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物語に溶け込む“変幻自在”の演技力に脱帽。SixTONES・松村北斗の出演作を見る特別な喜びとは? 【推しmovies】

  • 2024.6.19
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イラスト:大窪史乃

アーティストのみならず、ドラマ、映画、バラエティと多岐に渡る分野で存在感を発揮しているアイドルグループ・SixTONES。今回の【推しmovies】は、同グループのメンバーの1人である松村北斗にフォーカス。昨今、映画やドラマには欠かせない存在となった、松村の深みのある繊細な芝居と稀有な存在感に迫る。(文・柚月裕実)
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【著者プロフィール:柚月裕実】
エンタメ分野の編集/ライター。音楽メディア、エンタメ誌等で執筆中。コラムやレビュー、インタビュー取材をメインにライターと編集を行ったり来たり。SMAPをきっかけにアイドルを応援すること四半世紀超。コンサートをはじめ舞台、ドラマ、映画、バラエティ、ラジオ、YouTube…365日ウォッチしています。

イラスト:大窪史乃
イラスト大窪史乃

SixTONESとしての活動に加えて、ソロでは俳優として目覚ましい活躍をみせる松村北斗。

2021年放送のNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)で演じた雉真稔役をはじめ、直近ではアニメ映画『すずめの戸締まり』(2022)で声優に初挑戦。また2024年2月公開の映画『夜明けのすべて』ではパニック障害を患う青年を繊細に演じてみせた。6月14日から公開の大泉洋主演映画『ディア・ファミリー』にも名を連ねるなど、相次いで話題作に出演する。6月18日に29歳の誕生日を迎えた松村。いま改めて俳優としての魅力に注目してみたい。

キャリア初期の松村は、SixTONESの結成のきっかけとなったドラマ『私立バカレア高校』(日本テレビ系、2012)への出演をはじめ、『黒の女教師』(TBS系、2012)、『Piece』(日本テレビ系、2012)、ジェシー、田中樹と共にトリプル主演を務めた映画『バニラボーイ トゥモロー・イズ・アナザー・デイ』(2016年)と、当時の実年齢に近い学生役を多数演じてきた。いま改めて『黒の女教師』のクラスメイトの顔ぶれを見ると、現在も一線で活躍する俳優陣が多数名を連ねており、松村もその一人だ。

3世代のヒロインを描いた『カムカムエヴリバディ』で、松村は安子(上白石萌音)の初恋の相手でのちに夫となる雉真稔役を好演。SNSでは“稔ロス”という言葉が生まるほどの人気を博した。学生服からスーツ姿へとまとう衣服の変化にともない、時の流れと共に顔つきもキリっとさせるなど、非の打ち所がない好青年という難役を、この上ないほど説得力豊かに演じてみせた。

●物語に溶け込む…変幻自在の演技力

SixTONESとしてステージに立てば、ロックやアッパーチューンなどを華麗にパフォーマンス。ステージ映えする派手な衣装もスマートに着こなすファッショナブルな青年だが、こと芝居となると、また違った華やかさと魅力を放つ。

そして様々なジャンルの作品、それも現代ではない時代を描いた作品にも驚くほど馴染むのだ。

それが俳優だ、と言われればそれまでだが、変幻自在、透明感、どんな色にも染まり、物語に溶け込む…どう表現すべきか迷うほど、柔軟性やフラットさを持つ俳優だ。

原作、ドラマ共に圧倒的な人気を誇る劇場版『きのう何食べた?』(2021)に美容師・田渕剛役で出演した際もそう。ケンジこと矢吹賢二(内野聖陽)が働く美容室の同僚として、あたかもドラマシリーズから出演していたかのような自然な佇まいで物語に馴染んでいた。

存在感は確かにあるのだが、清々しい風が吹き込むような、“抜け感”をもたらす存在であるとも感じた。原作者やプロデューサーがここぞというタイミングで登場させたかったという肝入りの人気キャラへの抜擢。共演の内野からは芝居を教わったとも明かしていた(※)。

一方で、宗像草太役を演じたアニメ映画『すずめの戸締り』では、声優らしく抑揚をしっかりつけて、鑑賞した人の記憶にはアニメーションの色鮮やかなシーンと共に、きっと松村の声もはっきりと再現できるほどに刻まれているだろう。

好青年からクール、ミステリアス、クレバーな役まで演じ分けてきたが、映画『夜明けのすべて』では、これまでの作品とは一線を画す、繊細な役どころに挑戦した。背を少し丸めてとっつきにくい雰囲気を放つものの、実は病と戦う青年の役だ。内側に葛藤や焦り、恐怖などが重くのしかかる様子を、静かに深みのある芝居で魅せた。

●始まりと終わりで演じ分ける芝居

興行通信社発表の週末(2024年6月14日~16日)全国映画動員ランキングで初登場1位と好発進の映画『ディア・ファミリー』は、松村が長年のファンである大泉洋との共演が叶った作品だ。大泉をはじめとする主人公の家族の軌跡を描いた作品ではあるが、松村が演じる役柄もまた物語に欠かせない人物だ。

過去(1970年代)を舞台にした作品ではあるが、松村は作品世界に見事に馴染んでいた。また、登場シーンと終盤のシーンとでキャラクターの見え方に変化を付けることで年月の経過を上手く表現してみせた。

複数の作品が海外の映画祭へ出品され、高評価を得るなど、活躍の舞台は広がり続けており、俳優としてのこれまでの足取りが着実に実っていく姿は眩しく映る。

松村の出演作の魅力は、彼の芝居をたっぷりと観られる喜びはもちろん、様々な物語を通して「もし私だったら」「もしかしたら私も…」と、自分ごととして捉え、考える時間をもたらしてくれるところにある。

映画監督のインタビューを読むと、演出を通して俳優を“汚したい”という言葉を目にすることがある。今後、松村が30代、40代…と芝居を続けていく中で、きっとそんな風に名乗りをあげる人が現れる予感がする。

●オリジナリティ溢れるフリートーク

松村といえば、毎週土曜夜に放送の『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』(ニッポン放送/週替わり出演)でのフリートークも魅力だ。

様々な体験を、情景がありありと浮かぶ細かい描写と、オリジナリティ溢れる表現力、豊富な語彙力で臨場感たっぷりに語る。日常の出来事と並んで、作品にまつわるエピソードや裏話も語っており、出演作を別の角度から楽しむためのヒントを与えてくれる。

さて、松村は2024年7月期放送のドラマ『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)で、初のシングルファーザー役に挑戦する。学生役を演じていた頃を踏まえれば感慨深いものがあるが、20代ラストイヤーに突入した彼がどんな芝居を見せるのか、俳優として深みを増していくこれからが楽しみだ。

(文・柚月裕実)

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