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花の浮島・礼文島。「礼文林道〜8時間コース」をつなぐ最果ての島縦断旅へ

  • 2024.6.21

こんにちは!トラベルライターの土庄です。

日本最北に位置する離島「利尻島・礼文島」といえば、利尻島の利尻山(りしりさん、標高1,721m)が有名ですが、じつは礼文島にも素晴らしいハイキングスポットがそろっているのはご存知でしょうか。

その名も「礼文トレイルセブン」といい、島を縦断するように7つのコースが存在しています。緯度が高く、海岸沿いでも高山植物が見られる「礼文島」は、花の浮島とも呼ばれ、まさに最果ての別天地。

今回筆者は、レブンウスユキソウ群生地で有名な「礼文林道コース」と礼文トレイルセブンの中でもっとも難易度の高い「8時間コース」をつないで歩いてきました。

「国内にこれほど冒険心を解放できる場所があったのか!?」と感動した北限トレイルの様子をご紹介したいと思います。

港近くの宿から、島縦断のトレイルに挑む

日本最北の離島である「礼文島」。かつて礼文島まで飛行機で飛べた時代もありましたが、今は稚内・利尻島とつながるハートランドフェリーが唯一のアクセス手段となっています。

例年、夏季(6月1日〜9月30日)には新千歳空港〜利尻空港ではANA便が運行します。利尻島まで飛行機で飛んだのち、フェリーで礼文島へ入るのが王道です。

せっかく礼文島を訪れるなら、できるだけ長い距離を歩きたいと考えた筆者。そこで上記画像のようなルートをとることにしました。

香深港近くの宿「ペンションうーにー」を出発し、礼文林道コースと8時間コースを連続する約27kmの行程です。

そこで、ゴール近くの九種湖畔にある「ホテル礼文荘」に1泊し、翌日島内の路線バスで港に帰ってくることに。礼文島をほとんど縦断するアドベンチャーなルートです。

前日に宿泊した「ペンションうーにー」は、アットホームな家族経営のお宿。地元食材を使ったフルコースをいただけるほか、サービスも至れり尽くせりです。チェックアウト後も荷物を預かってくれるだけでなく、翌日港まで持ってきてくださったり、朝食の代わりにおにぎり弁当を早朝に作ってくださいました。

何より翌日が大潮(潮の満ち干の差が最も大きくなる)だったので、海岸沿いを歩く区間(宇遠内〜アナマ岩)が通行できるか心配だったのですが、おそらく大丈夫だろうということと、通過の際に気をつけるポイントを教えてくださったこともあり、本当に助かりました。

礼文林道を歩いてレブンウスユキソウ群生地へ

翌日、日の出前からスタート!まずは道道765号線を30分ほど歩いていきます。途中に礼文林道の入り口があるので、そこから本格的にトレッキング開始です。

なんということはない舗装路なのですが、振り返れば「利尻山(りしりさん、標高1,721m)」の姿が。まさに利尻富士という愛称に相応しい雄大な山容を望むことができました。

すれ違う人のいない早朝の最果ての地で、未知の自然のなかを進んでいく時間は、日常で忘れがちな冒険心を呼び覚ましてくれるようです。

しばらくは樹林帯歩きですが、標高200m前後の丘陵地帯まで登ってくると、礼文島の西海岸を見下ろすことができます。冷涼な気候と強い風の影響により、高い木々が生育できない厳しい環境は、最果ての風情たっぷり。

そんな礼文林道コースの目玉のひとつが「レブンウスユキソウ群生地」です。レブンウスユキソウとは、淡白色の葉を薄く積もった雪にたとえて名付けられた高山植物で、町花にも指定されている礼文島の固有種。

"花の浮島"という愛称をもつ礼文島。夏になると約300種類もの高山植物が咲くことで知られ、まさに花々の楽園。礼文林道コースや8時間コースの道中でも、多くの花を愛でることができます。

丘陵の道から限界集落・宇遠内港を目指して

レブンウスユキソウ群生地を過ぎたら、しばらく丘陵の道を進んでいきます。標高は200m前後と、東京の高尾山の半分にも満たない標高でありながら、どこまでもダイナミックな地形が展開する別世界。

時折湧き上がっては、みるみるうちに流れていく霧も印象的。まさに高山帯を彷彿とさせる情景に目を奪われました。

さらに30分ほど歩いて、礼文林道コースと8時間コースに分かれるT字分岐へ。次に目指すのは、礼文島西海岸のある限界集落・宇遠内(うえんない)です。

かつてニシン漁が全盛だった時代に栄えた集落ですが、車でアクセスできない場所にあるため、今では暮らす人はほとんどいません。野趣あふれるワイルドなコースには、前時代の記憶が現代まで息づいています。

