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企業は大学の履修科目などちっともアテにしない…会社が学歴の高い人材を求めるバカバカしい理由

  • 2024.6.18

「勝ち組」「負け組」を超えた次元で、高齢者になっても実社会で困らないタイプはどういう人物か。80代で現役実業家の松本徹三さんは「常に冒険心があり、人見知りせず、決断が早い人であること」という――。

※本稿は、松本徹三『仕事が好きで何が悪い! 生涯現役で最高に楽しく働く方法』 (朝日新書)の一部を再編集したものです。

通勤風景
※写真はイメージです
あなたと会社は目標が一致しているか

あなたと会社の関係は、良好であればあるほどいいに決まっています。良好な関係とは、会社は(正確には「あなたの上司は」と言った方がいいでしょう)、あなたの働きぶりに満足しており、あなたは、会社が(正確には「あなたの上司が」)好きで、会社のあなたに対する待遇に満足しているということです。

また、あなたと会社の関係は、濃密であるほどいいでしょう。「あなたと会社の関係が濃密である」というのは「その目標とするところが一致している」ことを意味します。

目標とは、例えば「格好いい車を作る」とか、「どこにいても必ず快適に反応するスマホを売る」とか、「正確な天気予報を出す」とか「面白いテレビ番組を作る」とかです。

あなたが今やっている仕事が、たとえ直接にはほとんど無関係であっても、「それが回り回ってこういった目標の達成に繋がっていくのだ」ということが少しでも感じられていれば、それだけで十分だと思います。

関係が緊密なら、あなたと会社の一体感は高まり、それは必ず、あなたの毎日の幸福感に繋がるでしょう。

しかし、現実には、世の中はそんなに都合良くはできておらず、あなたと会社との関係は、あまり良好ではなかったり、ちっとも濃密ではなかったりします。

そんな時、あなたはきっと、「この会社にずっと勤めて、今のような生活をズルズル続けていて良いのだろうか」と思うでしょう。

会社の全てが好きになれなかったり、上司が心底腹立たしかったりした時には、この思いはさらに高まってくるはずです。

会社にうんざりしたらすべきこと

そんな時はどうすれば良いか? 私のアドバイスはいつも通り至極簡単明瞭です。

「泣き寝入り」以外のすべての選択肢を試すこと。

具体的には、生意気と思われるのを覚悟で「配置転換」を求めるとか、思い切って「転職」するとかです。

昔は、職を転々とする人は、「会社に対する忠誠心がない」従って「望ましくない」人物として、ネガティブに見られることが多かったのですが、今はそんなことはありません。

外国の会社がそうであるように、今は日本の会社の多くも、「毎年4月に一律に学卒を採用して、自社のやり方で、自社にとって都合のいい社員へと育てていく」という、日本独特の人事政策を転換しつつあります。

新しい事業が新しい職場を作り出し、そこに上手くハマる人材が必要になったのなら、社内だけでそういう人材を求めるのではなく、広く社外に門戸を開いた方がよいのは当然だからです。そして、今は、多くの「転職」がスムーズに行われるのを助ける「システムや企業」も、数多く存在しています。

多くの職場を渡り歩く人は、「忍耐力がない身勝手な人物」であるわけでは決してありません。

「常に上を目指している人」かもしれないし、「常に新しい挑戦をしたい人」かもしれません。冒険心があり、人見知りせず、決断が早い人であることは間違いありません。そして、こういう人は、高齢者になってもあまり困ることはないと思います。私が望むような「良い高齢者」の候補者は、こういう人たちの中に数多くいるような気がします。

世にいう「勝ち組」「負け組」とは

つい最近まで、あいつは「勝ち組」だとか、自分は「負け組」だ(こんな自分に誰がした)というような会話をしばしば耳にしました。そして、その多くは、私をいつも著しく不愉快にしました。

手を腰に当てた巨大なビジネスマンの足元にいる驚く小さなビジネスマン
※写真はイメージです

そもそも、人生は勝ったり負けたりするものではありません。「勝ち負け」ははっきりとした一つの「結果」ですが、人生は「結果」ではないし、誰にとってもいつまでもはっきりした評価のできないものです。

今生きていることの価値は、人それぞれが感じることであり、他人がとやかくいうものではありませんし、将来のことは誰もわかりません。

世にいう「勝ち組」とはどういう人たちでしょうか?

