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永瀬廉、撮影前からいい現場になると確信「三木監督は、僕をすごく褒めて下さった」<よめぼく>

  • 2024.6.26
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永瀬廉&三木孝浩 撮影/山田大輔
永瀬廉&三木孝浩 撮影/山田大輔

【撮りおろし3枚】まるで見つめられている気分…優しい眼差しの永瀬廉

命に限りがある2人の眩しい恋の物語を描く「余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。」がいよいよ今週6月27日(木)からNetflixにて世界独占配信される。主人公・早坂秋人を演じるのは、近年俳優としての活躍も目覚ましい永瀬廉。絵を描くことが好きで、二科展の入選を目指している地味な高校生が、“余命1年”という十字架を背負ったキャラクターを瑞々しく演じた。秋人より命のタイムリミットが近い“余命半年”のヒロイン・桜井春奈(出口夏希)との期限付きの恋を尊くキラキラと眩しく描いた今作の魅力を監督の三木孝浩と永瀬の独占インタビューでお届けする。

永瀬廉「いい現場になるなという確信があった」

――タイトルから想像できないほど、鑑賞後、爽やかで温かい気持ちに包まれました。まずは三木監督に今作を映像化した思いを聞かせて下さい。

三木孝浩(以下、三木):最初にこの企画をいただいて、原作小説を読もうという時にタイトルだけ見たら、ちょっと心が痛くなる悲しいお話なのかなと思ったんです。読了してみると、春奈と秋人は、余命宣告をされているのに共に残された時間を懸命に純粋にキラキラと生きていて。2人のまっすぐな想いが非常に眩しく思えたんですよね。

悲しい2人ではなく、余命があるけれども、思い合うキラキラした2人が羨ましいと思ってもらえるように描きました。

――自らに余命が迫る中、同じように命のリミットが近づくヒロインに恋をする主人公・秋人役を永瀬さんが演じていますが、その健気で一生懸命な姿に心を打たれました。

三木:永瀬くんのパブリックイメージって、ちょっとクールでミステリアスじゃないですか。春奈と出会う前の秋人の人生を諦めている感じや、どこか諦観しているところが、永瀬くんが持つアンニュイな雰囲気と重なるんですよね。

春奈と出会って、生きる希望を見出していく、そこからの変化のカーブをしっかり表現してくれる役者さんに演じて欲しいという思いもあり、永瀬くんにお願いして本当に良かったです。

永瀬廉(以下、永瀬):僕は人見知りなんですけど、三木さんはいつもニコニコされていて、優しい雰囲気に溢れているので、撮影ではその優しさにめちゃくちゃ助けられました。僕らに寄り添いながら、お芝居の提案をして下さったり、こうして欲しいという方向性を導いて下さったり。

意見交換しやすい空気感を作っていただいて、ありがたかったです。現場もピリピリすることがなく、風通しのいいのが三木組(笑)。めちゃくちゃいい環境でした。

三木:いい環境と思ってくれたなら良かった。どの現場でもそうですけど、キャストが「ここはどうしたらいい?」とか、聞きやすい空気を作りたいなと思っているので。何か分からないことがあれば、聞いてきて欲しいと思っているので、うれしいですね。

――人見知りの永瀬さんも、最初から監督には心を開くことができたんですね。

永瀬:三木さんと初めて会ってお話させてもらった時に、「声がいいよね。表情もいい」みたいな感じで、すごく褒めて下さったんです。その時から、三木さんとならいろいろ話し合って作り上げられるいい現場になるなという確信がありました。話をしたのは、本当に少しの時間だったのに撮影がめちゃくちゃ楽しみになりましたもん。

三木:永瀬くんは、もっとクールな人なのかと思ったら、すごく関西弁で「めっちゃ話しやすいですやん!」って言われて(笑)。ギャップがすごく面白い人なんです。僕は出身が四国で西寄りなので、永瀬くんとはすごく話しやすい。面白がる感覚的な所も似ていると思います。

永瀬:そうそう、いろんな話をしましたもんね。ご飯を食べに行ったり、カラオケに行ったり。あれは、いい時間だったな~。

三木:永瀬くんは、約1カ月にもなる長期の地方ロケが初めてだそうで。最初は「いや~、1人寂しく、神戸では時間を持て余すんじゃないかなぁ」みたいなことを言っていたのに心配する必要なかったね(笑)。

永瀬:確かに。ナイトシーンがあまりないから、夕方に撮影が終わったら、「ご飯、食べに行こうぜ!」みたいな感じで、みんなで行動していました。神戸ロケ、本当に楽しかった。僕と三木組との相性、すごく良かったですよ。ちなみに三木さんはカラオケでフジファブリックさんの「若者のすべて」を歌っていました。

