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元気な母が突然倒れた。入院中認知症が進み… 母親の介護に奔走するリアルな日常をつづったコミックエッセイ

  • 2024.6.25
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自分の身近な人が元気でいてくれる日々は、この先も続いていくものだと思ってしまいがちだ。しかし、そんな日常は当たり前ではないということに気付かせてくれるのが本作『78歳母とブロガー娘の 今日からいきなり介護です』(あぽり/KADOKAWA)だ。

介護をしたり、されたりというのは誰しもがいつか通る道だ。本作は知っておくと役立つ情報、利用したサービスなどにも触れているため、目を通すだけでもためになる。両親の介護に向き合っている方はもちろん、介護に直面していない方もぜひ本作のストーリーを自分ごとと捉えて、自分や周りの人が元気なうちに手に取ってほしい。

物語は著者のあぽりさんとその家族が、ひとり暮らしのあぽりさんの母親のもとを訪ね、母が倒れているのを発見するところから始まる。救急隊員に着替え、保険証、お薬手帳を用意してほしいと言われるが、自分の家ではないので何がどこにあるのかわからない。母親の誕生日を聞かれるものの、急に思い出せなくなってしまう。元気に暮らしていると思っていた母親が突然倒れている姿を前に、誰しもがパニックで冷静な対応はできないだろう。

その後、あぽりさんの母親は寝たきり状態に。内科、外科、神経科、精神科などで検査をしたものの、結局、寝たきりの原因はわからずじまい。一方で、あぽりさんは医者から、母親が認知症であることを告げられる。あぽりさんは告げられるまでそのことに気付かなかった。しかしあぽりさんの母親は、自分の息子や親戚など10人ほどがお見舞いに来たにもかかわらずそのことを忘れて「誰もお見舞いに来ていない」などと言い始める。あぽりさんは何度もお見舞いに行くなかで、母親のさまざまな症状に気付き、認知症の進行を実感していく。

このまま進行したらどうしようと悪い方向にばかり考えてしまう、あぽりさんの不安な気持ちに共感できる介護者の方は少なくないだろう。

本作はあぽりさんが実際に直面した母親の介護にまつわる問題も描かれている。例えば、退院後の住まいの問題だ。病院の決まりで、あぽりさんの母親は入院後60日で退院しなければならない。しかし、介護のために必要な家のリフォームは高額で、簡単に出せる金額ではない。介護施設の利用料も高額で、安いところは10年待ち。介護を経験した人ではないと分からない悩みもリアルに描かれているため、介護の想像がつかない人でも、問題を自分ごととして捉えやすいだろう。

退院の日が刻一刻と迫るなか、どうするかをすぐに決めなければならない焦りを抱えて途方に暮れたあぽりさん。そんなあぽりさんを助けてくれたのは、「医療ソーシャルワーカー」というプロの存在だ。まだ介護に向き合っていない人でも、頼れる人がいることを事前に知っておければ、いざという時でも安心だ。

寝たきりの状態だったあぽりさんの母親だが、リハビリで歩けるくらいまで回復して退院にいたる。しかし、リハビリで身体の調子が良くなっても認知症が治るわけではない。退院後も「あぽりさんの母親は認知症なんだ」と改めて思い知らされるエピソードが複数でてくる。あぽりさんの母親は、そもそも自分が寝たきりになっていたこと自体を忘れている。お気に入りの先生や理学療法士さんのことも、あぽりさんが介護したことも、全て覚えていないのだ。

「忘れられてしまう」というのは、認知症患者の介護をするうえで起こる辛くて切ないことのひとつだろう。現在身内の介護をしている方は「一生懸命介護しても忘れられてしまい、切なくて苦しい思いをしているのは自分だけではないんだ」と少し心が楽になるかもしれない。

子育ても介護も、身の回りの世話をしなければならないという部分はよく似ている。だが未来に向かっている子育てと異なり、現状維持か悪化の2択で人生の終わりに向かっている介護は希望を抱くのが難しい。たとえ今はまだ介護に向き合っていなくとも、不安を抱える人は少なくないだろう。

そんな人にこそ本作はおすすめだ。あぽりさんの母親の症状や、それと向き合うあぽりさんの気持ちがリアルに描かれているので、同じような悩みを抱えているのは自分だけではないと少し心が軽くなるかもしれない。そして、本作ではそんなあぽりさんを助けてくれた介護のプロの存在も紹介している。自分はひとりではない、どこかに頼っていいのだと知ることができるだろう。ぜひ本作を手に取って、介護をするときの参考にしてほしい。

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