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オウアーがアジア系移民の視点から再解釈する、クラシックなアメリカンファッション【若手デザイナー連載】

  • 2024.6.23
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デザイナーのジェレミー・ホーとピーター・フーが、オウアー(OUER)と名付けたレーベルの初コレクションを発表したのは今から2年前。そのデザインは瞬く間にニューヨークファッション通の間で熱視線を集めるようになり、なかでもラベンダーパープルの「Ditto」とバターイエローの「Beancurd」の2色で展開するふんわりとした「バブルシャツ」が話題を呼んだ。それはシンプルでありながら、独特の華やかさを宿した彼らのスタイルを象徴する一着だった。

話題の「バブルシャツ」。新シーズンでは、白い斜めのストライプが入ったポプリンジャカードでアップデートされた。
Generated image話題の「バブルシャツ」。新シーズンでは、白い斜めのストライプが入ったポプリンジャカードでアップデートされた。
中国の伝統的なベストとミリタリーのカーゴベストにヒントを得たルック。
Generated image中国の伝統的なベストとミリタリーのカーゴベストにヒントを得たルック。

「私たちは、自分たちの生い立ちをコレクションのインスピレーションにしてきました。ちょっとした土台となるように」と、フーはチャイナタウンのショールームから話し始める。出発点となったのは、アジア系をはじめ、移民たちが家族や社会からかけられる“期待”だったという。「“何か”を達成するために期待されることについて考えながら、デザインを始めたんです」。そうして生まれたのは、典型的なアメリカンファッションを独自に再解釈したもので、脱構築とも違う、新しいスタイルだった。フィールドジャケットやイブニングジャケットなど、どれもその原形を留めてはいるが、所々にオリジナリティあふれる装飾が施されている。

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ホーとフーが初めて出会ったのは、トロントのビジネススクールに通っていたときのことで、学年は1年違いだった。「ジェレミーと私は一流校に進学し、ホワイトカラーへの道を歩んでいました。でもそれが、自分たちには向いていないと気づいたんです。場違いだと感じたんですよね」とフーは振り返る。学位取得後、二人はニューヨークに移り、パーソンズ・スクール・オブ・デザインに入学した。「技術的なことを学べたので、とてもよかった」とフー。「(入学するまで)私たちは縫い方すら知らなかったから」

卒業後、フーはプロエンザ スクーラーPROENZA SCHOULER)、アレキサンダーワンALEXANDERWANG)、ティム コペンTIM COPPENS)などのブランドを渡り歩いた一方、ホーはオープニングセレモニー(OPENING CEREMONYやロバート ゲラー(ROBERT GELLER)、トム ブラウンTHOM BROWNE)で経験を積んだ。パンデミックが起こったとき、それは多くの駆け出しのデザイナーにとってそうであったように、彼らに必要な後押しをもたらしたそうだ。「この業界で10年近く働いているうちに、いつかは自分たちのブランドをやりたいと考えていましたから」

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二人は現在、年に一度というスローペースでコレクションを発表している。しかし、3作目となる2025年春夏コレクションでは、ベースボールTシャツのスリーブに繊細なシースルージャージーを重ねたり、ジップアップパーカセットアップにはボールガウンに使われるコットンとナイロンのフェイル素材を使ったりと、デザインの幅を大きく広げたようだ。

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ボタンダウンシャツのネックラインには三角形の「ポケット」が配され、襟をタックインできるユニークな工夫が仕掛けられている。こういった実験的なアプローチも、さりげないからこそうまく機能しているのだろう。

「私たちのデザインは、チノパン、ポロシャツ、パーカ、アーミージャケットなど、とてもクラシックでアメリカンなアイテムをベースにしているのですが、それらにさまざまな方法でひねりを加えています。なので、どれも見慣れたものでありながら、どこかリアルではないのです」とフーは説明する。彼らが一目置かれる理由は、他に類を見ない斬新なバランス感覚にあるのかもしれない。

Text: Laia Garcia-Furtado Adaptation: Motoko Fujita

From VOGUE.COM

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