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森永卓郎さんに聞いた!小学生にお金の授業をするなら、何を教える?/モリタクさんの「お金の話」もりだくさん!⑨

  • 2024.6.20
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Q.小学生にお金の授業をすると仮定して、どのようなことを一番に教えますか?(NT、30代、教師、男性)ダ・ヴィンチWeb

少し意外に思われるかもしれませんが、私が子供たちに一番伝えたいことは、「お金が増えることはない」ということです。あらゆる経済評論家や、最近では政府までが「貯蓄から投資へ」の掛け声のもと、生活を豊かにするために投資をすべきだと主張しています。しかし、社会全体のお金が、自動的に増えていくということはないのです。

まず、お金とは一体何かを考えてみましょう。1万円札の製造原価は、20円と言われています。なぜ20円の紙切れが1万円の価値を持つのでしょうか。「皆が1万円の価値があると信じているから」という解説もありますが、それは間違っています。日銀が1万円札を発行するときは、何かを買って、代金として1万円札を支払います。買うものは、株式とか不動産の場合もありますが、大部分は国債です。つまり、1万円札には、国債という裏付けがあるのです。

では、国債の役割は何でしょうか。例えば、政府は国債発行で得た1万円を使って、新しい道路を作ります。機材の費用などを無視すると、道路を作る労働者は、その1万円を賃金として受け取ります。道路建設に従事しなければ、他で働いて賃金を得られるので、当然のことです。道路が完成すると、道路の利用者は移動時間の短縮などのメリットが得られるので、毎年1000円、10年間といった形で利用料を払います。現実には、高速道路を除くと、利用者一人ひとりの利用量を確定するのがむずかしいので、税金という形で、国民全体で支払います。道路の完成後、道路利用者は、税金の分だけ所得が減りますから、その分、余分に働かないといけなくなります。つまり、お金の裏側には、常にお金の価値を支える労働があり、それが自動的に増えることはないのです。詳しいことは、田内学『お金のむこうに人がいる』という本に詳しく書いてありますので、是非お読みになってください。

「そんなことを言うけれど、現実にアメリカの株式市場全体に投資したら、この数十年で年平均7%もの勢いでお金が増えているじゃないか」と思われるかもしれません。私は、そのことには2つ理由があると考えています。

一つは、株式を上場している企業は、経済全体の代表ではないということです。彼らは、大企業であることが多く、下請けの中小企業や非正規労働者から収奪することで、利益を拡大してきました。上場企業は弱い者の犠牲のもとに利益を拡大し続けることができたのです。

二つ目の理由はバブルです。いまの高株価は、企業の価値に裏付けられたものではなく、「皆が値上がりすると思うから、値上がりする」という根拠なき熱狂に支えられています。ただ、許容できないほどの格差やバブルは、いずれ必ず崩壊します。私は、近い将来、世界の株価が突然10分の1以下になっても、何の不思議もないと考えています。そこで初めて「お金は増えない」ということが認識されるのです。

ですから子供たちに一番伝えたいことは、「投資でお金を増やす」なんてことを考えてはいけないということです。それが分かっていれば、投資詐欺にひっかかることもありません。お金を増やす唯一の手段は、働くことなのです。

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