愛犬みっちゃんとともに。Photo: Marika

VOGUE(以下、V) お二人の出会いは?

Takuji 僕は京都出身で、2015年の4月に転職をして名古屋から京都へ帰ってきていました。時を同じくして小野さんが日本に来ていて、アプリを通して知り合い、大阪で初めて会いました。

Onur 僕はドイツ出身で、2015年の2月からワーキングホリデーで日本に住むようになり、Takujiと出会いました。それから京都大学の大学院に通ったり、彼と一緒にゲストハウスやオフサイトスタジオを運営したりするようになりました。

V 互いの第一印象は?

Takuji 今も変わらないですが、優しくて穏やかな人だなって。

Onur クールで軽やか。とても才気が溢れている印象でした。

V 交際に発展した経緯はなんだったのでしょうか。

Onur 出会って2カ月くらいだったね。TakujiがNYから帰ってきたあと。

Takuji そう、僕がNYに1カ月旅行に行っている間もずっと連絡をとっていて、帰国したら小野さんにすぐに会いたいと思って、一番最初に会いに行ったんです。それからデートの回数を重ね、友人のホームパーティーに呼ばれたときに「みんなに彼氏として紹介していいですか?」と彼に聞いたら、「いいよ」と。その日からオフィシャルに彼氏になりました。

Onur すごく嬉しかった。こうした会話をした経験がなかったから、なんだか青春のようで幸せな気持ちになりました。

京都の街を二人三脚で駆け抜けて

自転車に乗りながら、ゲストハウスとなる物件を探し回った。
自転車に乗りながら、ゲストハウスとなる物件を探し回った。

Takuji さらに仲が深まったのは、ゲストハウスの事業を始めてから。京都の町屋をリノベーションした場所を作りたくて動き始めたのですが、まずはじめに物件探しにとても苦労して……。というのも、僕は京都市内の出身ではないから伝手がなくて厳しく、不動産屋さんが紹介できる物件はすぐに売約されたり高かったり。なので自分の足でたくさん探し、その間小野さんも自転車に乗って一緒に駆け回ってくれて、2016年に念願の物件が見つかりました。小野さんは大学院に通いながら、英会話の先生をするなど忙しかったのに、7カ月くらいかけて改装している間も毎日手伝いに来て、壁塗りなどのリノベーションを一緒にしてくれました。一年前は知り合ってもいなかった人が、急にやると言い始めたビジネスに対して、自分の時間とエネルギーをここまで費やしてくれることに感動しましたし、もっと好きになりました。

Onur 自分からすると、大切な人と同じ時間を過ごしているというような感覚。Takujiは僕のボーイフレンドだから手伝うのは自然なこと。一緒に音楽を聴いたりおしゃべりしながらリフォームしたり、楽しい良き思い出です。寒かったけど。

Takuji そうね、電気がまだ通っていない2月とかは寒かった。いろんな面で、一人だったら実現が難しかったと思います。

アクティビティのあるデートは日本特有?

京都の町屋をリノベーションする二人。
京都の町屋をリノベーションする二人。

V 思い出深いデートは?

Takuji 付き合い始めに二人で行った四国旅行。車を借りて一週間くらい貧乏旅行したのはすごく楽しかった。あと、2018年に一緒にトルコに行った旅も思い出深くて──物腰が柔らかく、おしゃべりで家族を大切にする人たちに出会い、トルコ系ドイツ人の小野さんのルーツを感じました。

Onur 僕は、大阪での初デートかな。海遊館と天保山に行ったのはとても新鮮で面白かった。「どこ行く? じゃあ、水族館に行こう」「次は何にする? じゃあ、観覧車に乗ろう」ってとてもおしゃれ。僕の感覚だと、デートといえばカフェに行ったり、公園を散歩したりで、そんなにアクティビティはない。だからなんだか若返ったような気分で、すごく良いデートでした。昨年ドイツと日本で遠距離を一年して再会したときに、また同じコースをたどって二度目もすごく楽しかったね。

“言わなくても通じ合える”ことに甘えない

V 豊かなパートナーシップを育んでいく上で、二人が大切にしていることはどんなことですか?

