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万城目学の直木賞受賞シリーズ第2弾!日本史最大の謎「本能寺の変」に挑む、奇妙な感動作

  • 2024.6.24
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ダ・ヴィンチWeb
『六月のぶりぶりぎっちょう』(万城目学/文藝春秋)

「本当にあるかもよ。ここ、京都だし」。ふと、万城目学の直木賞受賞作『八月の御所グラウンド』(万城目学/文藝春秋)のセリフを思い出した。あの本を読んだ時のような感動を再び、しかも、こんなにもすぐに味わうことができるだなんて、これほど嬉しいことはない。京都は、やっぱり何が起きたって不思議ではない街だ。奇想天外、摩訶不思議。鬼が出るか蛇が出るかと思えば、ぬっと現れるのは、すでにこの世を去っているはずの偉人。京都の街を舞台とした、生者と死者との邂逅、交流。ドキドキさせられる展開に手に汗握りながら読み進めれば、ジーンとくるラストが待ち受けている。

『六月のぶりぶりぎっちょう』(万城目学/文藝春秋)は、『八月の御所グラウンド』に続く、新・古都シリーズ第2弾。2つの物語が収められたこの本では、前作同様、生きる者と死せる者の幻のような出会いが描かれている。しかも、登場するのは、日本史オタクが大好きなあの歴史上の人物。興奮させられっぱなし、魅了させられっぱなしの1冊だ。

たとえば、表題作は、「本能寺の変」の謎に迫る物語だ。信長が生きていた安土桃山時代に、子どもたちの間で流行った遊び「ぶりぶりぎっちょう」。その研究発表のために京都を訪れた日本史の女教員・滝川は、目が覚めると、見たことのない洋館にいた。突然聞こえた銃声と、うつぶせで倒れた男の遺体。殺された男の名は織田というらしい。「ボスが殺された」と嘆きながらも、「天下」というお宝の行方を追う美術品マフィアは、羽柴、徳川、明智など、「本能寺の変」の関係者と同じ名前。昨夜飲み過ぎたせいで滝川の記憶は朧げだが、道で会った易者に、彼女は酔いにまかせて「占いなんて信じない」「本能寺の変にまつわる真実が知りたい」などと絡みはしたけど、もしかして、これって……。

洋館というクローズドサークル、密室殺人、怪しげな支配人。ミステリー好きならば、そんな設定に惹きつけられない訳がないのに、そこに、万城目ワールドがフルボリュームで掛け合わされる。おまけに、「本能寺の変」といえば、それ自体が日本史における最大のミステリーだ。首謀者とされる明智光秀が詳細な記録を一切残さなかったため、なぜ謀反を起こしたのか、信長の何が不満だったのか、光秀を操っていた黒幕がいるのではないかなど、未だに謎が多い「本能寺の変」。滝川は、そんな歴史上の大事件と関係ありそうな洋館で、次々と不可解な出来事に巻き込まれていく。おかしな世界で巻き起こるおかしな出来事に、滝川同樣、私たちは、怒涛の勢いで飲み込まれる。そのあまりの勢いに「なんなんだこの展開は」とニヤニヤ。それなのに、読み終えた時には、「本当にこんな世界があればいいのに」と思わずにはいられなかった。

もうひとつの作品「三月の局騒ぎ」も同じだ。寮生のことを、女御にちなんで“にょご”、“にょご”が暮らす部屋を“局”と呼ぶ、独特な北白川女子寮には、14回生以上と噂される“お局様”がいるらしい。その正体とは一体……。平安時代好き必読。「ああ、私もこんな女子寮で暮らしてみたい」と思いながら、青春洛中女子寮ライフに静かな興奮を覚えた。

2作とも、夢を見ているようなフワフワとした感覚のまま読み進めていたはずなのに、読後、胸に残ったのは、確かな感動だった。珍妙な世界へと連れ出しつつ、それでも私たちの胸に染みる、この読み心地は、万城目作品ならではだ。あなたも、万城目の描く摩訶不思議な京都の街を是非とも覗き込んでみてほしい。覗き込んだら最後。あなたも、愉快で奇妙でちょっぴり切ない、万城目ワールドの虜になってしまうだろう。

文=アサトーミナミ

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