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タンチョウ暮らす日本最大の湿原がソーラーパネルの畑に…環境への影響は大丈夫?

  • 2024.6.21

貴重な生物が暮らす北海道の釧路湿原に今、大量のソーラーパネルが立ち並んでいます。
なぜ、こんなことに?釧路湿原の未来はどうなるのでしょうか?

視聴者からの疑問や悩みを調査するHBCのもんすけ調査隊にこんな疑問が寄せられました。

依頼者(ポンタさん・40代・釧路市)
「釧路湿原に、大量のソーラーパネルが設置されていますが、自然は大丈夫なのでしょうか?」

実は今、熊本県の阿蘇山で、斜面にソーラーパネルが立ち並んだり、奈良県の古墳で、周りをソーラーパネルが埋め尽くしたりするなど、環境に優しいはずのソーラーパネルが、自然を破壊し、景観を損ねていると問題になっています。

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古墳の周りを埋め尽くしたソーラーパネル(奈良県)ⒸGoogle

世界の湿地を保護する「ラムサール条約」にも登録されている釧路湿原は、国の特別天然記念物のタンチョウをはじめ、多くの貴重な野生生物が生息しており、4つの市町村にまたがる日本最大の湿原です。

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釧路市提供

その釧路湿原にも今、多くのソーラーパネルが並んでいるんです!

やってきたのは、北海道釧路市の隣にあるマチ、釧路町。
釧路湿原には、見渡す限りのソーラーパネルが設置されており、およそ360万平方メートルにも及ぶ広大な土地は、まるでソーラーパネルの畑のようです。

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黒っぽく見えるのはすべてソーラーパネル!

これだけ多くのソーラーパネルを設置して、自然環境に影響はないのでしょうか?

50年に渡り、釧路湿原の保全と再生に取り組んでいる釧路自然保護協会の神田房行会長に聞くと、このソーラーパネルの設置業者と話したことがあるといいます。

「大元は外国の資本が主で、お金がもうかればいいというようなスタンスが見えているので、ある種の怒りも覚える」## 釧路は最適!…一方環境はどうなる

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釧路湿原は日照時間が長く、土地が安くて平坦なので工事費用も抑えられます。
さらに、住宅街が近いため、送電網も整備されているので、ソーラーパネルの設置に最適だといいます。

そして、太陽光発電で作られた電気の多くは売電され、札幌などの大都市を始め、本州にも送られているのです。

今、釧路湿原周辺の市町村には、多くの事業者から問い合わせが殺到しています。

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もし、その問い合わせのあった場所にソーラーパネルが設置された場合、2年後の釧路湿原は、このような姿になると神田さんらはシミュレーションしています。

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2年後の釧路湿原のシミュレーション画像(釧路自然保護協会作成)

ソーラーパネルの設置予定地には、環境省のレッドリストで絶滅危惧種に指定されているキタサンショウウオの生息地や、特別天然記念物のタンチョウの営巣地や餌場があります。
貴重な生物が絶滅するのではないかと神田会長らは危惧しています。

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「再生可能エネルギーを推進することは大賛成だが、立派な自然があるのに、壊してまで太陽光発電所を作るのは、いかがなものかと」

さらに、野生生物への被害は釧路湿原周辺にも広がっていると指摘する人も。

日本野鳥の会釧路支部の黒澤信道支部長は野鳥への影響を心配しています。

「私たちが見たところ、レッドリストに載っている『オオジシギ』や『チュウヒ』が影響を受けている。工事以降確認できていない」

「土盛りをしてソーラーパネルを作ってしまうと、餌場にもならないし、営巣地にもならない。飛びながら餌を探す鳥は、目隠しになってしまう」

一方、太陽光発電所の事業者や役場にも話を聞きました。

環境影響への調査は継続 法律での許可も

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太陽光発電所の事業者はこう話します。

「建建設前に環境影響評価を実施し、建設後も環境影響に関する調査を定期的に継続しておりますが、いずれも環境に影響は出ていないとの結果が出ております」

さらに釧路町に実態を聞くと…

「聞いた話では、キタサンショウウオなどは適地へ移植をして、生態系を極力維持する姿勢を見せてもらっている。そうすると、なおさら町としても、法規制以外のものはなかなかできない」

実は、事業者に強い規制をかけられない現状があるといいます。

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国立公園でもある釧路湿原は、自然公園法によって規定されていますが、保護レベルによって大きく3段階に分かれており、民有地と公有地が混在しています。

つまり、普通地域の民有地では、必要な手続きを行えば法律的にソーラーパネルの設置が可能なのです。

法律で許可しているものを条例で規制することはできません。

さらに、国は温室効果ガス削減の取り組みを進め、2050年には実質ゼロを目指しています。

そのため釧路町でも、役場の駐車場にソーラーパネルを設置したり、家庭での再エネ機器の導入に補助金を出したりと、ゼロカーボンシティの実現に取り組んでいる現状があるのです。

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家庭での「再エネ機器」の導入を補助金で後押しをしている現状も

その一方で、HBCの取材後の5月15日、釧路町ではソーラーパネルを設置して欲しくない場所を示した地図を、“町からのお願い”としてHPに公表しました。

「ただこれも“お願いベース”にしかならないのが実態」と役場職員は話してくれました。

実はこの手法、別の自治体では意外と効果を発揮しているといいます。
それが、同じ道東の鶴居村です。

鶴居村では2022年1月から太陽光の条例を制定。
太陽光パネルを設置したい事業者が、村の窓口に来たときに「村として設置を控えて欲しい」と言えるようになりました。

太陽光発電所を設置して欲しくないエリアを公表した鶴居村では、工事の変更に応じる事業者も少なくないといいます。

もちろん素直に話を聞いてくれる事業者だけではありません。

釧路市環境管理係の佐々木敦史総括係長は「国が太陽光パネルの設置について、アクセルを踏み続けて推進してきたので、規制というブレーキも、しっかり実効性のある法令等の整備や仕組みを作ってほしい」と訴えます。

再生可能エネルギーの推進について、今一度立ち止まり、進め方を考え直す必要があるのではないでしょうか。

文:HBC報道部もんすけ調査隊
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年5月17日)の情報に基づきます。

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