三木孝浩「永瀬くんの自然な涙に、スタッフ一同グッと心をつかまれた」

――今作では、フジファブリックの名曲「若者のすべて」をヨルシカのsuisさんがカバーをしていますね。最後の瞬間まで作品に寄り添うドラマティックな楽曲だなと思いました。

三木:音楽プロデューサーの亀田誠治さんと主題歌について話をする中で「新しく主題歌を作るのではなく、みんなの思い出の中にある曲をモチーフにできないか」という話になって、女性ボーカルによるフジファブリックの『若者のすべて』にしようという案が出たんです。

フジファブリックの志村正彦さんが作った曲で、志村さんは29歳の若さで亡くなっています。それでも、彼の音楽はいろんな人がカバーしていますし、引き継がれている。それがこの作品の“残す者、残される者”という部分にリンクしているな、と。

今回の映画で言うと、残された人間である綾香が秋人と春奈の2人の生き方を見届けていて。2人のエモーション、思いのバトンをどう受け取ってどう生きて行くかというのに通じています。秋人と春奈の生きている時間の輝きを見て、生きていく糧になるような楽曲になりました。

永瀬:本当にそうですよね。僕はヨルシカさんの楽曲には、本当にたびたびお世話になっていまして。ドラマ「夕暮れに、手をつなぐ」(2023年、TBS系)でもそうですし、ご縁があるなと。

フジファブリックさんのも大好きなのですが、カバーを聞いて歌い手さんによって曲の印象もすごく変わりました。suisさんの優しく包み込んでくれるような歌声は、凝り固まった心をほぐしてくれるような「若者のすべて」だなと思いました。

――すてきなシーンがたくさんありますが、お気に入りのシーンを教えてください。

三木:春奈の病室で、秋人が春奈の絵を描くシーンですね。永瀬くんと出口さんのお芝居が本当に良くて。最初に話し始める場面で出口さんの横顔を撮っていたら、すぐにお芝居のスイッチが入って、もうカットかけらないくらい素晴らしかったです。そのまま最後まで撮りました。そこでは永瀬くんの自然な涙が印象的。スタッフ一同、グッと心をつかまれて、そこにいる全員が涙を流していました。

永瀬:そのシーンは気づいたら、もう泣いていましたね。最初の方、春奈は元気な感じでいるんだけど、徐々に体調が好ましくない状態に進んでいく。その状況に秋人としては、辛さがあるのに春奈がある言葉を言うんですよね。言い方は弱々しいけど、その言葉の持つ力の強さを感じて。我慢していたものが壊れていくような感覚に陥って、涙が出てきました。

三木:あの涙、本当に良かったね。秋人と病室を出た春奈が2人で海の砂浜で夕陽を見るシーンもいいシーンになった。夕陽が沈む、本当にわずかな時間の中で、いろんなカットを撮らなきゃいけないので、みんな本当に集中していて。すごくいい表情が撮れました。

永瀬:あの夕陽は、美しくて奇跡の時間だったな。めちゃくちゃ良かったです! あと、病室で観る花火のシーンですね。春奈と秋人がお互いのことを想いながら見つめる花火のシーンは、すごくいいシーンになったと思います。

もし余命1年と宣告されたら…

――永瀬さんは、ご自身の出演作を客観的に観られないそうですが、今回は、かなり没入して作品を観られたんですね。

永瀬:そうですね。自分が出演していると、反省点が目についてしまって、物語として100%楽しんで観られなくて…。でも今回は、それを忘れて素直に観られたんです。それは僕としても初めてだったし、何より画がきれいで引きこまれました。

春奈と秋人の心情の切り取り方がすごく良くて、2人の想いが伝わってきましたね。相手を想う、まっすぐでピュアな気持ちが伝わってくる作品に完成していたので、すごくいい作品に出演できたなと改めて思いました。

三木:秋人は春奈に出会ったことで、生きる喜びを知って、彼女のために生きたいと生命力を取り戻していくキャラクターなんですよ。今、彼が何を考えているのか、秋人の心の内側が知りたくなるように永瀬くんはいい塩梅で演じてくれました。後半に向かって、ますます秋人の心情を出していくのが上手いなって思いましたね。

永瀬:気持ちを作るのは、早いほうかもしれないです。もちろん役に入り込もうとしますけど、結構、現場で感じたままの表情で、台詞の言い方をしていたのかなって。

三木:お芝居というか、セッションでした。余命を宣告されているという重い設定を背負ってはいるので、完全に設定を作り込むとどんどん重くなってしまう。

でも、出口さんと永瀬くんは、その瞬間、その瞬間、相手と向き合った時に出る表情だったり、感情だったりを大切にしてくれたんです。今回は、想い合う2人の眩しさを見せたかったので、その瞬間感じたものを大事にしようという話を最初に伝えて良かったです。

――本当にその瞬間、その瞬間の煌めきが眩しいほどに描かれている作品でしたが、お2人は、もしも余命1年と宣告されたら、残りの人生をどう過ごしたいですか。

永瀬:お世話になった人たちへのあいさつまわりをしたい。直接会って、「ありがとうございました」という感謝の想いを伝えたいですね。もちろん、友達や家族にも。

三木:どうすんだろうなぁ…。

永瀬:余命宣告されたら、死に際までやっぱりずっと映画を撮るんじゃないですか?

