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コム デ ギャルソン・オム プリュスが奏でる、希望の詩。エリック・サティの『パラード』とともに【2025年 春夏メンズ速報】

  • 2024.6.24

今夜はまるで音楽祭のようだ。夏至を祝うために、パリのストリートはお祭りムードに包まれていた。今日最後のショーを経て帰路につくと、ポンヌフ橋の上ではヴァイオリニストの生演奏が、サン・ドニ通りではドラムンベース、セーヌ河沿いではタンゴと、さまざまな音楽が聞こえてきた。時間は午後9時半、街はまだ陽に照らされていた。

午後に発表されたコム デ ギャルソン・オム プリュスCOMME des GARÇONS HOMME PLUS)の2025年春夏ショーについて、川久保玲は恒例の手短なコメントの中で、「とても小さな光でもいいから、光を望みたい」と語っている。パリ中に響いていた音楽と光のつながりは、彼女のコレクションに宿された意思を表しているかのようだった。

賛否両論を呼んだバレエ作品、『パラード』の音楽とともに

今回、デザイナーがサウンドトラックに選んだのは、ロンドン交響楽団の演奏によるエリック・サティの『パラード』。セルゲイ・ディアギレフが主宰したバレエ団、バレエ・リュスが上演した同名の作品のために作曲されたもので、台本を手がけた作家ジャン・コクトーの強い要望により、タイプライターや銃、サイレンの音(ショーの最中、本物のサイレンの音が会場の外で鳴り響いた)といった現実音が盛り込まれている。パブロ・ピカソがキュビズム風にデザインした衣装は、その奇抜さから酷評されたりもした。

川久保玲が「The Hope of Light」と題したショーに話を戻そう。モデルたちはヘアクリップで作ったヘッドピースをつけ、キッズラブゲイト(KIDS LOVE GAITE)によるフリルのついた靴や、ナイキNIKE)とのコラボレーションによるピンクの「Sense 96 SP」を履いて登場した。ルックはというと、ピカソのそれほど過激ではなかったかもしれないが(目的も文脈も違うから)、時代を逸脱したデザインという点では、通じるものがある。

オープニングを飾った騎兵を想起させるコートは、ヒップにかかるほどまであしらわれたフリルが目を引いた。パンツの前にはホワイトのシアーファブリックが重なり合う。ラペルに配されたフリルはピエロの襟を思い起こさせ、カーニバルのような雰囲気を醸し出していた。

ブラックとピンクの間を行き来しながらルックは続く。ピンクのひだは黒のウールジャケットに縫い付けられては引き抜かれ、どこか傷ついた印象さえ与える。これらのジャケットは、ピンクのフリル付きショーツやファスナー付きブラックスキューバパンツとともにスタイリングされていた。

ペイズリー柄のスーツと縦にカラフルなストライプが入ったコーデュロイのロングベストはラディカルなもので、その大胆不敵さが視線を奪う。その後は、ブラックとピンクのセクションの続編として、ノットディテールで飾られたピンク一色のスーツもあった。

川久保玲が綴る、希望の詩

クロージングにかけて送り込まれたのは、透けたチュール素材で仕立てられたアウターウェアたち。なかにはファブリックが詰め込まれたり重ねられ、ボリュームのあるシルエットを描き出していた。ラストルックはラッフルこそないものの、オープニングルックを変形させたようなデザインで、メタリックやカラフルなドット柄のシルクジャカードがミックスされていた。

『パラード』の初演は1917年、最も暗い時のひとつだ。保守的な批評家たちはこの作品を嫌悪したが、なかには厳しい現実から逃れるための芸術的な解放のメカニズムだと考える者もいた。

詩人のギヨーム・アポリネールは、観客たちが手にしたプログラムノートに「『パラード』は一種の“シュルレアリスム”」だと記している。この言葉が後に、20世紀を代表する芸術思潮となったのは言うまでもない。音楽、動き、光、希望……今日ここで川久保怜が披露したコレクションは、メンズウェアというメディウムで綴られた詩のようだった。

※コム デ ギャルソン・オム プリュス 2025年春夏コレクションをすべて見る。

Text: Luke Leitch Adaptation: Motoko Fujita

From VOGUE.COM

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