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夫婦生活のリアルとタブー。ごまかしきれなくなった公認不倫のほころび 『1122 いいふうふ』1~3話

  • 2024.6.21

渡辺ペコによる同名漫画が原作のドラマ『1122 いいふうふ』の配信が、Prime Videoでスタートした。主人公は、セックスレスで子どもがいない結婚7年目の仲良し夫婦・相原一子(高畑充希)と二也(岡田将生)。2人は円満な夫婦関係を継続するために不倫を公認する“婚外恋愛許可制”を選択する。第1話~3話では、夫婦間のごまかしきれなくなった様々なほころびが描かれる。

“婚外恋愛許可制”に一抹の寂しさを感じ始めた一子

夫婦とは自らの自由意志で選べる家族であると同時に、最も身近にいる他人とも言えるのかもしれない。第1話の冒頭で二也が言う「人んちのことは外からはわからないからね」が全てを物語っているように、結婚記念日をすっかり忘れてしまっている一子(高畑)に対して、その日をしっかり覚えており会社を休めるように事前に調整してくれるのが二也(岡田)だ。しかし、彼の方が不倫にお熱だったりする。

二也の不倫のきっかけは、セックスレス。その始まりは、一子からの拒否だった。二也からの誘いを断った際に、一子は「なくても良くない? セックスとか。家族なんだし」「家以外でなんとかできないかな?」と口走ってしまうのだ。一子には、二也の「心の折れる音」が聞こえたという。二也は、それから通い出した生け花教室で不倫相手の柏木美月(西野七瀬)と出会い、順調に愛を育んでいる。

自分に欲情してくれていた夫の目からその熱は冷め、別の人を捉えている。それでも“いい夫婦”は保てている。一子が望んだ通りの展開になったものの、話はそう単純ではない。

箱根の温泉に泊まった結婚記念日、自ら誘いをかけてみるも今度は二也から拒絶されてしまった一子は、そのブーメラン現象に大きく傷つき、これまで凪(なぎ)状態だと思っていた自身の性欲を自覚する。

きっと当初一子が二也に軽い気持ちで提案したのは、性欲のみを家庭の外で処理することだったのだろう。しかし嘘がつけず、そう器用ではない二也は、不倫相手の美月にがっつり恋愛感情を抱いている。

恋愛モード渦中にいる人特有のキラキラるんるんオーラがダダ漏れで、「家庭内に外の恋愛を持ち込まない」というルールを全く守れていない二也。しかし、一子は自分がそのきっかけを作ってしまった原因だという自覚があるからこそ、あくまで「ルールを破らないで」としか言えず、「嫉妬でもなければ、感情の問題でもない」などと自身に言い聞かせるかのように、物分かりがいいふりをしようと嘘を塗り重ねてしまう。夫婦って厄介だ。

セックスレスでもつながりがある相原夫婦の一方で

そもそも恋愛は多くの人にとって少なからず“非日常”であるのに対し、生活を共にする結婚は“日常”だ。日常はすぐに慣れてしまうのに対して、恋愛が持つ吸引力は爆発的だ。

だからこそ、夫婦の間にセックスがないからといってその関係が破綻(はたん)するものでもない。第2話では、幼少期から折り合いが悪い一子とその母親の間に入りケアする、潤滑油のような二也の姿が描かれた。

相原夫婦が一子の実家に帰省した夜、布団の上で一子の辛かった幼少期の思い出に耳を傾けながら、「一子ちゃんが辛くならない方法を考えよう。俺もいるし」「一子ちゃんは優しいよ。俺、よく知ってる」と言葉を重ねる二也の姿には、惚れた腫れたではない夫婦の絆が滲(にじ)む。これからもずっと一緒にいることを前提にした自然な発言に、一子も心底安堵(あんど)したことだろう。セックスこそ拒まれたって、パーソナルでいまだに傷口が痛むようなトラウマをしっかりと受け止めてくれ、寄り掛かれる二也という存在は、一子にとってやはり正真正銘のかけがえのないパートナーであり、夫婦なのだろう。

そして、こんなふうに相手にすんなり寄り添える二也だからこそ、美月が惹かれてしまうのも納得できる。

二也は、成長が遅れているという美月の息子も一緒に3人で外出しよう、と誘い、思いっきり公園で遊んでくれる。息子がぐずるのをあやすようにお願いしたって、我が子なのに「俺じゃ無理だよ」と平気で言い張るモラハラ気質の美月の夫・柏木志朗(高良健吾)とのコントラストが凄(すさ)まじい。「主婦はやることいっぱいでしょ」と当たり前に言える二也と、子育てを含む家のことは専業主婦である美月の担当だとパキリと役割分担する志朗。それに、志朗が、占いの先生に心酔する自身の母親の暴走さえ止めてくれないとなれば、そりゃあ美月が家庭外に救いを求めたくなるのも頷(うなず)ける。

暖色系のライトに包まれており2人向き合って食卓を囲む相原家に対して、柏木家では蛍光灯の光が鋭く差し何だか冷たさを感じさせるのも印象的だ。

常に変化し続ける夫婦と婚外恋愛のカタチ

しかし、そんな二也もまた善人だけでは終わらない。美月に「息子と3人で暮らせないか?」と荒唐無稽かもしれない質問をされて、正直“重い”と思ってしまう。美月が夫の赴任先のシンガポールに行くことが決まれば、どこかで安堵している自分を認める。

残酷な話ではあるが、セックスレスの問題1点ですれ違いが生じた相原夫婦と、そもそもかなり根深いところから認識のズレがあるだろう柏木夫婦では、二也と美月それぞれにとって婚外恋愛に求める要素やその比重は当然異なってくるものだろう。家庭内に一息つける瞬間さえないだろう美月。相原家の“公認不倫”は、盤石な家庭の上に成り立つもので、二也との関係は「お遊び程度」だと、自分の存在が軽んじられてしまっている気がしたに違いない。

最後のデートで美月に「夫婦再構築」を言い渡してしまう二也の姿は、一子の大学時代の友人・五代敦史(成田凌)のどこか軽薄で、だけれども人間臭く、情けないほど自分本位な姿と重なる。

一方、一子は自身の性欲や寂しさを埋め合わせるために女性用風俗の門を叩くが、本来の問題が解決していないままの状況下で得られた満足度の持続性はいかほどか。「性の部分はそれぞれ個人的なもの」「それぞれの性はそれぞれのもの」とは一子の言葉だが、最も身近にいるパートナーとそのすり合わせが出来なければ、一体誰とその話題を共にすればいいのだろうかという疑問が浮上してしまう。

3話最後に描かれる美月の衝撃的な行動が、図らずも相原夫婦にダイレクトにもう一度性に向き合うきっかけを与えることになりそうだ。ちょっぴり情けなくってそれぞれに自分勝手なところも否めない等身大の彼らは、どう関係を再構築していくのだろうか。

■佳香(かこ)のプロフィール
出版社勤務を経て、パラレルキャリアで兼業ライターに。映画・ドラマを中心に様々な媒体でエンタメ関連のコラム・インタビューを執筆中。 ビジネスメディアやフェムテック関連媒体でのインタビュー&執筆実績もあり。

■emma(絵馬)のプロフィール
福岡県出身。現在は大阪在住のイラストレーター&クリエイター。"変化を起こすトキメキ"をテーマにPOPなイラストを描いています。WEBサイト、ノベルティーグッズ、イベントロゴ、動画などでイラストを提供中。趣味は映画、ドラマ、アニメ、ミュージカルなど鑑賞に偏りがち。

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