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「野菜や穀物を使っているから大丈夫」植物由来の超加工食品なら健康にいいのか?

  • 2024.6.17
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「元は野菜だから」は、やはり通じないかもしれない
「元は野菜だから」は、やはり通じないかもしれない / Credit:Canva

海外のホームステイ先で野菜を食べたいと言ったら、山盛りのフライドポテトが出てきた」というジョークを聞いたことがあるでしょうか?

これは、植物由来の食品だからといって、必ずしも健康上の利点があるとは言えないことを分かりやすく示した例です。

しかし、健康のためにと言って加糖された野菜ジュースを毎日飲むなど、似たような過ちは私たちもよくやってしまいます。

では野菜や果物を原料の1つにしている「超加工食品(過度に加工された食品)」は、普通の超加工食品に比べて健康へのリスクは減っているのでしょうか?

最近、ブラジルのサンパウロ大学(University of São Paulo)医学部に所属するフェルナンダ・ラウバー氏ら研究チームが行った研究では、特に植物由来の超加工食品に焦点を当て、それらを多く摂取する人の心血管疾患リスクについて調査しました。

この研究結果によると、「野菜や穀物が使われているから」という言い訳は、やはり通用しない可能性が高いようです。

この研究には、イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)も参加しています。

詳細は、2024年6月10日付の学術誌『Lancet Regional Health-Europe』に掲載されました。

目次

  • 超加工食品とは
  • 元は健康的な食材でも超加工食品は心血管疾患のリスクを高める

超加工食品とは

世界には様々な食料品が存在していますが、その中には超加工食品UPF:Ultra-processed food)と呼ばれるものがあります。

この超加工食品とは、過度に加工された食品のことです。

超加工食品は体に悪い
超加工食品は体に悪い / Credit:Canva

ブラジルのサンパウロ大学(USP)の研究者によって2009年に考案された「ノバ分類法」では、食品が加工の程度に応じて4つのグループに分けられており、超加工食品はその中で最も高度に加工されたグループに入ります。

例えば、ノバ分類法で分けられた食品には以下のものが該当します。

①非加工食品または最小加工食品。果物、野菜、穀物、豆、肉、卵、牛乳など。

②加工食品原料。オリーブオイル、塩、砂糖、でんぷん、ハチミツ。バターなど。

③加工食品。野菜や魚の缶詰、干物、パン、菓子、スナック、肉製品など。

④超加工食品。清涼飲料水、濃縮還元のフルーツジュース、代替肉、シリアル製品、食品添加物を含むパンやスナック、カップ麺、冷凍ピザなど。

超加工食品に分類される食品を見て分かる通り、これらの多くは、加工プロセスの中で自然食品に含まれる貴重な栄養素や食物繊維が失われています。

それだけでなく塩・砂糖・油・添加物が追加されることで、健康に悪影響を及ぼしやすいものとなっているのが特徴です。

そのため、健康を考えて、なるべく超加工食品を避けるよう意識している人も少なくありません。

しかし濃縮還元ジュースや朝食シリアルなど、「野菜や穀物だから」という理由で健康に良さそうなイメージを持ってしまう場合もあります。

今回、ラウバー氏ら研究チームは、そのような植物由来の超加工食品が私たちの健康にどのような影響を及ぼすのか調査しました。

元は健康的な食材でも超加工食品は心血管疾患のリスクを高める

今回の研究では、イギリスの長期大規模バイオバンク研究である「UKバイオバンク」のデータによって、約10年間追跡された11万8000件の成人のデータが使用されました。