三木:うーん。余命1年だからね。1年で完成するものならいいんだけど、未完成で死んじゃったら、悔いは残るよね(笑)。

永瀬:確かにそうですね(笑)。

三木:自分の年齢でこの映画を観た時、親の立場をすごく考えたんですよね。自分が余命宣告されたら、あとは子供に何を残すかっていうことだけ考えるだろうな、と。それこそ秋人が春奈のために生きることで、余命を生き抜けたように、わりとシンプルに「あと1年で子供に何を残せるのかな」って考える気はしますけどね。

子供って言いましたけど、自分にとって、ある種、映画も子供みたいなもの。この後、生きる人たちのために、何を残せるかを考えると思います。

再タッグは永瀬廉の関西弁を活かした“ハートフルコメディー”で

――この作品に携わったことで、改めて自分の人生どう生きていきたいと思いましたか。

永瀬:やっぱり、いつ何が起こるか分からないじゃないですか。だから、悔いのないように生きてきたので、これからもそういう生き方をしたい。改めて人生、何が起こるか分からないなっていうのを考えるいい機会でもあって、これからも自分の好きなことをしつつ、仕事しつつ、 悔いのないように生きていって、僕なりの輝きを発したいですね。

三木:えっ、すごいなぁ。後悔のない人生…。僕は日々、反省し、日々、後悔ばかりですよ。

永瀬:悔いを残さない生き方って、すごく難しいと思うんですけど、自分のしたいことを好きにして、好きなものを食べて。あまり我慢をしないっていうことを大切にしています。

三木:それは大事なことだね。普段、日常の中で自分の死を意識することってなくて。ある種、死に対しての恐怖があるから、無意識に死について考えることは遠ざけようとする。でも、自分の死をちゃんと意識しながら、丁寧に日々を生きていくっていうのは大切なこと。

この映画を観た方もこれをきっかけに自分の残りの人生どう生きようみたいなことを考えてもらえたらうれしいです。

――春奈と秋人のように一瞬一瞬を大切に生きられたらいいなと思いました。もしもお2人がまたタックを組まれることがあるなら、どんな作品がいいですか。

三木:やっぱり永瀬くんは普段の姿とギャップがあるから。ちょっと素の永瀬廉をバリバリ出した作品なんていいんじゃないかな(笑)。

永瀬:あー、僕もそれを言おうとしました。僕の新たな一面を切り取ってほしいです。

三木:そうね。普段の面白い関西弁のお兄ちゃんみたいなキャラを1回やってみない?

永瀬:やりたい! 今回は感動系だったから、何も考えず笑えるようなハートフルコメディーで。三木さんもゲスト出ちゃって! 僕の行きつけの居酒屋のおじさん役で(笑)。

三木:永瀬くん、意外と素に近い役はお芝居でしてないから。素を見せるのは、バラエティー番組くらい?

永瀬:バラエティーでも素の自分全開は見せられているのかな…。

――永瀬さんはユーモアがあるのにどこか感情を抑えている雰囲気が…。それがミステリアスなベールに包まれているように見える理由かと思いますが、自分を出すのが苦手ですか?

永瀬:めちゃくちゃ人見知りなので。ガッツリ仲良くなった人は別ですけど、バラエティー番組だと収録の期間が空いてしまって、久しぶりに会うと関係性が0に戻っちゃっていることもあって。でも、お芝居の現場は別。毎日一緒にいるから仲良くなれるし、自分を不思議と出せるんですよね。

三木:役だと行けるよ。やろう、関西弁キャラ! 僕の作品で関西弁バリバリの物語ってないからね。京都が舞台の作品ですら、誰も関西弁を喋らなかったし。バリバリ、関西弁キャラ、考えますか。

永瀬:待ってます! いつにします? 来年?(笑)。バリバリ関西弁のやつ、ここにちょうどいいやつ、おるよ(笑)。

◆取材・文/福田恵子

撮影/山田大輔

【永瀬廉】

ヘアメイク:スタジオまむ 増澤拓也

スタイリスト:横田勝広(YKP)

【三木孝浩】

ヘアメイク:小林雄美/TAKEHARU KOBAYASHI

スタイリスト:内田あゆみ(creative GUILD)

衣装:Alden

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