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定年目前では遅すぎる…80代現役実業家が50歳を超えたら絶対すべしという自分の価値を知るたった一つの行為

  • 2024.6.20

定年後も働くために、日頃からするべきことは何か。82歳で起業した実業家の松本徹三さんは「50歳を超えたら、毎年『履歴書』を書き足しながら、自分と仕事の関係を見つめ直すことは極めて大切なことだ」という――。

※本稿は、松本徹三『仕事が好きで何が悪い! 生涯現役で最高に楽しく働く方法』 (朝日新書)の一部を再編集したものです。

履歴書を書く手
※写真はイメージです
日頃から用意する履歴書のポイント

さて、50歳を超えたら、少しこれまでの「生き方」を変えることを考えるべきではないかと、皆さんを散々煽りましたが、そのためには「日頃からの準備」を怠らないことも必要なのはもちろんです。

それは自分自身の能力と意欲を正しく認識し、あなたを雇ったり、あなたと契約したりして、一緒に仕事をすることを考えてくれるかもしれない人に対して、あなた自身を正しくアピールするための資料を、日頃からきちんと用意しておくことです。

これは、具体的には「履歴書」のことです。ただし、普通の日本の「履歴書」は、「学歴」と「職歴」に分けて、所属した学校や会社の名前、会社の中での所属部署や役職などを年月日順に列記したものですが、諸外国ではこんなものではクソの役にも立ちません。

会社名や所属部署や役職の記載は必要ですが、そこでどんな「仕事」をし、どのような「成果」をあげたかの具体的な記載がなければ、意味がある記載だと認めてもらえないのです。

それ以前に、「自分はどんな人間で、何がしたいか」ということを、まず冒頭に自分の言葉で明確に記載することが、欧米の履歴書ではかなり頻繁に行われています。求人側から見れば、それがまずは一番に知りたいことだからです。

誰もが履歴書を引き出しに入れている米国

日本では、自分で自分を「売り込む」などといった「はしたない」ことはしてはならない(誰かがちゃんと見てくれているはずだから、自分はじっとしていれば良い)といった考えが、長い間ずっと支配的でしたが、もうそんな「世界標準から見れば異様な考え」は捨てるべきです。

典型的なこれまでの日本の「会社員」は、「次は自分はどんなところに回されるのかなあ?(会社は自分をどう使うのかなあ?)」と考えるのが普通だったようです。「すべては会社が決めること(自分はそれに従うしかない)」というわけです。

そこには「自分はどうしてもこういうことをやってみたい(そのためにはどうすれば良いのかな?)」という発想はほとんどありませんでした。それはそれで気楽だったかもしれませんが、あまりにも主体性がなく、少し残念な気がします。

これに対し、米国などの多くの国の「会社員」は、ほとんど誰でもが、いつも自分の「履歴書」を机の引き出しの中に入れています。いつ突然クビになるかもしれないし(もちろんかなり手厚い退職金は支払われますが)、自分の方でも常に「より良い勤め先がないか」と考えているからです。

履歴書でわかる自分の市場価値

現在の日本の多くの会社員は、自分がする仕事については、ほとんど会社任せで、自分の意欲や希望を表に出すことを極力控えていることが多いようです。そして、このような姿勢を「忠誠心の証し」と受け止め、高く評価する向きもないではないようです。

しかし、私なら、この様な姿勢は「積極性の欠如」と受け止めます。

現在の日本人の多くにみられる「言い訳症候群」または「何でも人のせいにする症候群」とも呼ぶべき傾向は、このような姿勢と表裏一体のものではないかとさえ、私は思うのです。

その意味で、たとえあなたに、今勤めている会社を突然クビになる可能性など全く考えられず、また自ら「転職」を考えるつもりも毛頭なかったとして、このような「履歴書」を書いてみて、毎年それを少しずつ書き足しながら、自分自身と「自分の仕事」との関係を見つめ直してみることは、あなた自身にとって極めて大切なことだと、私は思います。

そうしてみると、「とどのつまり、自分はナンボのものか」がよくわかるでしょう。

履歴書と想像の面接で未来を開く

こうして自分の履歴書を書いて、それをじっくり見つめていると、「今の職場はオレ様がいなくちゃあ回らないよな(だからオレ様はもっと高く売れてもいいよな)」と自信を深めることも、場合によってあるかもしれませんが、大抵は少しがっかりするケースの方が多いのではないでしょうか?

しかし、それを機会に、その「思った程たいしたものではなかった自分の価値」を、これからどうすればもっと高めることができるかを考えることになれば、それは素晴らしい進歩だと思います。

要言すれば、これまで「転職」などということを考えたこともなく、これからもそんなことはないだろうと考えている人であっても、無理にでもその可能性を考えて、先に申し上げたようなスタイルの「履歴書」を書いてみて、頭の中で面接の様子も想像してみることを、私は皆さんに是非お勧めしたいと思います。

それがきっかけになって、思わぬ未来が開けることも、あるいはあるかもしれないからです。

広々としたオフィス空間で手を広げるビジネスマン
※写真はイメージです
履歴書に必要な「スキルセット」とは

せっかく「履歴書」のことに言及したので、最後にもう一言付け加えましょう。比較的些細な問題ではありますが、「履歴書」には、「経歴」とは別に、いわゆる「スキルセット」の記載も必要です。

