王室の保養地で「持続可能な健康習慣」を
バンコクから車で南に3時間、タイ王室の夏の宮殿があるホアヒンに1995年にオープンしたこの老舗ウェルネスリゾートの名は「隠れ家」という意味を持つ。創設者はタイの元副首相も務めた人物で「すべての人にとって最も大切な財産は健康。滞在中だけでなく、一生続く健康的なライフスタイルの知識を伝えたい」と、自身の別荘の周辺の土地を買い取り、ライフワークとしてのホテルを開業した。
減量やマインドフルネスなど、個人の希望に合わせ、西洋と東洋の考え方を融合させた目標達成型プログラムを組んでいるのが特徴だ。約200余りのトリートメントやトレーニングメニューから、コンサルタントと相談しつつ、ライフスタイルや志向に合った計画をカスタムメイド。食生活やエクササイズのアドバイスも得られるので、帰宅後も健康習慣を継続しやすい。1日1種類のアクティビティと、目的別プログラムの施術、3食がインクルーシブ。2019年のリニューアル後、より一層力を入れるようになった食は、医食同源がテーマ。
自家農園からのオーガニック野菜や果物が中心で、動物性のものはごく少量だ。敷地内に水の浄化施設を造り、プラスチックの使用を抑えるなど、地球にも人にも優しく持続可能な、広い視野で捉えた健康を追求。ここには、心も満たされるウェルネス体験が待っている。
チバソム(Chiva-Som)
73/4-6 Soi Moo Baan Nong Kae, Phet Kasem Road Nong Kae, Hua Hin Prachuap Khiri Khan 77110 Thailand
www.chivasom.com
“何もない”ゆえの豊かさに気づく農村ステイ
よく食べ、よく生き、よく眠る。そんな人間の本質的な部分を大切にする、伝統的な暮らしの知恵と豊かさを、農村にホームステイしながら体感できるコミュニティ。チェンマイ郊外にあり、人々は主に自給自足で、近代化で失われつつある伝統文化を守るために、ヘルスツーリズムに力を入れている。ここでは、不調を緩和し、健康を促進するために行われてきた、ハーブやスパイス入りのオイルを使って行う温熱マッサージ「ヤムカン」や、ハーブボールを使った健康法が今も残る。
大地を耕し、植物という命を育てる。自然のサイクルと合わせた暮らしを送る人々と呼吸を合わせ、畑で野菜を収穫し、自然に触れるうちに、心と体が素直につながってゆく。人を惹きつけるような観光資源は何もないからこそ、何もないことの豊かさに気づかせてくれる。生きることのプロたちから学ぶ、本質的でホリスティックな健康体験を。
バーン・ライゴーンキン・コミュニティ(Ban Rai Kong Khing Community)
Ban Kong Khing Rd, Nong Kwai, Hang Dong District, Chiang Mai 50230 Thailand
www.facebook.com/banraikongkhing
「北方の薔薇」ランナー王国の暮らしを追体験
チェンマイを中心に13世紀に栄え、「百万の田」という名を冠した「ランナー王国」。稲作の原点とも言われるこの地で花開いた文化を感じるリゾートだ。優美なランナー様式で建てられたヴィラが立ち並び、テラスからは約50人もの庭師が手入れをする緑豊かな棚田を望める。
田植えや藍染め、水牛の水浴びなど、農村を中心とした当時の暮らしを感じる体験も豊富。リゾート内レストランでの食事はプラントベースのメニューも多く、魚醤の代わりにココナッツで作った調味料「ココナッツアミノ」を使った健康的なタイ料理の教室もある。私たちの暮らしを支えてきた稲作文化の原点に触れ、自然と調和した暮らしの、古くて新しい豊かさを実感する。
フォーシーズンズ リゾート チェンマイ(Four Seasons Resort Chiang Mai)
502 Moo 1, Mae Rim-Samoeng Old Road, Chiang Mai, 50180 Thailand
www.fourseasons.com/chiangmai
タイ版「料理の鉄人」が南の味をクールに表現
プーケットがある南部タイは、マレーシアに近く、マレー、インド、中国などさまざまな文化が流れ込む。万華鏡のように多様な文化と語るのは、プーケット出身で、タイ版「料理の鉄人」で優勝したスウィジャ・カンへーシェフ。店名は南部タイの方言で「美味しい」と「クール」という2つの意味を持つ。伝統的な家庭料理から自らのルーツを掘り下げた味と、地元アーティストの手による食器が生み出す洗練。独自の背景を持つ南部タイの食を2つの側面から総合的に表現する。
ロイ(Royd)
95/1 Dibuk Road, Talat Nuea, Phuket, 83000 Thailand
www.restaurantroyd.com
自然や地域と共生、美食の星が輝くリゾート
アマングループの創業者、エイドリアン・ゼッカとともに数々のアマンを立ち上げ、リゾート界のレジェンドとして知られる人物が、2004年に自らの理想を体現。もともとの生態系を守るため、建設後に、可能な限りそこにあった木を植え直し、本来500室が建設できる広さに、わずか39棟のヴィラのみという贅沢さ。生い茂る木々はプライバシーの確保にも役立っている。
メインダイニングの「PRU」は、プーケット初のミシュラン星付きレストランで、一つ星とグリーンスターの評価を受けている。「植えて、育て、理解する」の頭文字を取った店名通り、自家農園から収穫した野菜のみならず、伝統的な竹で醸造した酢の製法など、地元の文化を深く学び続けるオランダ人シェフ、ジミー・オフォーストが生み出す「コミュニティからフォークへ」をテーマにした料理に注目だ。また、体験型のアクティビティとして、地元の有名ローカルフードの店を巡るツアーなども提供し、コミュニティの人々とともに育つリゾートしての地位を確立している。
トリサラ(Trisara)
60/1 Moo 6, Srisoonthorn Road, Cherngtalay, Thalang,Phuket 83110, Thailand
trisara.com
Text: Kyoko Nakayama Editor: Yaka Matsumoto