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<古畑任三郎>演劇人の三谷幸喜が舞台装置の殺人トリックで魅せた“堺正章”回

  • 2024.6.20
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「警部補・古畑任三郎」は、田村正和演じる主人公・古畑任三郎が、完全犯罪をもくろむ犯人たちの難解なトリックを卓越した推理力で解いていく、ミステリードラマの金字塔。フジテレビでは現在「ハッピーアワー」(毎週月曜~金曜第一部13:50~14:48、第二部14:48~15:45※関東ローカル)と題してドラマ「古畑任三郎」シリーズを放送中。さらに、FOD・TVerの無料公開でも見ることができる。犯人役の堺正章が歌舞伎役者を演じた第2話を紹介しよう。(以下、ネタバレが含まれます)

【写真】「古畑任三郎 第3シリーズ」(左から)石井正則、田村正和、西村まさ彦

再放送のたびにSNSが盛り上がる「古畑任三郎」

三谷幸喜脚本の「警部補・古畑任三郎」第1話が放送されたのは、今から30年前の1994年4月13日。毎話登場する犯人=豪華ゲストたちと古畑の対決が見どころで、再放送されるたびに作品のファンが感想をSNSに投稿し、その回の話題がトレンド入りするなど国民的人気を博すドラマである。2021年4月3日に亡くなった田村さんが、初めて刑事役を演じたのが「古畑任三郎」だ。抜群の推理力を持ちスマート、そしてお茶目なところもある唯一無二の警部補、古畑のキャラクターは、どの回をランダムで見ても楽しめるところも作品の良さのひとつだろう。

FOD・TVerでは「#ドラ活 浸れ、超自分的ドラマ生活。」が開催中で、「古畑任三郎」第1~3話は7月6日(土)まで無料公開されている。

歌舞伎役者の冷静さが失われていく第2話「動く死体」

第2話「動く死体」は、誤って殺した劇場の警備員を、舞台の天井から転落したように見せかけ、何食わぬ顔で捜査に協力する歌舞伎役者・中村右近(堺)の仮面を古畑(田村)がはいでいく。

菊座で「義経千本桜」を公演中の右近は、自分の楽屋で警備員の野崎(きたろう)を殺してしまう。野崎は右近のひき逃げを目撃し口止め料を受け取っていたが、それを返し警察にすべてを話すという。反対する右近ともみ合ううちに、野崎は倒れて頭を打って死んだ。舞台終了後、右近は死体を運び偽装工作をする。その後、部下の今泉(西村まさ彦)を連れて、古畑(田村)が登場。殺人を確信する古畑は、右近と接触するうちに次第に疑惑を深めていく。

舞台慣れした犯人が見落としていた“すっぽん”の動かし方

第1シリーズの第2話は、三谷幸喜が田村さんに古畑役をオファーする際、初めて見せたシナリオだという。田村さんは「台本を読んだとたん、これはと思いました。まずなぞ解きが面白い。構成が綿密で余分なものがないから、ぐーっと引きつけられるんです。普通の刑事ものだったら出てませんよ」(『読売新聞』1994年4月15日付け記事)と当時を語っている。

古畑の巧妙な推理と右近と大人同士のコミカルなやりとりが、絶妙なバランスで盛り込まれる第2話。右近が舞台裏から舞台上に遺体を運ぶのに、“すっぽん”と呼ばれる新しい舞台装置を使うのが殺人事件のカギとなる。人のいない閉演後の舞台は真っ暗だから警備員は懐中電灯を持っているはずであることや、普段“すっぽん”に乗る側の役者が装置の動かし方を把握しきれていないために犯人が詰めの甘さを見せてしまうなどの細かい描写は、演劇人の三谷ならではの視点が光る。

古畑が犯人を追い込んでいくさまが実に面白い。冷静だった右近が、古畑のねちっこい捜査でみるみる余裕を失っていき「あの野郎…!」と苦虫を嚙み潰したような顔をするシーンは必見だ。

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