Takuji コミュニケーションはやっぱり大切にしていることのひとつ。一緒にいればいるほど、なにも言わなくても伝わることが出てきて、それに甘えちゃった時期がありました。しかし、いくら意思疎通が簡単になっても、それぞれ違う人間だし、違った考え方もあるので、小さなことですれ違いが出てきて、気づいたら大きなギャップができてしまっていた。それからは、相手の意見を聞いたり、自分の考えを話す時間を意識的に持つようになりました。

V 親しければ親しいほど、本音で話し合う難しさを感じることがあります。深く話し合う方法や気をつけていることはありますか?

Takuji 僕は感情にのまれがちで割と口が立つタイプ。一方、小野さんは自分の意見を話すのが苦手なので、僕の意見が一方的に通ってしまうんです。でも、コミュニケーションの方法は年々よくなっているのを感じます。感情と一緒に言葉を発して本質的に伝えたかったことからずれないよう、僕は心がけるようになりました。小野さんは、まず僕を落ち着かせてくれるね。

Onur 自分はすべてを胸の内にしまい込んでモヤモヤしてしまうので、もっとオープンで素直になれるよう努力しています。そのために、大前提としてTakujiは僕が傷つくようなことを望んでいないことを自分自身にリマインドします。彼は僕のパートナーであり、僕がなにを言ってもジャッジしないということも。

Takuji 本心を引き出せるまで、同じ質問を3~4回聞くこともあります。あと、小野さんは書き出したりもする。

Onur そう、メールやショートメッセージで、時間をかけて言語化したものを送ることもあります。それから話し合う。

Takuji 先日、9年目の記念日を迎えましたが、常に試行錯誤しながら前進しています。

夫から学んだ、メンタル術

V お互いのことで、特に尊敬しているところは?

Takuji 小野さんの人となりは柔らかいけど、メンタルが強いんです。ダメージを受けるようなことがあったとしても、自分の中での処理の仕方や物事の捉え方が上手。僕の場合は勢いよく進むけど、ポキッと折れてしまうときもあります。でも、小野さんは無理にポジティブに持っていくわけでもなくニュートラルで、しなやかに対処していく姿を人としてすごいと思っています。

Onur それは父親譲りなのかも。大事に至ることでなければあまり気にならないですし、ストレスが溜まっていたら、自分に対してどうしたら良いかを理解しています。頭をさっとオフにし、家というセーフスペースで音楽を聞いたり掃除をしたりして自分を満たします。モップがけが特に好き。

Takuji たまに暗がりでモップがけをしていたら、今日何か嫌なことがあったんだなって思う(笑)。小野さんから受けた良い影響ってたくさんあって、小野さんが自然としている瞑想と掃除を、僕も取り入れるようになりました。僕の場合は頭が黙らず、結果的に円形脱毛症などの症状として現れるまで不調に気づかないんです。頭を空にすることって案外難しいですが、瞑想動画などを見ながら始めてみたら、今のところ快調です。

Onur 僕は、Takujiの行動力や軽やかさを尊敬しています。何かを始めようと思っても自分だったら慎重になってしまいますが、Takujiの場合はクリティカルにものを見ながらも恐怖を恐れず挑戦し、突き進む力があります。それと同時に、ものすごく周囲の人たちのウェルビーイングにも気を遣っている。Takujiと一緒にいるようになり、昔に比べ自分をより信じられるようになりました。

V 二人が一緒にいることで、強くなれる。

Onur 間違いなくそう。ひと足さきに一人でベルリンにきたときは、正直なところ街を楽しむことができませんでした。Takujiと喜びを共有できないと意味がないんです。そして今、彼と一緒にいるベルリンは違って見えて、希望で満ち溢れています。

Photos: Courtesy of Takuji & Onur Text&Interview: Mina Oba Editor: Mayumi Numao

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