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なぜ若葉竜也の演技は人の胸を打つのか? K-POPオタクが「アンメット」にどハマりしたワケ。稀有な魅力を深掘り考察

  • 2024.6.26
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写真:宮城夏子

杉咲花が主演を務めた、“記憶障害の脳外科医”が主人公の医療ヒューマンドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)。本作で、脳外科医の三瓶友治を演じ話題となっている若葉竜也の魅力を徹底解明。三瓶先生に完全にハマってしまったK-POPオタクの筆者が分析する若葉竜也の魅力とは? (文・紺野真理子)
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【著者プロフィール:紺野 真利子】
エンタメ系ライター。映画誌やテレビ誌をメインに、俳優・アイドル・声優などのインタビュー記事やコラムを執筆中。好きなK-POPはBTS、SEVENTEEN、(G)-IDLE。好きな映画はマーベル全般、『スパイダーバース』シリーズ、『キングスマン』シリーズ、『プラダを着た悪魔』、『ラ・ラ・ランド』など。

写真:宮城夏子
写真:宮城夏子

K-POPオタクにも関わらず2024春ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)で若葉竜也演じる三瓶先生に完全にハマってしまった。なぜ“K-POPオタクにも関わらず”と前置きしたかというと、K-POPアイドルは基本、髭を生やさない。真っ白で一切毛穴のないツヤツヤな肌がデフォルトなので、髭なんて論外だからだ。

【写真】これぞ“伝説の最終回”…若葉竜也&杉咲花らによる一世一代の名演技に浸れる劇中写真。ドラマ『アンメット』劇中カット一覧

三瓶先生のようにボソボソ話すアイドルも見たことがない。もしかしたらそういうアイドルも中にはいるのかもしれないが、筆者はSEVENTEENという、K-POP界の中でも相当陽キャな部類に入るアイドルグループを推しているので、本来ならば三瓶先生とは真逆の人が好きなはずなのだ。

にも関わらず、陰気でマイペースで、何を考えているか全くわからない、髭を生やした三瓶先生にドハマりしてしまった。自分でもびっくりだ。そしてついには、こうして若葉竜也のコラムを書くにまでいたった。

『アンメット ある脳外科医の日記』は、記憶が1日しか持たない障害を持つ脳外科医・ミヤビ(杉咲花)が、アメリカ帰りの脳外科医・三瓶友治(若葉竜也)と出会い、さまざまな患者と向き合いながら新たな1歩を踏み出していく物語。ストーリーが面白いのはもちろん、杉咲と若葉を始め、役者陣の演技が素晴らしすぎて毎週夢中で見ていた。

回を追えば追うほど、無愛想だけど誰よりもミヤビ思いな三瓶先生に胸を打たれた。表情に乏しくあまり笑顔を見せることのない三瓶先生だが、ミヤビを見つめるその視線だけで、彼女を愛おしく想っていることが伝わってくる。視線ひとつでミヤビへの愛を表現できる若葉竜也、すごすぎる。

写真:宮城夏子
写真:宮城夏子

とくに放送直後SNSでも大反響だった9話の、14分間にわたる長回しのラストシーンは、今でも思い出したら泣きそうになってしまうぐらい心揺さぶられた。

三瓶先生が、亡くなってしまった重度障害者の兄について涙を流しながらミヤビに打ち明けるシーン。今、果たして自分はドラマの映像を見ているのか、それともドキュメンタリーを見ているのかわからなくなるぐらい鮮烈かつリアルで、引き込まれた。

あまり感情を表に出すことのない三瓶先生の見せた涙と、そんな三瓶先生を優しく、力強く包み込むミヤビ。そんな2人があまりにも尊くて、決してラブシーンではないはずなのに、ものすごく愛を感じた。あの14分間の、もはや演技を超越している2人のやりとりは、後世まで語り継がれるべき名シーンだと思う。

こうして『アンメット』を機に若葉竜也という俳優が気になって仕方なくなり調べたところ、実は筆者がこれまで拝見したことのある作品に多数出演しており、「え! あの役も若葉さんだったの!?」と衝撃を受けた。

たとえば『愛がなんだ』(2018)のナカハラ。好きな女の子に身勝手に振り回され、それでも献身的に尽くし、寂しそうに笑うあのナカハラが三瓶先生と同じ俳優さんだとは思ってもいなかった。あと個人的に好きな映画『神は見返りを求める』(2022)に出てくるクズイケメン・梅川。梅川は、あまりにも軽薄すぎて腹が立つものの、1周回ってかわいそうになる役柄なのだが、「実際にこういう人いそう…」と思わせるリアルさがあった。

この「実際にいるよね」どころか「もはや会ったことすらある気がする」と、観客に思わせる卓越した表現力こそ俳優・若葉竜也の魅力に他ならない。

とにかく若葉竜也は、“演技だと思えない演技”が、あまりにも上手すぎる。それは彼の主演映画『街の上で』(2021)でも感じた。

『街の上で』自体が何気ない日常を描いていて地に足のついたストーリーではあるのだが、そのリアルな世界観に共感を持たせるには、ナチュラルな演技が必須だ。「実際こういう男の子いるよね」と思わせる説得力と、生々しさ。若葉の演じる主人公・青は、完全に「下北沢に行ったら会えそうな男の子」だった。とはいえ、実際はこんなかっこよくて雰囲気のある男の子はそうそういないのだが…。

写真:宮城夏子
写真:宮城夏子

『アンメット』はついに6月24日に最終回を迎えた。最終話では、三瓶先生がよく食べていたグミの秘密や、初回で三瓶先生がミヤビに言ったセリフが、実は過去にミヤビが三瓶先生に語ったセリフであることが判明したりと、伏線回収も完璧だった。

そして、目を覚ましたミヤビの「…わかります」で終わるラストに涙が止まらなかった。本音を言えば、まだまだミヤビと三瓶先生が織りなす日常を見ていたい。きっとこれから日本中が“三瓶先生ロス”になるのではないか。

できればあと5クールぐらい『アンメット』を放送してほしいという気持ちもありつつ、三瓶先生の言葉にあったように、そして若葉自身がInstagramで発信していたように、きっと「強い感情は忘れない」のだろう。

俳優・若葉竜也が次はどんな演技で心を揺さぶってくれるのか、すごく楽しみだ。彼の次の出演作は現時点で発表されている情報では、2024年9月13日公開の『ぼくのお日さま』になりそう。今から公開がとても楽しみだ。それまでに未見の映画『ペナルティループ』(2024)も観なくては。

(文・紺野真理子)

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