その中には、参加者の食事、習慣、環境、健康および医療上のデータが含まれていました。

そしてこれらのデータを、加工食品の分類を示す「ノバ分類法」と共に、どのような関連性があるのか分析しました。

ちなみに、特に焦点が当てられたのは、「植物由来の超加工食品」であり、以下はその例です。

  • 工場で作られたパン、ケーキ、クラッカー、フライドポテト、ポテトチップス。
  • チョコレート菓子、シリアルバー、冷凍ピザ、マーガリン。
  • 朝食用シリアル、ソフトドリンク、フルーツジュース、低カロリードリンク。
  • ソース、ドレッシング、トマトケチャップ、サラダドレッシング、パスタソース。
  • 肉の代替品(ベジタリアンハンバーグや豆腐ミンチなど)。
植物由来の超加工食品を食べ過ぎると心血管疾患の発症リスクが高まる
植物由来の超加工食品を食べ過ぎると心血管疾患の発症リスクが高まる / Credit:Canva

そして分析の結果、植物由来の超加工食品でも、多く摂取する人ほど心臓病で死亡する確率が高くなると分かりました。

例えば、植物由来の超加工食品から摂取するカロリーが10%増加するごとに、心血管疾患を発症する確率が5%上昇しました。

その中でも特に、冠状動脈性心疾患(心筋に血液を供給する冠状動脈の血流が悪くなる病気)を発症する確率は6%も上昇していました。

一方で、過度に加工されていない植物由来の食品の摂取量が10%増加するごとに、冠状動脈性心疾患の発症リスクが8%低下し、これに由来する死亡リスクが20%も低下したと報告されています。

また「植物由来の超加工食品」を「植物由来の過度に加工されていない食品」に置き換えると、健康が改善され、心血管疾患の発症リスクが7%低下し、これに由来する死亡リスクが15%低下しました。

植物由来の超加工食品の例を見ると、それらが健康に悪いことは明らかなので、この結果は納得のいくものでしょう。

ラウバー氏も、「植物由来であるにもかかわらず、これらの食品はその成分や加工方法により、健康を悪化させる恐れがある」と結論付けています。

やはり、私たちの体に「植物由来だから」という強引な言い訳は通用しないようです。

やはり「元が野菜だから」は通じない
やはり「元が野菜だから」は通じない / Credit:Canva

とはいえ今回の研究やプレスリリースでは、「植物由来の超加工食品」すべてをまとめて分析・言及しており、これが不正確さに繋がっていると指摘する専門家は少なくありません。

ポテトチップスも豆腐ミンチも同じ「植物由来の超加工食品」として扱われているのです。

そのため、植物由来の超加工食品の中にも、健康に害を与えないものが含まれている可能性は高いと言えます。

特に、フルーツジュースや朝食用シリアル、トマトのパスタソース、ベジタリアンハンバーグなどは、健康的なイメージを抱きやすい食品です。

今回の研究からは、これら個々の食品が実際にはどのような影響を及ぼすのかは示されていません。

ただ、私たちはあまりに加工食品に慣れすぎてしまっていて、加工の度合いによって元の食材から失われる栄養素に無頓着になりがちです。

例えば濃縮還元ジュースでは、そもそもフルーツジュースに期待されているビタミンが破壊されてしまいます。そのためこれらに含まれるビタミンは後から添加されたもので、結局は加工食ということになります。

(※濃縮還元ジュースは、壊血病の原因が果物の不足と特定した医師ジェームズ・リンドが開発し船乗りに持たせたのが始まりですが、最も重要なビタミンが破壊されてしまっていたため結局効果が出なかったという逸話があります)

私たちは、きちんとした食事を取る余裕がないとき、コンビニなどで売られている野菜や穀物が入っているという商品を健康的なのかなと選択しがちですが、たまには本物の野菜や果物を買って直接食べる習慣を付けないと、大きく健康を損なう原因になってしまうかもしれません。

参考文献

Plant-based UPFs linked with higher risk of cardiovascular disease
https://www.imperial.ac.uk/news/254034/plant-based-upfs-linked-with-higher-risk/

When plant foods are ultra-processed, the health benefits disappear
https://www.washingtonpost.com/wellness/2024/06/10/ultra-processed-plant-foods-health-risks/

元論文

Implications of food ultra-processing on cardiovascular risk considering plant origin foods: an analysis of the UK Biobank cohort
https://doi.org/10.1016/j.lanepe.2024.100948

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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