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やらなければいけないことに追われ、悲しくても立ち止まる時間すらない。ある日突然夫を亡くした妻の体験談

  • 2024.6.21
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自分自身やパートナーが突然亡くなったときの手続きや相続について考えたことはあるだろうか。今元気に生きている人でも、明日突然亡くなることもある。『ある日突然オタクの夫が亡くなったら? 身近な人が亡くなった時にやるべきこと、起こること』(こさささこ/KADOKAWA)は、実際に夫が突然亡くなった作者・こさささこさんの体験が描かれた作品だ。本やDVD、グッズを集めているすべてのオタクはもちろん、身近な人が亡くなったときの手続きがわからない人にも読んでみてもらいたい。

作者の夫は家族が眠っている夜中に心筋梗塞を起こし、急性心不全で亡くなった。朝起こしにいったときには既に息がなく、手の施しようがなかったという。病院で息を引き取れば包括的にさまざまな手続きを進められるのだが、家での突然死となるとまずは警察の取り調べがはじまるらしい。事件性がなければ「死体検案書」か「死亡診断書」を作ることになり、葬儀や告別式、法要をはじめとしたさまざまな手続きがはじまっていく。

昨日まで笑い合っていた大切な家族が突然亡くなったことを直ぐに受け入れるのは難しい。しかし、感情の整理がつかなくても、亡くなった後の手続きを進めるしかないのだ。特に、2人の子どもがいる作者の場合、立ち止まるわけにはいかなかった。

手続き関係の対応が苦手な作者だったが、市役所の市民課に行き、保険や年金、児童手当などの手続きを行う必要があった。優しい役所の担当者のわかりやすいメモのおかげで、手続きを進めていく作者。そんな手続きの中で最もありがたかったのが「顔写真付きの身分証」だったという。運転免許証やパスポートなどの顔写真が付いた身分証は死後の手続きにも必須となるので、期限が有効なものを1枚は持っておきたい。

作者の夫は、中古ショップ巡りやオークションでグッズを買うことが好きなタイプのオタクだった。そのコレクションは多岐に渡り、子ども向けの作品から大人向けの作品までさまざまなジャンルのものが遺品として残されていたという。そんな故人の遺品をどうするかを考えるとき、選択肢は「捨てる」「売る」「寄贈する」の3つだった。夫が目をキラキラさせて楽しそうに集めていたことを思い出すと、コレクションを雑に手放すのはしのびないと感じた作者。すべてを捨てたり売ったりするのではなく、姉と兄に力を借りながらリストを作って寄贈先を探すことにした。

自分の趣味のグッズや本、DVDなどを家族の手で処分させることを想定して、日ごろから仕分けしておくべきなのだろう。特に配偶者や子どもがいるオタクは、本作を参考にしてコレクションの処分方法について考えておいてもらいたい。

作者は夫の突然の死を経験したことで、自分が突然死んでしまったときの備えをしている。大事な書類を管理するファイルを作り、わかりやすく整理していた。さらに、ある鞄にはパスワードの一覧表と頼れる人の一覧表を入れ、その存在をしっかり子どもに伝えてあるのだ。救急車の呼び方やスマホの緊急SOSの使い方なども子どもに教え、万が一のときに備えているという。死んでしまった人の人生はそれまででも残された人の人生は続いていくのだから、作者のように自分が死んだ後の準備をしておくべきなのだ。

人間は必ず死ぬ日が来る。それが明日なのか明後日なのかはわからない。だからこそ、日ごろから死んだ後のことも考えて、家族と一緒に話し合っておくべきなのだろう。本作には、ライターの山崎潤子さんによる死後に必要な手続きの手順解説も掲載されている。この1冊を読めば死についての準備ができるようになるので、ぜひ家族と一緒に読んでいつ訪れるかわからない死に備えてほしいと思う。

文=ネゴト/ 押入れの人

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