英語力なら英検何級とか、TOEICやTOEFLの点数ですし、パソコン関係なら、例えばマイクロソフトのMOSスペシャリスト資格とか、MOSエキスパート資格とか、色々あります。IQも「地頭の良さ」を示す一つの指標になりますし、AtCoderのアルゴリズム系のコンテストでのレイティング(色)は、高いプログラミング能力が求められる分野では、かなり実効的な指標となります。

何はともあれ、仕事に関係があろうがなかろうが、あなたが苦労して取得した色々な資格は、全てあなたの貴重な財産です。

その資格を取る過程で得た能力そのもの以上に、「興味を持ち、勉強し、そういう資格をとった」という事実(それをもたらした意欲)の方が、もっと意味があると言ってもいいでしょう。

こんなときはできるだけ手抜きせよ

実際には、「思い切って枠から飛び出す」などということは、そんなに容易なことではありませんから、この本を読んでくださっている50代の多くの方々からは、「それよりも、今すぐできる範囲内での『改善』の方法が何かあれば、それを聞きたいんですよね」という声が聞こえてきそうです。そういう声に対しては、やはりちゃんと答えておく必要があるでしょう。

真っ先に問われそうなのは、おそらく、「会社(上司)から求められた仕事が、全く無意味なものに思えた時の身の処し方」ではないでしょうか。しかし、これに対する対応策は至極簡単です。

ここだけは、「仕事に取り組む時に心がけるべき一般原則」を頭から無視して、何も考えずに、「できるだけ手抜きする」ことをお勧めします。それで十分だと思います。

もちろん、あなたの上司はあまり愉快そうな顔はしないでしょうし、嫌味の一言ぐらいは言われるかもしれませんが、それだけで済むでしょう。そのことが、あなたの将来の進路にまで、影響を与えるなどとはとても思えません。

なぜなら、あなたに求められたのは、要するに「どうでも良い仕事」だったからです。「無意味な仕事」の本質とは、要するにその程度のものなのです。

紙を両手で丸めるビジネスマン
※写真はイメージです
あらゆる問題の「軽重」を見極める

次に、「これまでのやり方があまりに不合理なので、やり方を少し変えてみたい」と、あなた自身が思った時はどうすれば良いのかという問題です。

松本徹三『仕事が好きで何が悪い! 生涯現役で最高に楽しく働く方法』(朝日新書)
松本徹三『仕事が好きで何が悪い! 生涯現役で最高に楽しく働く方法』(朝日新書)

これは、第一の問題とは正反対で、正解は「できるだけのことをする」です。

しかし、結果が思うに任せず、「骨折り損のくたびれもうけ」に終わったとしても、そんなにがっかりする必要はありません。思った以上に難しい仕事であることがわかれば、そこで断念しても、大きな問題ではありません。あらゆる問題には、常に「軽重」があります。

「何が何でもやり遂げる」とまで思い詰めるのは、とりわけ重要な問題だけに絞るべきです。そうしなければ、どこかで息切れしてしまいます。

しかし、この過程で、合理化の難しい理由が「組織」に起因することがわかった場合は、簡単には諦めるべきではありません。不適切な「組織」の問題は、あなたが直面した問題だけでなく、他の多くの問題も惹起する可能性が高いからです。

表と裏を使い分けるべき局面

この場合は、同じ組織上の矛盾が惹起している他の問題がないかをチェックして、もしそういう問題があることがわかれば、それで困っている人たちと連携して動くことを考えるべきです。あなたと同じような立場の(その多くは中間管理職のような立場でしょうが)人たちが、数多く集まって連携すれば、かなりの変革が可能になるでしょう。

会議などでも、あなたが言ったことにすぐに反応して「応援演説」をしてくれる人が一人でもいれば、それが大きな助けとなることを、あなたは何度か経験したはずです。固定され、閉ざされた組織の中では、「数」は間違いなく「力」なのです。

ミーティングをおこなう4人のビジネスパーソン
※写真はイメージです

最後に、「派閥」の類の争いに巻き込まれて去就に迷った場合。

これは議論の分かれるところですが、私の個人的なアドバイスは「表裏を使い分ける」ことです。すなわち、腹の中では、「どちらが正しいか」について、どんな時でも突き詰めて考え、自分の考えを明確にしておくべきですが、実際の行動にそれを反映させると失うものが多いと判断したなら、表面上は態度を曖昧にしておいても、一向に差し支えありません。

「正義感」の類は、本当に重要な局面でのみ、勇気を持って貫けば、それで十分です。

松本 徹三(まつもと・てつぞう)
実業家・作家
1939年、東京生まれ。京都大学法学部卒業。伊藤忠商事、クアルコム、ソフトバンクモバイルで通算51年間勤務。その後7年間は海外で仕事をした後、日本全国のレーダー施設で取得した海面情報を様々な需要家に提供するORNIS株式会社を82歳で創業。著書に『AIが神になる日 シンギュラリティーが人類を救う』(SBクリエイティブ)、『2022年 地軸大変動』(早川書房)など。

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