まず運よく「親ガチャ」に当たり、子供時代を不自由なく過ごし、良い塾にも通えて、大学受験がうまくいき、一流とみなされる大学が卒業できたので、結果として一流とみなされる会社や官公庁(昔と様変わりで最近は人気低迷ですが)に正規雇用で就職でき、年収が高く、会社が倒産するリスクも少ないので、望んだ結婚相手に受け入れられる可能性も高い。

これに対して「負け組」は全てに正反対で、色々な理由が重なって、就職できたのは先行きの怪しい企業だったり、親会社から見下される関連企業だったり、下請けのまた下請けの孫請けで糊口を凌ぐ零細企業だったり、果ては毎日理不尽がまかり通るブラック企業であったりします。

確かにこの差は大きいですね。しかし、これは勝ったか負けたかの問題ではなく、とりあえず、少し運が良かったか悪かったかだけの問題です。

学歴は生きる価値を高めない

世界で一番重要なのは、もちろん「自分」です。

「生きる価値」はもちろん自分で決めるものです。

人にとやかく言ってもらうのはご免被りましょう。ましてや、人のことを「負け組」などと呼んで蔑む連中など、眼中におく必要もありません。

まず「勝ち組」と「負け組」を分けたい人が一番重視するのは「学歴」のようですが、これは「生きる価値」を高める上では、多くの人が考えているほどの大きなファクターにはなりません。

なるほど、多くの企業では採用に関して学歴を重視します。ほとんどの企業では、採用した各人が大学で履修したことなどはほとんど当てにしていませんが、応募者が一流大学を卒業していれば、第一に「地頭は悪くないはず」という安心感があり、第二に、バカバカしい程の受験勉強にも耐えたということは「将来のことを考える常識を備え、忍耐力もある」という証左なので、安心して採用できるのです。

しかし、それだけのことです。あとは全て入社後の実績次第です。

キーエンス創業者は高卒だった

「仕事」が好きな人や、生きていく中で「仕事」というものを重視する人なら、誰しもが、自分が手がけた仕事である程度は大きな成果をあげたいでしょう。そして、仕事の成果は、全てではありませんが、かなり多くの場合金銭で評価されます。

ですから、話を簡単にするために敢えて言うなら、長者番付に載るような人は間違いなく仕事で大きな成果をあげた人です。そこで、フォーブスジャパンが公表した2023年版の「日本長者番付」を見てみましょう。

最終学歴が「高卒」の人が、何と上位50人中11人を占めているのです。この事実を「勝ち組・負け組」論者たちはどう説明するのでしょうか?

長者番付第1位のユニクロの柳井さんは、子供の頃はまあボンボンの部類で、大学も一流校の早稲田大学ですが、前出の第2位の滝崎武光さん(キーエンスの創業者)は、兵庫県立の尼崎工業高校卒です。

私は滝崎さんとは御面識はありませんが、話を聞くだけで頭の下がる思いです。彼は塾通いなどしたことはなく、工業高校を出て町工場に就職したのですから、「勝ち組・負け組」論者たちなら躊躇せず「負け組」に分類するでしょう。

しかし、この人は「正しい心」と「適切な判断力」を持ち、目の前にある仕事をすべて合理的に完璧にこなし、常に細やかに周囲に目を配り、常に上を目指し、創意工夫し、やるべきことをやり、やってはならないことをやらず、ついに世界に冠たるキーエンスを「自分がいなくても誰でも経営できる会社」へと育て上げたのです。

彼が「勝ち組」の中の「勝ち組」であることに、異論を唱える人がいるでしょうか?

老後の質で人生は逆転できる

勤め先に恵まれず(あるいは上司に恵まれず)、今はたまたま悲惨な生活を強いられている人たちに対しては、私は声を大にして言いたいと思います。

松本徹三『仕事が好きで何が悪い! 生涯現役で最高に楽しく働く方法』(朝日新書)
松本徹三『仕事が好きで何が悪い! 生涯現役で最高に楽しく働く方法』(朝日新書)

「あなたは決して『負け組』なんかじゃありません。世の中は急速に変わりつつありますし、もしかしたら思わぬ幸運が巡ってくるかもしれません。常に『正しい心』を持ち、全てを合理的に考え、機会があればいつでも俊敏に動けるように準備しておきましょう。そうすれば、老後の生活の質で『逆転』ということも十分あり得ます」

逆に「自分は勝ち組だな」と思って、少しいい気になっている人がいたら、私は忠告します。

「世の中は急速に変わりつつありますよ。今の状況がいつまでも続くとは思わない方が良いでしょう。しかも老後は長い。現在の状況の本質を見抜き、将来を予測し、原点に戻って、長い老後の生き方を考え始めておいた方がいいですよ」と。

手を掲げて喜ぶシニアビジネスマン
※写真はイメージです

若い時は「勢いに乗る」ことが必要です。目立ちたい気持ちや、虚栄心があるのも当然です。斬新なアイデアで一山当てて、思いもかけぬ大金を手にし、派手に使って経済を活性化してくれたら、私も率直に「偉いな。有難うさん」と称賛するのにやぶさかではありません。

でも、そういう人たちが「自分は勝ち組」などと嘯いて、普通に生きている人たちを馬鹿にしたら、私は少しムカつきます。

松本 徹三(まつもと・てつぞう)
実業家・作家
1939年、東京生まれ。京都大学法学部卒業。伊藤忠商事、クアルコム、ソフトバンクモバイルで通算51年間勤務。その後7年間は海外で仕事をした後、日本全国のレーダー施設で取得した海面情報を様々な需要家に提供するORNIS株式会社を82歳で創業。著書に『AIが神になる日 シンギュラリティーが人類を救う』(SBクリエイティブ)、『2022年 地軸大変動』(早川書房)など。

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