インターネットを介して友人になる、ネットで結婚相手を探す、そんな人間関係の構築が当たり前になった現代。一方で「ネットでしかつながっていない相手を友達と呼べるのか?」と、ネットで友情が成立するのか否かに疑問・違和感を感じる人は少なくありません。
ネット上の人間関係を「友達」と認識する人たち
大辞泉によれば友達とは、「互いに心を許し合って、対等に交わっている人。一緒に遊んだりしゃべったりする親しい人」。この定義に当てはめるのであれば、従来のオフラインの世界だけでなくオンライン上で知り合い関係性を築いていた相手であっても「友達」と呼んで差し支えないように思われます。
昨今、ユーザー同士が最も知り合いやすく継続的な関係を結びやすいのはやはりSNS。
SNSやオンラインコミュニティーを通じて共通の趣味や関心事を共有し、ときには実生活に関する悩みを分かち合うなどして信頼関係を構築していっています。
世代が若くなるほど、例えば「……って友達が言ってた」などのフレーズが意味するところは、リアルの世界ではなくオンライン上の友人関係(「言う)も発話ではなく文字による投稿である可能性は十分に考えられます。
さらには、特にやり取りが頻繁な相手だけではなく相互フォローの人全員を「友達」と認識する場合もあるので、そうなれば「友達の人数は数千人」とカウントする人がいてもおかしくありません。
「ネットでの友情」を信じた人たちの話
ネット上での関係は、基本は文字ベース。声のやり取りや顔出しでの交流は多くありません。いずれにしてもモニター越し(スマホ越し)の関係を友情と呼べるのか?そう懐疑的になる考えは理解に難くありません。
しかし、対面での出会いと同じくらい深い絆が築かれることがあります。
ある女性は、オンライン上のプレーヤー数人とチームを組んでオンラインゲームを楽しんでいるうちに、彼らとの間に堅実な信頼関係が築かれていくのを感じたそう。オフ会を開催することになり、実際に会ってみるとさらに意気投合。数年にわたって今なおゲームのチームメンバー同士による交流が続いてるそうです。
またある男性は、10年以上前にブログのコメント欄で交流していた相手と、その後SNSを交換し、今でもオンライン上でつながり続けています。その10年のうちにお互いが就職活動を終え、結婚を経験しました。オフラインの場で実際に会いものの、互いの人生のライフイベントを喜び合い、親友の一人だと言い合える信頼関係を構築できたと言います。
このようにネット上の友情は、物理的な距離を超えて成立することがあり、その絆はオフラインでも続くことがあるのです。関わる年月が長くなると関係性も深まっていくのはリアルの友達と変わらないのかもしれません。
なお残る懸念 危険は決してゼロではない
気軽に知り合え、ときには長い付き合いとなったり、人生に影響を与える特別な存在になったりするネットの友情。情報通信技術の進歩が新たな人間関係の糸口をもたらしたを捉えれば、それを友情と呼ぶことに何ら齟齬(そご)はないのではないでしょうか。
しかしながら、ネット上での友情を築くには、いくつかの注意点があります。場合によっては大きなトラブルに発展することもあり、ネットの友情“否定派”がいなくならない根拠ともなっています。
まず、相手が本当に信頼できるかどうかをいかにして見極めるか。匿名性が高いネット上では、相手の正体や意図を見抜くのは容易ではありません。そのため、個人情報の取り扱いやプライバシーにかかわる話題には十分な注意を払う必要があります。
オンラインのコミュニケーションは基本的に文字がメインになるため、相手の表情や声のトーンを見逃しやすいという難点があります。誤解や意図しないトラブルを避けるためにも、コミュニケーションの明確化や配慮が求められます。
仮にSNS上で距離の縮められそうな相手に出会った場合、その人の過去の投稿をできるだけ古くまでさかのぼってチェックしてみるのがおすすめです。
別の誰かに誹謗中傷や罵詈(ばり)雑言を吐いていないか、著作権法に触れるような画像・動画を安易にアップしていないか、普段からの言葉遣いはどうかなど、使用歴の長いアカウントであるほどその人の人となりを知ることができます。
少しでもおかしいと感じたら、失礼のない振る舞いに留意しつつ距離を置く判断力も必要です。
※ ※ ※
ネットの関係イコール全て危険なものとされる時代は終わり、そこでの出会いが長きにわたる友情や生涯のパートナーにつながることが当たり前になった現代。だからこそ、自身の価値観やモラルに合う相手をこそ大切にすることが求められます。
(岩井なな)