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[2]早期発見のためにも検診を!自覚症状が少ない卵巣のう腫の治療や予防方法について森女性クリニック院長の森先生に伺いました。

  • 2024.6.19
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意外と多い、卵巣のトラブル。
自覚症状のない場合は、放っておいても良いのでしょうか?
実際に治療となった場合は、どのようなことがおこなわれるのでしょうか?
今回は、卵巣のう腫の治療や予防について、森女性クリニックの森久仁子先生にお話を伺いました。

放っておいても大丈夫?治療は必要??

卵巣のう腫が大きくなると茎捻転や破裂を引きおこす可能性が高くなり、茎捻転や破裂がおきると高確率で緊急手術が必要になります。
卵巣のう腫の手術は通常はのう腫だけを摘出しますが、茎捻転がおきると卵巣周囲の血流が悪くなり、その部位の組織が徐々に壊死してしまいます。
放置して完全に壊死してしまうと、卵巣ごと摘出しなければならない場合もあります。

皮様のう腫の悪性転化(卵巣の悪性腫瘍に変わること)は40歳以上に多く、1~2%といわれています。
悪性転化に早めに気づくためには、定期的な検査をうけ、大きさや性状の変化をチェックする必要があります。
卵巣チョコレートのう腫を放置すると、子宮内膜症の増悪によりお腹の中の炎症や癒着が悪化し、月経ではなくても下腹部痛や腰痛がおきます。
のう腫がそれほど大きくなくても、重症な子宮内膜症の場合もあります。

子宮内膜症は20歳半ばから発症し、30歳前後が好発年齢であり、妊娠を希望する時期と重なります。
子宮内膜症の女性の30~50%が不妊症といわれており、必要に応じて治療しなければ不妊症のリスクが上昇します。
癒着が高度であれば、不妊治療の早期から体外受精が必要な場合もあります。
また卵巣チョコレートのう腫は、0.7%程度が癌化すると報告されています。
年齢の増加とともに、のう腫の大きさの増大とともに、癌化のリスクが高くなります。
卵巣チョコレートのう腫を放置し、10cm以上に大きくなると、リスクがさらに高くなります。

手術は必要?気になる治療方法について

漿液性のう腫、粘液性のう腫、皮様のう腫に対する治療薬はなく、症状がなければ治療をせずに定期的に検査をしながら様子を見ますが、症状がある場合や茎捻転や破裂がおきる可能性が高まる大きさであれば、手術を検討します。
手術後には卵管周囲の癒着や閉塞が起きることがあり、不妊症につながる可能性はあります。
しかし手術しないで妊娠した場合、妊娠中の茎捻転や破裂のリスクが高くなります。
このため術後の不妊症の可能性を考慮しても、6cm以上の卵巣のう腫であれば、妊娠前の手術が勧められます。

また皮様のう腫は術後に10~20%再発することがあるため、術後も定期的に検査を受けましょう。
卵巣チョコレートのう腫は子宮内膜症が原因で発生するため、ホルモン治療が有用です。
症状・年齢・妊娠希望の有無・のう腫の大きさ・悪性の可能性を考慮に入れ、治療を検討します。
薬の効果がない場合や、悪性が疑われる場合や、直ちに妊娠希望で不妊症の原因になりうる場合は、手術を検討します。

卵巣チョコレートのう腫の手術は、のう腫だけを摘出する方法と、子宮・両方の卵管と卵巣を摘出する根治手術(根本から完全に治す治療)がありますが、妊娠を希望される場合はのう腫だけ摘出する手術になります。
のう腫だけ摘出する手術の場合、術後再発する頻度が高く、子宮内膜症は不妊症の原因にもなることから、手術後も定期的な検査が必要になります。
現在は妊娠を希望しておらず、将来的に妊娠を望む場合は、再発を可能な限り防ぐために、手術後にホルモン療法をおこなう場合があります。
術後に治療をしない場合の再発率は34%であり、術後にホルモン剤を内服することにより、8%まで低下したという報告もあります。治療をするかどうかは、かかりつけ医と相談しましょう。

自覚症状が少ない卵巣のう腫。早期発見に大切なのは検診を受けること

卵巣のう腫は症状を伴いづらい疾患です。早期発見するためには、婦人科疾患のスクリーニングをかねて、年に1回程度を目安に経膣超音波検査を受けることをお勧めします。
経膣超音波検査はほとんど痛みがなく、その他の婦人科疾患を見つけることができます。
お腹が張るなどの症状は増悪しなければ見逃されてしまう症状であり、他の疾患でもしばしば見られるため、卵巣のう腫に特異的な症状ではありません。
このため、下腹部に違和感を感じながらも、婦人科を受診されないかたは多いです。
早期発見のため、下腹部の違和感が数週間続くようなら、婦人科を早めに受診しましょう。
月経痛や性交痛などの症状がある方は、卵巣チョコレートのう腫の原因である子宮内膜症の可能性があるため、婦人科で検査を受けてみましょう。

[執筆者]


森久仁子先生
産婦人科専門医、医学博士
大阪医科大学を卒業後、同大学産婦人科学講座に入局。
同大学産婦人科学講座助教、和歌山労災病院をへて、平成25年和歌山市に森女性クリニックを開院。
プライバシーに配慮したクリニックで、産婦人科としての枠組みだけではなく、女性医療の充実を目指すべく診療を行っている。

森女性クリニック
https://www.mori-ladies.com/

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