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「乳ばんど…?」14歳の女中さんは初めての西洋文化に驚きの連続!昭和初期の日本の日常を描くほのぼの漫画

  • 2024.6.26
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ダ・ヴィンチWeb
『うちのちいさな女中さん』(長田佳奈/コアミックス)

『つれづれ花譚』『こうふく画報』で一昔前の日本で生きる市井の人々を描いてきた長田佳奈先生の最新作『うちのちいさな女中さん』(長田佳奈/コアミックス)は昭和初期の日本の生活について、女中として働く主人公・野中ハナを通じて描いている。

翻訳家・蓮見令子のもとに住み込みの女中としてやって来たのは14歳の少女・野中ハナ。令子は想像していたより遥かに若い女中が来たことに驚くものの、ハナを歓迎し二人の生活が始まっていく。

「女中」というと厳しい環境を強いられる悲哀な状況を思い浮かべるかもしれない。実際、ハナは物心つく前に両親を亡くしており10歳になるまで遠縁の親戚の世話になった後、令子のおじの屋敷で女中として勤めている。

しかしハナは屋敷の主人と先輩女中から優しく接して過ごしてきたことが窺え、令子も優しい人柄で大事に接している。『うちのちいさな女中さん』というタイトルの雰囲気からもわかる通り、ハナに関わる周囲の人々の温かい眼差しと愛情に満ちた物語なのだ。

作品が昭和初期という西洋文化が浸透しだした時代というのもあり、当時の新しい文明が登場する。

ハナが乳バンド(現代のブラジャー)を見た時や、台所の瓦斯(ガス)コンロを使ってみた時の初めて見聞きする物事に戸惑ったり感動したりする様子が微笑ましい。普段は表情の変化が見られない彼女がリアクションするからこそ、より感情の動きが伝わってくるのでそんな彼女が次はどんな新しいものと出合い、どんな表情を見せてくれるのか次の回が待ち遠しくなる。

衣服や機材以外の他にも「洋食」という当時にとって新しい料理も登場する。今となってはさほど珍しくないクリームソーダやライスカレーといった洋食も、料理の絵が非情に凝っておりひときわ美味しそうに見えて食欲をそそる。

これから発売される最新刊の第5巻でも、新しい料理が調理の工程を含めて美味しそうに描かれており、視覚的な美味しさを味わえるので手に取って堪能してもらいたい。

料理の描写について触れたが、日常生活での雑巾がけ、調理等の何気ない描写から窺えるハナの仕事ぶりや手際の良さも目を引く。特に令子から譲り受けたお古の着物を仕立て直すエピソードでは手仕事がより丁寧に表現され情緒が感じられた。ハナの手仕事の描写をはじめ、令子や様々な登場人物の手の仕草から状況や感情を表す叙情味もこの作品の魅力の一つである。

そして、この作品の最大の魅力は何と言ってもヒューマンドラマである。令子は翻訳家として忙しくするなか、ハナの存在が癒しになっているのが見てとれる。ハナにとっても令子が雇用関係を抜きにして大事な存在であることは第1話でも描かれてはいるが、第5巻では更に令子がハナの心の支えになっていることがわかるエピソードが収録されている。

これから二人が本当の家族と同じくらいの強い信頼関係を築き上げていくまで、そう遠くはないだろう。回を追うごとに深まる二人の心の距離と温もりを是非とも読んで感じ取ってほしい。

文=ネゴト / 花

『うちのちいさな女中さん』第1話試し読みページはこちら

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