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たゆみない想像力を剥き出しに。スキャパレリが再解釈する、オートクチュールの全盛期【2024-25年 秋冬クチュール速報】

  • 2024.6.25

「エルザの田舎の邸宅の地下室に、忘れ去られているオートクチュールコレクションを見つける夢を見たんです」──スキャパレリSCHIAPARELLI)は、1920年代と30年代に花開いたクチュールメゾンだ。かと言って、クリエイティブ・ディレクターであるダニエル・ローズベリーがそれらの年代に縛られたことはないが、彼のたゆまぬ想像力は今シーズン、いつも以上に顕著に現れていた。「異なる時代から着想を得たコレクションだと感じて欲しかったのです。1950年代には、どこかフレッシュでシンプルな空気感がありました。(今回は)そういったシルエットをオマージュしたものが見て取れると思います」と彼は話す。

実際にショーは地下室で開催された。それも、古くからそのサロンでクチュールのショーが行われてきた、オテル・サロモン・ド・ロチルドの地下室だ。シャンデリアに照らされた暗い空間を恭しく練り歩き、ゲストと視線を交わすモデルたち。かつてのオートクチュールショーを思い起こさせるひとときを、ローズベリーは創り出したのだった。

シュルレアリズムが描く、蠱惑的な身体美

オートクチュールの全盛期とされている1950年代に目を向けることで、ローズベリーは自らの野心を表した。ブランドの柔軟性、そして自分自身とアトリエができることの幅を披露したかったと話す彼の言葉通り、ローズベリーと職人たちの手によって生み出されたコレクションは、「再解釈」を得意とするスキャパレリの真の実力を見せつける見事なものだ。オープニングを飾ったワイドショルダーのケープは、ショーのマスコットである不死鳥をなぞらえたようなデザインで、巧みに配置されたシルバーのひし形の刺繍で、一面に輝く羽根を表現。ブラックのパーティードレスは、チュールのスカートの裾さきがあたかも踊っているように跳ね、赤銅がかったピンクのラインストーンを贅沢にあしらった裏地があらわになっている。そして円形の布地を幾層にも重ね合わせた裾のドレスは、見るからに複雑な設計をしている。

昨季のオートクチュールコレクションではロボットのベビー人形をランウェイに送り出し、インスタグラムを大いに賑わせたローズベリーは、“ネットお騒がせ”という評判を払拭したいと語る。しかし、何を言おう、彼が率いているのはあのスキャパレリだ。創始者のエルザがかつて作った有名なハットにちなんだ、ハイヒールを模したカップのデュシェスシルク製ビスチェドレスもあれば、首もとにバラの花が咲く、ネイキッドドレスを再定義するかのような、かつてないほどの肌見せのシアーな1着もある。身体を称えた今回のコレクションにも、シュルレアリズムに根付いたレガシーを持つメゾンの斜め上を行く発想は、図らずも滲み出てしまうようだ。

※スキャパレリ 2024-25年秋冬オートクチュールコレクションをすべて見る。

Text: Nicole Phelps Adaptation: Anzu Kawano

From VOGUE.COM

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