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「相手の表情などから気持ちを察する」韓国発のコミュニケーション能力「ヌンチ」が世界で話題に?

  • 2024.6.17
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韓国でよく知られているコミュニケーションスキルを使えば他人の気持ちを察することができる。感情的知性を高めて相手とのコミュニケーションを改善するにはどうしたらいいだろう。

ヌンチとは、韓国に古来から伝わるメソッドで、感情的知性や観察力を高めてくれる。photography: Shutterstock / Maminami

あなたはヌンチが早い? それとも遅い? 韓国で「ヌンチが早い」とは察しが良いこと。逆に「遅い」場合はもちろん、やや鈍い人を指す。その場の空気を読んで相手の表情などから気持ちを察することを意味する「ヌンチ」は韓国で5000年近く前から存在している。この直感的な非言語コミュニケーション能力が身につけば、相手を傷つけたりムッとさせたりせずに済む。韓国社会では相手の自尊心を傷つけることなく信頼と調和ときずなを深める「ヌンチ」が重視されてきた。

相手を観察する

もともと第六感が鋭い人でなくてもヌンチをスキルとして習得することは可能だと説くのは社会心理学博士号を持つフランス人のデボラ・ロマン・ドラクールだ。ジミン・リーとの共著、『Nunchi : connectez-vous aux autres(ヌンチで他人とつながろう)』(Eyrolles刊)があるデボラ・ロマン・ドラクールは、「共感力を高めるための第一歩としてまずは問題意識を持つことです」と言う。次にやるべきは相手を注意深く観察すること。社会に適応するために相手がかぶっている仮面の裏に、どんな真の姿が隠れているのかを探るのだ。「行間を読むようなものです。言葉よりも無意識の動作から読み取れることも多いでしょう。ヌンチで相手の気持ちがわかれば、対応の仕方もわかります」と言う。相手の様子だけでなく、その周囲にも目を配ろう。たとえば同僚のデスク周りを見れば相手がどんな状態なのか、話しかけて聞いてもらえそうか判断できそうだ。

会話を通じて相手の様子を探るにはそれなりの観察眼が必要だ。スキル上達のための王道は瞑想を定期的におこなうこと。瞑想を重ねていくうちに偏見のないクリアなまなざしで安定的に観察できるようになり、ヌンチのスキルが上がるだろう。瞑想はまた、自分を客観的に見つめる助けにもなる。真のヌンチにはそうした効用もあるのだ。ただし「ヌンチが有益なのは対等な関係であることが前提です。支配と服従の関係においては相手を従わせるためのツールになりかねません」とデボラ・ロマン・ドラクールは懸念する。特にアジアのヒエラルキー社会ではそうなりがちだ。「アジアでは伝統的に若い社員や平社員が先輩や上司に気を配るべきとみなされることが多いのです」

相手を尊重しつつ自己主張する

悪い流れを断ち切り、相手との関係を改善するには自己観察のセルフヌンチをおこなうといいそうだ。「自分に対する不満を抱えたまま他人とポジティブな関係を築くことなどできません。感情的にならず、感情と同化もせず、自分の考えや気持ちを一歩離れたところから冷静に見つめることを学ぶべきです」とデボラ・ロマン・ドラクールは言う。もうひとつ、ヌンチのスキルを上げるには、自我を妄信せず、無意識のメカニズムを疑い、自分が何を求めていてなにを恐れているのかを明確にすることも大切だ。自分のことがクリアになれば、その裏返しとして相手の気持ちを推察することも容易になる......自分のことを大切にしつつ。

自分らしくいること、相手を尊重しつつ自分の気持ちを表現すること。いわゆる「アサーション」をはじめとしたコミュニケーションのソフトスキルはヌンチ上達のためのツールとみなすことができる。「私を主語にしてしゃべりましょう。相手を非難せずに自分がどう感じたかを言いましょう。そうすれば相手も不快に感じないでしょう。場合によっては会話を一旦中断し、相手が応じてくれそうなタイミングで会話を再開してもいいかもしれません」とデボラ・ロマン・ドラクール。ヌンチのスキルが向上するまでには時間がかかる。まずは自分にも他人にも寛大になろう。「すぐに思い通りに行動できる人はなかなかいません。自分が間違っていたことを認識し、相手と共有できるのなら間違うことは大きな問題になりません。人間関係のほころびを修復しながら前進していくことになるからです」

スタンフォード大学上級講師でリーダーシップ論を専門とするデイビッド・ブラッドフォードも似たような考えだ。キャロル・ロビンとの共著『スタンフォード式 人生を変える人間関係の授業』(日本語翻訳版;CCCメディアハウス刊)があるデイビッド・ブラッドフォードは「インターパーソナル・ダイナミクス」理論を提唱し、シリコンバレーのエグゼクティブを何百人も教えてきた。こうしたソフトスキルは感傷に浸っていても身につかない。己と他人を真に知るためには、多大な努力と経験の積み重ね、やりぬく意志が必要だ。すぐに学べるものでもなければ万人に当てはまるレシピもない。なぜならそれはひとつの哲学であり、セラピーであり、人生そのものなのだから。

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