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「ここに来ただけでも十分外出」ひきこもり支援を“メタバース”で 広がる仮想空間

  • 2024.6.20

家に引きこもっている人が、安心して出かけられる仮想空間を作ります。

思い思いに動き回るキャラクターたち…ここはインターネット上に作られた「仮想空間」=メタバースです。
自分の分身「アバター」を操って、ゲームやショッピング、アバター同士の交流もできます。

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一方、現実の世界では、家にひきこもったままの人が、札幌市内だけで約2万人いるとされています。
そこで札幌市がスタートしたのが、メタバースを舞台にした「ひきこもり支援」です。

札幌市精神保健福祉センターの菊田潤業務担当課長は、「孤立を防ぐことということがもっとも大事な目的。メタバースの中で全力でサポートしていきたい」と話します。

広がる「メタバース」の可能性とは。

札幌市のメタバース空間の運営にあたるのは、NPO法人「レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク」です。

理事長の田中敦さんは、自身もひきこもりだった経験を生かし、25年にわたって、不登校やひきこもりで悩む人たちを支援してきました。

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田中さんが支援にメタバースを活用しようと考えたのは、家にいながら、パソコンなどを使って、多くの人とコミュニケーションが取れる手軽さからです。

「やっぱり顔を出さなくてもいいし、ニックネームで入れるので、入室しやすい、敷居が低いっていうところが大きい」

参加した当事者からはこんな感想も。

「現実の世界ではなかなかしゃべれないが仮想空間ではしゃべれました」## 人と交流するきっかけを、どこかで求めている

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メタバース上で話を聞かせてくれた50代男性

メタバース上に作られた、たくさんの部屋。ひきこもりの当事者たちのアバターは自由に出入りして、ほかの当事者たちや、専門の相談員と会話をします。
話すのが苦手なら、文字入力でやりとりすることもできます。

約20年間、ひきこもりの生活をしている50代の男性に、メタバースを体験した感想を聞くことができました。

「どうしても外に出れば人と会わなければならない。私が少し苦手意識がありまして、なかなか馴染めない部分もあるもんですから、顔を出さないということもあって入りやすいような気はします」

そして、こうも話してくれました。

「人との交流するきっかけっていうのは、どこかで求めているというところはありますので…」

このメタバース空間は、毎月1回開かれる予定で、レター・ポスト・フレンド相談ネットワークのホームページで参加の申し込みができます。

NPO法人レター・ポスト・フレンド相談ネットワークの田中敦理事長はこう呼びかけます。

「もうメタバースに来ているだけも十分、外出してるということになる。安心して参加してくださいって伝えたい」

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札幌市では、会場で実際に対面で行う相談会と並行して、メタバースを通した「ひきこもり支援」を行っていくとのことです。

コミュニケーションに困難を抱えるのは、ひきこもりの人だけではありません。

NPO法人「ゆいネット北海道」理事の須田布美子弁護士はによると、LGBTの子どもたちと若者支援を進めている団体も、すでにメタバースを利用した“バーチャル居場所つくり”を始めています。

そうした空間を通じて、実際に顔を合わせて、なかなか会話することが難しい人たちと一緒に話をする機会を作り始めているんです。

「いまの若い世代は、SNSなどのオンライン上だけで知り合うことに抵抗感がない人が多いので、メタバースを使ったやり取りは、取り組みやすいのかもしれない」と須田弁護士は話していました。

また、北海道内では、メタバースを使ったさまざまな取り組みが始まっています。

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夕張メロンのテーマパークとして、JA夕張が開設したのはその名も「夕張メロンメタバース」です。
北海道内のJAでは初めてのメタバースということで話題になっています。

ブースに行くと、夕張メロンを買えるサイトに移動する仕掛けになっています。
ゆくゆくは全道、全国の農協をメタバースに集めて、物産展を開く計画も。

そして、メタバースは環境保護活動にも活用されています。

北海道内で減り続けている湿地の大切さを見直す環境会議「しめっちフォーラム」のシンポジウムをメタバース上で行った実績もあるんです。
実際の湿地に、足を運んだような気分になれるんですよ。

メタバース内で経済活動が行われている、と考えると、ライブを開いたり、モノを売ったり、「ビジネスチャンスが広がっている」という側面も。

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今後、さまざまな分野での広がりも期待できそうですが、注意点もあります。

仮想空間は、匿名性が高いところも多いという点。
そして…メタバース=仮想空間は“没入感”も強いので、今度はそうした空間にひきこもってしまう人が現れるのではないかという心配もあるかもしれません。

新しい取り組みが始まると、どうしても課題も見えてきますが、「居場所」となって、そこで救われている人がいると考えると、“大事な空間”のひとつであるとみんなで捉えていけるといいですね。

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年5月22日)の情報に基づきます。

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