歩いていると、よくこんな場所に道が開けたな……と感心するようなコースどり。樹林帯や巨石が立ちはだかる谷や沢を横切ったり、景色変化に富んでいます。

礼文トレイルセブンの他のコースはよく整備されていますが、8時間コースだけ"道なき道を行く"ような雰囲気が特徴です。海岸線まで下りたら、宇遠内の集落が見えて来ました。

多くの家屋は経年劣化が激しく人気(ひとけ)はありませんでしたが、集落の一角には立派な建物のトイレや、綺麗な休憩所が設けられ、浜辺では利尻ならぬ礼文昆布を干している漁師さんの姿も。

訪れる前は廃村かと勘違いしていましたが、そこには自然と人が共生し、トレッキング客を迎えてくれる独自の生活風景が広がっていました。

8時間コースのハイライト・西海岸を踏破

スタートから4時間ほど、宇遠内集落のベンチに座ってお弁当をいただくことに。まんまるとしたおにぎり2個に唐揚げとお惣菜。まだほのかに温もりがあり、手作りお弁当のありがたみを実感しました。

食事を終えたら、8時間コースのハイライトである海岸沿いの区間(宇遠内〜アナマ岩)を歩いていきます。

インターネットの情報では海岸すれすれを歩くというレポートがあったので心配していましたが、干潮のタイミングに合わせれば、大潮でも問題なく歩けました。

険しい海岸地形から流れ落ちる滝や、流木のアート作品を眺めながら、ひとつつひとつ海岸沿いの道をこなしていきます。道……というより、岩礁を歩いていくような印象です。

ひとつだけヒヤヒヤしたのがこちらの梯子ポイント。波打ち際がもう少し内側まで来ていたら、危なかったかもしれません。

とはいえ、こうしたポイントを避けようとして崖沿いを歩けば、落石や滑落の危険が上がってしまうので、この点も注意しておく必要があります。

細心の注意を払いながら、海岸沿い区間の終わりである「アナマ岩」へ到着。ここから沢を横切り、標高を上げて山を歩くコースに戻っていきます。

野趣ある最果てのトレイル。海から再び山へ

アナマ岩を過ぎると、急激に標高が上がります。息つく暇もなく体力勝負の区間。さすがは礼文トレイルセブンの最難関コースです。

しかし同時に、花の浮島・礼文島らしい高山植物との出会いも待っています。エゾオグルマや、ハマベンケイソウ、ハマナスなど色彩豊かな花のオンパレード。

急激に標高を上げることは、つまり景色も開けていくということ。高台から見下ろすと、先ほど進んできた礼文島西海岸を一望することができました。

「この海岸線を身体一つで進んできたのか!?」-----その事実を思わず疑ってしまうほど、圧倒的なスケールで展開する自然。一般のルートでここまでアドベンチャーなトレイルが楽しめる場所は、礼文島をおいてほかにないかもしれません。

あとはひたすら樹林帯を行く林道を歩き、北へと進んでいきます。見所という見所はありませんが、電波も通っておらず、野趣あふれるコースの趣は健在!

そして同じく礼文トレイルセブンのひとつ・岬めぐりコースとの分岐にあたる西上泊分岐近くまでくると、島の最北にあるゴロタ岬を望むことができます。ラストの景色変化はドラマチックでした。

思い出の澄海岬にも。ホテル礼文荘へゴール

最後は木々が生えず、ひたすらに丘陵が広がる礼文島らしいフィールドが続いていきます。

振り返ればフェリーターミナル近くの宿にはじまり、林道・限界集落・海岸線・山まで礼文島のさまざまな表情がみられたコースでした。

せっかく島の北側まできたので、少し足をのばして岬めぐりコースの「澄海(すかい)岬」へ立ち寄ることに。じつは澄海岬は、筆者が小学6年生の時に、家族で行った北海道旅行でも巡った場所でもあります。

こんなかたちで父と二人で改めて訪れるなんて、思ってもみませんでした。人生と旅はどこでつながるか分からないですね!

ゴールの「ホテル礼文荘」では、広々とした大浴場で疲れた身体を癒し、礼文島ならではの海の幸をいただいて、大冒険を終えた1日を振り返りました。

小学生の時に訪れた礼文島という場所に、またひとつかけがえのない思い出が加わった今回のロングトレイル。

いつかまた人生の節目で歩いてみたい!そう思える素晴らしい時間でした。

飽くなき大冒険が待つ!最果ての礼文島トレイル

今回は礼文トレイルセブンのうち、2つのコースをつないだ島縦断トレイルをご紹介しました。

やや玄人向きの内容ですが、他にも利尻富士のパノラマが楽しめる「桃岩展望コース」や、スコトン岬や澄海(スカイ)岬をめぐる「岬めぐりコース」など名物トレイルが目白押しです。

冒険心をくすぐる大自然が待っている礼文島。ぜひ滞在日数を確保して訪れてみてくださいね。

All photos by Yuhei Tonosho

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