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『古畑任三郎』史上最高の神回は? 全43話中、最高に面白い傑作(2)恐ろしすぎる…驚愕の大どんでん返しとは

  • 2024.6.23
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石坂浩二【getty Images】

三谷幸喜が脚本を手掛けた刑事ドラマ『古畑任三郎』が、放送開始30周年を迎えた。そこで今回は、これまで放送された全43話の中から、珠玉の神回を紹介。古畑が対峙した最強の犯人や事件が起きない異色回など、ドラマの魅力を余すことなく紹介する。第2回。(文・編集部)

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「今、甦る死」VS 堀部音弥(藤原竜也)天馬恭介(石坂浩二)
放送:2006年1月3日
演出:河野圭太
出演:田村正和、藤原竜也、西村雅彦、石井正則、小林隆、千葉哲也、立石涼子、吉田日出子、石坂浩二

【作品内容】

「堀部パン」を営む鬼切村きっての名家、堀部家では、15年前に当主の幾三が謎の失踪を遂げていた。そんな中、現当主で「堀部パン」社長の伍平がクマに襲われて急逝。急遽大吉(千葉哲也)が社長に就任することになる。しかし、弟で副社長の音弥(藤原竜也)は兄の社長就任が気に食わず、裏山売却をめぐって真っ向から対立する。

ある日音弥は、小学校の恩師で郷土資料館館長の天馬恭介(石坂浩二)から頼まれ、郷土資料館を整理している途中、小学生の自由研究で書いた「犯罪ノート」を発見。早速音弥は、書かれているトリックを実行に移す。

【注目ポイント】

2006年の正月に3夜連続で放送された『古畑任三郎ファイナル』。特に第2夜の「フェアな殺人者」は当時現役のメジャーリーガーだったイチローが犯人役として出演し、大きな話題を呼んだ。

しかし、脚本を担当した三谷幸喜が「『古畑任三郎』を書いてきた僕にしか書けない」と豪語したように、作品の完成度ではこの「今、甦る死」に軍配が上がるだろう。なぜなら本話、古畑シリーズの「お決まり」を華麗に裏切るようなギミックを仕掛けてあるからだ。

とはいえ本話、物語開始から1時間10分程度はあくまで「いつもの『古畑』」だ。というよりも、むしろ学生時代の思いつきをそのまま形にした音弥の犯行計画は全体的に杜撰で、あっという間に足がついてしまう。おそらく彼は全シリーズ通しても1、2を争う「弱い犯人」だろう。

ところが、ラスト30分で物語は驚愕の展開を見せる。犯人だったはずの音弥が、なんと自ら命を絶ってしまうのだ。あまりに突然の出来事に途方に暮れる古畑たち。しかし、ひょんなきっかけから、事件の真の黒幕が浮かび上がってくる。

一般的にミステリー作品は大きく2つのタイプに分類される。物語を探偵の目線から描いた「叙述ミステリー」と犯人の視点から描いた「倒叙ミステリー」だ。このうち本作は言うまでもなく後者に分類される。

しかし本話は、構造からして従来の『古畑任三郎』と大きく異なる。当初は音弥視点の「倒叙ミステリー」として物語が進むが、音弥の死をきっかけに視点が真犯人を追う古畑視点に切り替わり「叙述ミステリー」になるのだ。つまり本話は「叙述ミステリー」の中に「倒叙ミステリー」が組み込まれた形になっているというわけだ。

本話のすごさはそれだけではない。真犯人の存在を念頭に本話を見返すと、実は巧妙に伏線が張られていることや音弥が操られていたことがわかる。古畑自身解決編前に述べている通り、本話は見返すことで物語の意味ががらりと変わるのだ。

なお、本話には、殺人計画が書かれた「デスノート」や、「不気味な山村」や「わらべ唄」などの横溝正史作品といった、ゲストスターへのオマージュがふんだんに盛り込まれている。しかし、ラストになるとこういったモチーフも実はブラフ(こけおどし)だったことが明らかになってくる。本話の恐怖はあくまで1人の男に収斂していくのだ。

ラストでは、古畑の追求に真犯人が不敵な笑みを浮かべる。その笑みは、あどけなさが残っていた音弥のそれとは違ってどこまでも老獪だ。そして古畑も同じように微笑み返す。

「さっきの言葉は嘘ではないと言ってほしいな。これほど完璧な殺人の計画を…」
「私は知らない。でも、それでも犯人は捕まる」

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