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“正しいテークバック”はどういう動き?「始動する前に…」と解説

  • 2024.6.19

2020-21年の賞金女王・稲見萌寧が昨年、復活優勝を成し遂げた要因のひとつに新コーチ・柳橋章徳の存在があった。

その柳橋が“ゴルフスイングの本質に迫る”チームを結成!

体やクラブの使い方の原理原則を追求し、個人の潜在的な能力の限界を突破(ブレイクスルー)するメソッドを毎月紹介しよう。

クラブを“引っぱる”動きで始動したい

“正しいテークバック”はどういう動き?「始動する前に…」と解説
【左画像】始動する前に左方向への準備動作がある【中画像】クラブを引っぱってバックスイングをスタート【右画像】このあたりまでスムーズに動けば始動は成功!

振り子運動の最初をイメージ

指でつまんで垂らしたクラブを右方向に大きく振り上げようとするときは、最初に左方向への小さな動きを作り、その反動を利用するのが自然でスムーズ。バックスイングでもこういった左への「予備動作」を取り入れたい

準備動作なしで、いきなり右方向に動かそうとすると、クラブを持っている手自体を持ち上げてしまう。

右方向へ振っていく準備動作が必要

――前回まではアドレスについてお話を聞いてきました。今回からは、いよいよスイングの動きの部分に入っていきたいと思います。

柳橋:では、スイングの“はじめの一歩”として、始動の話をしましょう。ゴルフは、テニスや野球のバッティングのように飛んできたボールに反応してスイングするのではなく、止まっているボールを打つために自分から動き出さなければなりません。ここに大きな難しさがあります。

山縣:ゼロからイチの動きはじめというのは、スポーツにおいてとても難易度の高い動きなんです。

安岡:始動にスムーズさを欠くと、以後のスイング全体がうまく動いてくれません。アマチュアでここを上手にできている人は少ないと思います。

――では「いい始動」とはどんな始動ですか?

柳橋:スムーズにクラブを引っぱれている始動というのが、ひとつの目安になると思います。厳密にいえば必須ではないのですが、切り返し以降、ダウンスイングでクラブを引っぱるためには、始動の段階から引っぱる動きができているほうが自然ですし簡単です。

――始動と切り返しの両方で「引っぱる」のですね。

安岡:もう1つは、左への動きでスタートすることですね。

――バックスイングは右方向への動きですが、始動はその反対ということですか?

安岡:右方向にバックスイングする準備動作としての左方向への動きが、スムーズな始動には不可決です。クラブをつまんで垂らし、これを振り子運動させてみてください。止まっている振り子を右方向に振り上げようとするとき、一度手元を左に動かしてクラブを小さく左に振り、その反動を使うのが自然だと思います。始動の瞬間にも、こういう準備動作が必要なんです。

柳橋:実際はごくごく小さな動きや体の内部での動き、ちょっとした重心の移動などで行なっているのでテレビカメラには映りにくい場合が多いですし、人によっては無意識の場合もあります。でもプロゴルファーはほぼ100パーセント、左方向の動きから始動していますよ。

始動直前の「フォワードプレス」が有効

左足に圧をかけつつ手元を左に押し込む
バックスイングの準備動作としては、始動前に手元を少し左に押し込むフォワードプレスが有効。ただし、手だけではなく、左足を踏んだり重心を少し左にシフトするような下半身の動きとセットで行ないたい。

フォワードプレスでスムーズに始動しよう

――左方向への動きがないままバックスイングを始動すると、どうなるのでしょうか?

安岡:さっきの振り子でたとえると、バックスイングでクラブを右方向に振り上げることができずに手元を右に持ち上げるような動きになってしまう。つまり「手打ち」になりがちです。また、スエーの原因にもなります。

山縣:本来、スムーズな体の動きには「作用反作用の法則」が働くんです。クラブを右に振り上げようと思ったら左側に力がかかっていないとバランスがとれない。右方向にジャンプするときは、右足で蹴るのではなく反対の左足に圧がかかりますよね。

――左体重でバックスイングするということですか?

山縣:ところがそうではないんです。ここがゴルフの難しいところでもあります。ゴルフスイングの場合はジャンプするのではなく、その場での動きですし、バックスイングでは腕やクラブといった重量が右に移動していくので、右に体重がかかるのは自然です。でも、このときに左足にもちゃんと圧がかかっていないとダメ。左の圧が抜けて全部右にシフトしてしまうのがゴルフでいうスエーなんです。

――なるほど。では始動時の左方向への動きとは、具体的にはどんなものなのでしょうか?

柳橋:ちょっと手元を左に押し込んでからバックスイングを開始する、いわゆる「フォワードプレス」が顕著な例です。このとき、手だけではなく、ほんの少しでいいので左足を踏むとか左に圧をかけるような下半身の動きもほしいですね。プロゴルファーが始動前に行なうワッグルや、足をパタパタしたり体をモジモジしているのも、こういった予備動作の一環です。

安岡:ワッグルやパタパタ・モジモジには「止まらない」という意味もあります。山縣さんが指摘したように「ゼロ→イチ」の動作は難しいので、どこかを動かし続けることで「ゼロ」にしない工夫も重要です。

柳橋:スムーズな始動を身につけるには、連続素振りがいちばん有効。左右に繰り返し、止まらずに素振りを続ける。この動きのなかにスムーズな始動のヒントがあるはずなので、自分にとって自然で動きやすいエッセンスを見つけてください。

左足の“圧”を必ず残して始動する

始動時に左足の圧を残しておくことが右方向への動きの反作用になる。お腹側の筋肉を意識しながら、左足の圧が抜けないようにバックスイングしていくことで、スエーを防ぎスムーズにバックスイングすることができる

左足を強く踏むというよりも、左ツマ先が外側を向くようなテンションを意識しておくと、圧が抜けずスムーズに動きやすい。

バックスイングで左の圧が抜けてしまうと、体全体が右に流れてしまう。スエーになりやすいので注意。

いかがでしたか? バックスイングの始動は左からはじめることを意識してみてくださいね。

安岡幸紀
●やすおか・ゆきのり/1988年生まれ、高知県出身。高知高校ゴルフ部で活躍。卒業後、指導者の道に進み、日本プロゴルフ協会のティーチングプロA級を取得。現在はCHEERS GOLFの代表を務め、柳橋らとともにゴルフの原理原則の研究を行なっている。

山縣竜治
●やまがた・りゅうじ/1982年生まれ、山口県出身。國學院大学の野球部で選手とコーチ業を兼任。運動学やチーム指導などを幅広く学び、トレーニング部門も自身の体を実験体に専門的に経験。現在はゴルフの解剖に力を入れ「太子堂やまがた整骨院」で総院長を勤める。

柳橋章徳
●やぎはし・あきのり/1985年生まれ、茨城県出身。最先端のスイングや理論を研究し、23年6月より稲見萌寧とコーチ契約を結び、1年3カ月ぶりの復活優勝に貢献したツアープロコーチ。YouTubeチャンネル「BREAKTHROUGH GOLF」でも上達に役立つ斬新な情報を発信中。

構成=鈴木康介
写真=田中宏幸
協力=GOLFOLIC中延店

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