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そう、夏の旅の始まりみたいで気分がいい。IN THE MOOD FOR SUMMER TRIP【風間ゆみえ連載】

  • 2024.6.23

人生はひとりひとりが主人公の物語が集まってでき上がっているでしょ、だからね……と瞳を煌めかせて旅の話をしてくれたゆみえさん。この夏をときめかせ、主人公になり得るふたつのアイテムをお届けします。

日常を旅するバッグ

大きなエルメスの『ボリード』は以前よりずいぶん軽くなり、シェイプはほんのり縦長に姿を変え、ラインのきいたショルダーストラップが身軽さを楽しませてくれている。薄着になる夏はアンバランスに大きなバッグが似合うし、大人の旅というより、いつでも飛び立てるような自由な旅のワクワクさせられる感じ、この『ボリード』はそれに似た感じだ。大きなバッグにたくさん詰め込めるのがいいわけではなくて、ただ包容力がいい。バッグの中にスペースがあればあるほどそこには一瞬先のワクワクが広がる。

バッグ¥2,222,000、ブラウス¥378,400、スカート¥504,900、キャスケット¥302,500、ピアス¥422,400、バングル¥299,200(全てエルメス/エルメスジャポン)

若いころの私の旅は、日数分のシチュエーションごとにフルスタイリングした服、合わせる靴、バッグ、積読本、普段活かせていない美容グッズを楽しもうと、グローブトロッターのスーツケースを膨らませて、さらに空のトロッターをもうひとつ、お買い物して増えた荷物を詰め込むために持ち、さらに増えればスーツケースを買い足すような、今考えるとめまいがするほど全てがずっしりと詰まった、荷物もスケジュールも盛りだくさんの旅だったように思う。
旅慣れていたせいか、全く苦ではないというどころか、旅の達成感を得るほど(笑)。
 
楽しみでしかなかったことにも、自分ごとながら微笑ましい… そして、今、私はドイツのベルリンにいてこの原稿を書いている。ゴールデンウィークに暇していないかと生存確認LINEが友人たちから届き、驚かれて、なぜかときめかれてもいる(笑)。
しばらく海外に出たい気分にはならないでいたのに、突然思い立っての旅。フランクフルト行きのチケットだけおさえたまま、ポルトガルへ行こうか? クロアチアへ行こうか……思い巡らせたまま、ベルリン行きのチケットとホテルの手配をしたのは出発の前々日。

できるだけミニマルに身軽さをファーストプライオリティに荷造りをしたこの旅は、国内の移動も考えて、久しぶりの旅に出かけたいであろうトロッターには内緒で(笑)リモワを選んだ。
大人になってから(自分基準)の旅はとにかく自由でのんびりだ。夕暮れといっても暮れるのが21時をまわったころではあるので18時あたりで風が心地よいテラスに出てオレンジワインを飲みふわふわと宙に浮いたベルリンの時間を味わう。
ミース・ファン・デル・ローエがデザインした美術館、王立図書館、ベルリンフィルハーモニーホール、シャルロッテンブルクパレス、ダーレム植物園あたりを候補にあげて出かけてみようと思っていたけれど、思いの外、足が向かず、全く予定していなかった動物園とアクアリウムにだけ行くことにした。
広い園内ではところどころに配置されたベンチに腰掛けて日向ぼっこをしたりして全く急ぐことのない幸せな時間を過ごした。
そう、夏の旅の始まりみたいで気分がいい。

夏の太陽のかけらみたいなピアス

大胆で大ぶりなフォルムが気分の今、ボッテガ・ヴェネタで見つけたピアスは退屈を奪うドラマティックさを備えている。いつもの私ではない、耳元を揺らすそのピアスが、夏にエスケープする私のアイデンティティとなる。夏が苦手だという私じゃない、新しい季節に愛される、太陽のかけらを手に入れた勇者(笑)のひとつの旅が始まるような刺激的な夏が待ち遠しい。この夏の恋を探しに旅をする。

ピアス¥228,800、トップス¥201,300、バッグ¥632,500(全てボッテガ・ヴェネタ/ボッテガ・ヴェネタ ジャパン)

photograph : DAEHYUN IM
hair & make-up: NOBUYUKI SHIOZAWA
[mod’s hair]

otona MUSE 2024年7月号より

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