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スティングの娘、俳優エリオット・サムナーの持論──「芝居も音楽も表現方法が違うだけで、どちらも現実からの逃避行」【FAB FIVE】

  • 2024.6.17
Photo_ Max Farago
Photo: Max Farago

予測不能のプロットと美しいモノクロ映像が鮮やかな「リプリー」。エリオット・サムナーは、天才詐欺師を主役にしたパトリシア・ハイスミスの小説が原作のドラマに、フレディ役で出演している。これまで『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021)などの話題作に出演しているが、今作ほどの大役は初めてだ。「大勢の人たちがオーディションを受けていたので、自分はダメだと思っていました。ただ、頭の中でフレディが降臨し、彼の声が聞こえてきたので、勝手に台本とは違う英国人の設定でセリフを言ったところ、功を奏したのか役に決まりました」

撮影は1年かけてイタリアで行われた。「現場は学びの場としてみなさんの言葉に耳を傾けるようにしました」。スティーヴン・ザイリアン監督とは、「職場のお父さん」と呼ぶほど親睦を深めた。一方、実の父親はロック界の重鎮スティング。音楽の中で育ち、自身もミュージシャンとして活動するエリオットは俳優業をどう捉えているのか?「芝居も音楽も表現方法が違うだけで、どちらも現実からの逃避行という点では同じものだと思っています。人生で味わうさまざまな感情を探求し、それを表現することが許される場でもある。でも、やっぱり音楽は私の一部なので、何があっても永遠に音楽は作り続けると思います」

Photo_ Courtesy of Netflix © 2024
Photo: Courtesy of Netflix © 2024

今後は全編スウェーデン語で主演に挑んだ、ミステリードラマ「Vargasommar(狼の夏)」の配信も控える。「与えられたチャンスを大事にするだけです。いつか演じたいのは、好きな書籍に挙げた『A LittleLife』の、メンタルが不安定な主人公役ですね(笑)」

1. 最近ハマったドラマは?

Photo_ ©Showtime / Courtesy Everett Collection
Photo: ©Showtime / Courtesy Everett Collection

友人同士の会話では「今、何観てる?」と言うのが挨拶代わりになっているくらい、ドラマを観まくっていますが、最近ハマったのはエマ・ストーンやベニー・サフディが出演している「THECURSE /ザ・カース」というブラック・コメディです。もっと高く評価されていい一作だと思っています。

2. 成長するにあたり、最も影響を受けたアーティストは?

Photo_ Bob Berg / Getty Images
Photo: Bob Berg / Getty Images

今も昔も変わらずレディオヘッドの大ファンで、多大なる影響を受けてきました。実のところ、新しい音楽はあまり聴かず、レディオヘッドばかり繰り返し聴いています。それからマッシヴ・アタックとボーズ・オブ・カナダも好きですね。1990年代の音楽が好きなのは、6歳上の兄の影響です。

3. 「リプリー」は長きにわたり愛されているパトリシア・ハイスミスのサスペンスが原作ですが、あなたの記憶に長く残っている本は?

Photo_ A Little Life: A Novel Kindle Edition by Hanya Yanagihara
Photo: A Little Life: A Novel Kindle Edition by Hanya Yanagihara

2年前にハニヤ・ヤナギハラという作家の『A LittleLife(原題)』を読みましたが、未だに物語を思い出すだけで苦しい気持ちになり、悲嘆に暮れています(笑)。大学で出会った4人の青年が、卒業後ニューヨークでそれぞれの夢を追いかける友情と人生の葛藤の物語なのですが、主人公の男性はひどいトラウマを抱えている─。素晴らしい本なのですが、とにかく暗い気持ちになるので、人に勧める際は注意が必要です。

4. 衝撃のラストやひねりのあるプロットに驚かされた映画は?

Photo_ © Warner Brothers / Courtesy Everett Collection / HOW TO GET AHEAD IN ADVERTISING
Photo: © Warner Brothers / Courtesy Everett Collection / HOW TO GET AHEAD IN ADVERTISING

大好きな俳優リチャード・E・グラントが主演を務めている、『広告業界で成功する方法』(1989)。スランプに陥ったおできクリームの営業マンが、会社を辞めるのですが、ストレスのせいか肩に人面のおできができて、それが喋り出し大きくなり、やがて彼の人生を支配するという、バカバカしくもブラックなユーモアの効いた作品です。

5. 「リプリー」では、リプリーという人物を知るためにカラヴァッジョの絵画が効果的に使われています。あなたが心を掴まれたアーティストは?

Photo_ Luc Castel / Getty Images
Photo: Luc Castel / Getty Images

昨年パリで開催されていたマーク・ロスコの贅沢なまでの回顧展には心から感動しました。あそこまでロスコ作品が一堂に会することは、もう二度とないのではないでしょうか。それからスコットランドのアーティスト、ピーター・ドイグの作品も好きです。作品の色使いが、私の感傷的な部分を刺激してくるんです。音楽にしろ、映画にしろ、いくら他者の評価が低かったとしても、自分とどこかでつながる部分があれば、それがその人の中の傑作になる。アートとはそういうものだと思っています。

Text: Rieko Shibazaki Editor: Yaka Matsumoto

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