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監督が語る『アンメット』が“特別なドラマ”になったワケ。Yuki Saitoインタビュー(2)クオリティの高い映像の秘密

  • 2024.6.23
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写真:武馬玲子
写真武馬玲子

―――『アンメット』はドラマでありながら映画のような映像だと各所で話題になっています。実際に映画用のカメラを使われているそうですが、このような撮影方法に至った経緯を教えていただけますか。

「まず、僕自身がこれまでドラマと並行して映画を撮ってきたことが大きいです。それに加えて大きいのが配信ですね。本作はNetflixで同日配信されていますが、Netflixのトップページでは、海外ドラマと同じ棚に並ぶわけじゃないですか。ご存知のとおり、例えば近年の韓国ドラマの映像は映画と遜色のないクオリティですよね。そうした作品と比べても見劣りしないような映像にしたかったんです」

―――カメラの機種を教えていただけますでしょうか。

「カメラは、ALEXA35という商業映画でも使用されているものを使っています。レンズは、高画質が得られるシネレンズを使っています」

―――個人的には第1話で、ミヤビが大きな扉を開けて奥の廊下に抜けていくショットを観てハッとしました。物語上では重要ではないカットなのですが、画面手前が暗くて、扉の奥が光に満ちている。陰影の表現が素晴らしくて、これまで観てきたドラマとは違う手触りを感じたんです。

「ありがとうございます。そこに関しては、技術チームが優秀であるということに尽きます。撮影監督のYohei Tateishiさんは、僕と同世代なのですが、それぞれアメリカで映像制作のノウハウを学んだという共通点があり、すぐにマインドを共有することができました。

照明の川邉隆之さんは映画『シン・ゴジラ』(2016)などを手がけ、日本アカデミー賞の受賞経験もあるレジェンド。最近だとNetflixの『First Love 初恋』(2022)でも照明を担当されています。映画や配信系の作品で丁寧に照明を当ててこられた方が、地上波ドラマに初めて挑戦した作品が『アンメット』なんです」

―――そうだったんですね…。制作陣の座組を知ると、本作の映像のクオリティの高さが腑に落ちます。

「あともう1つ、大きいのがグレーディング(※撮影後に映像の階調と色調を整える画像加工処理のこと)です。通常のドラマでは、テロップ入れの作業をするオンライン編集の際に、カラーコレクションという色味を調整する作業をします。

映画や配信系のドラマの場合は、撮影した素材をグレーディングで求める画調に仕上げていくという、フィルム撮影に似た工程で進められるんです。

今回はドラマだけどそれをちゃんとやりたいと思っていました。しっかりとした光を当て、それを確かな技術でカメラに収めて、グレーディングで仕上げる。そうした一本道を通してくれたことが、皆さんから評価をいただく結果に繋がったと思っています。

実は、さっき言ってもらった陰影についてですが、僕にとって“光と影”は『アンメット』の大きなテーマで、一番心掛けていたところでした。光があればそこに影もできる。それを随所で視覚化していったら『アンメット』という作品とマッチするのではないかと思ったんです」

―――そうでしたか。ただ単に美しい映像、高解像度の映像を求めているわけではなく、ドラマの主題にしっかりと結びついた表現を追求されたわけですね。

「はい。今回、ビジュアルについて好評いただけているのも、主題とリンクしていたのがとても大きいと思っています。例えば、前クールで僕が演出を担当した『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)のような作品では、こういう陰影をつけた撮り方は求められていませんし、そぐわない。『アンメット』という作品の題材に、光と影を扱う映画的なビジュアルが凄く合っていた。それが重要なポイントかなと思います」

―――今回のような挑戦はなぜ可能になったのでしょうか?

「僕自身、長くドラマ制作に携わっていますが、タイトなスケジュール進行に思うところもあり、自分が監督をやる時が来たら、根本的なところから変えてみたいという思いがずっとありました。

とはいえ、もちろん僕だけの力で挑戦が可能になったわけではありません。まず、米田孝プロデューサー、カンテレさんが、常にクリエイティブな面を第一優先に考えて動いてくれたこと、制作会社のMMJさんが各所と調整して、そのワークフローを可能にしてくれたことが大きい。

あともう1つ、今回のような挑戦が叶ったことに関しても、杉咲さんと若葉さんの存在が大きかった。というのも、2人は準備段階から『どういうカメラで撮るんですか?』と訊いてきたこともあって、どういうビジュアルになるのかすごく気にしていたんです。

おそらく杉咲さん、若葉くんの中でも、海外の作品に見劣りしないルックの作品にしたい、映像面でも従来のドラマとは違いを出したい、という思いがあったのでしょう。杉咲さんも言っている、若葉くんも求めている、やるしかないでしょう! と。一致団結できたのが大きかったですね」

(取材・文:あさかしき)

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